EPISODE.32



「さあ、見てけろー!!立派な船だべ!!」
「うおー!!すっげェー!!」


連結橋を渡った先にはサニー号よりも大きな海賊船――ヨンタマリア大船団の主船"ヨンタマリア号"があった。巨人族のハイルディンが乗ってもビクともせず、圧巻されるルフィたち。
ヨンタマリア号に乗り、周りを見渡しているとハイルディンたちが続々とルフィに話しかけていく。


「麦わら!おれには巨人傭兵の4人の仲間がいる!そいつらと共にいずれ全巨人族を束ね、かつて世界を震撼させた巨兵海賊団を復活させてみせる!」
「我らヨンタマリア大船団は全56隻の大艦隊!役に立てるはずだ!」
「ルフィランド!トンタ長の許しが出ました!ぼくらもぜひ入れてほしいれす!」

「・・・入れる?」

「堅気の大会じゃ敵はねェが・・・海賊どもを差し置いてチャンピオンは語れねェ!」
「おれとイデオは手を組んで海に乗り出すことにした」
「「おいおれ達も一緒だろ!忘れんなよ兄弟!!」」
「おれはこいつの船に乗せてもらうことになった」
「乗せてやるからには船長と呼べ!そしてキミも!ぼくが先輩であることを忘れるな?"同調"しようが一番人気はぼくがいただく!」

「・・・お前らみんななに言ってんだ?好きにやりゃいいだろ」


話の意図が掴めず首を傾げるルフィ。

どうやらドレスローザで共に戦ったコロシアムの戦士や海賊たちは、王宮で寝泊りしているうちにすっかり意気投合したらしく・・・ヨンタマリア大船団の提督オオロンブスが説明を始めた。


美しき海賊団75名――代表は海賊貴公子ハクバのキャベンディッシュ。
バルトクラブ56名――船長は人食いのバルトロメオ。
八宝水軍約1000名――13代目頭領首領ドン・サイ。
XXXトリプルエックスジム格闘連合4名――代表は破壊砲イデオ。
小人族トンタ兵団200名――兵長戦士レオ。
巨人海賊団4名――ハイルディン。
そして最後にヨンタマリア大船団4300名――船長オオロンブス。


「・・・しめて5600人の大軍勢!!ルフィ先輩、その代表のおれ達7人と親子の盃を交わしてけろ!!!」
「親子ォ?」
「んだべ!!あんたが親分!おら達は子分!どうかおれらを海賊麦わらの一味の傘下に加えてけろ!!」
「さあ、親子の盃だ!!!」


キャベンディッシュ、バルトロメオ、サイ、イデオ、レオ、ハイルディン、オオロンブスはそれぞれ持っていた盃に酒を注ぐ。そしてルフィの前に用意された盃にもその酒は注がれた。


「これよりルフィ先輩が親分!おれ達7人を子分とする親子の契りを・・・?ルフィ先輩?」
「・・・・・・おれァこれ飲まねえ!」
「「「「「「「ええ!?」」」」」」」


にかっと笑いながらそう言うルフィに7人は驚愕した。しかしその後ろにいた麦わらの一味は「だろうな」と、ルフィの予想通りの答えに笑みが耐えなかった。


「あんまこれ好きじゃねェし」
「い、いや!味の問題じゃねぐで・・・あんた達!この先この事件をきっかけに大物たちから命を狙われるべ!?もしそうなったらいかにルフィ先輩たちといえども!苦戦は必死!んだばその時ルフィ先輩に救われたおれ達が・・・!」
「だけどよ、これ飲んじまったらおれはこの大船団の大船長になっちまうんだろ?」
「んだべ!総勢5600名の子分がいりゃァ晴れて大海賊の仲間入りだべ!ルフィ先輩はいずれ海賊王になられるお人!世界を取るにはこれでも戦力は少ねェほうだべ!」
「やめとけ。そういうのはこいつにはムリだ。それより・・・これジョッキに注ぎなおせ。おれが飲む」
「だから味を楽しむ会じゃねぐてですね・・・!」
「なぜだ麦わら!これだけの兵力、なにが不服なんだ!どんなに強い敵でも数という力には敵わぬ!!お前にも我らの力が必要な時がくるはずだ!!」

「・・・・・・窮屈!!!!」
「「「「「「「えええぇえ〜〜!!すげェ嫌そう〜!!」」」」」」」


まさか断られるとは思っていなかったのか、後ろに仰け反る一同。それよりもルフィはおいしそうな匂いを嗅ぎ付け、宴の準備をしているのかと別の方で目を輝かせていた。


「ふざけるな麦わら!先輩でスターのぼくが傘下に入ってやるといってるんだ!」
「締め上げて飲ませよう!」
「てめェ子分の強さナメてんな?恩人の癖に!!」
いや柄悪すぎだろ子分だとしたら!!

「ッだからよお!おれは海賊王になるんだよ!!偉くなりてえわけじゃねェ!!」
「・・・・・・おい、なに言ってんだこいつ」
『ふふっ』


隣にいるローに聞かれ、口元に手を当てながら笑みをこぼすナマエ。長い時間、ルフィと一緒にいる者からしてみればルフィの言わんとしている事は分かるのだろうが・・・彼らにはまだ理解できない領域らしい。

ルフィの盃にある酒を手で掬って飲み始めるゾロを筆頭にフランキー、ロビンまでもが自分も欲しいと言い出し、それまでの空気がガラリと変わってしまった。


「ル、ルフィ先輩、一体どういう意味だべ・・・?」
「・・・みんな!もしおれ達が危ねェと思ったら・・・そん時は大声でお前らを呼ぶから!そしたら助けてくれよ。親分や大海賊じゃなくてもいいだろ?お前らが困ったらおれ達を呼べ!必ず助けに行くから!一緒にミンゴと戦った事は忘れねェよ!!」
「・・・・!ッなんか・・・・・言いてェことが・・・分かってきたべェ・・・!!!ルフィ先輩にとっての海賊王の意味が・・・!!」


――偉いとかではない。自由なのだ。

バルトロメオが涙を流しながらルフィに何か言おうとした、その瞬間――爆発音と共に、ヨンタマリア号が大きく揺れ始めた。


「何事だ!?」
「ッ砲撃です!!」
「海軍か!?」
「まさか!軍艦ならぼくがきつく"縫い付けて"きたれす!」
「ッコロンブスに指揮をとらせろ!我らはまだ取り込み中である!だれであれなぎ払え!」
「はは!」

「その船に億越えルーキー・・・モンキー・D・ルフィと伝説の悪魔の実の能力者・・・ポートガス・D・ナマエがいるはず!!大人しくクビを差し出せえええ!!」


海の向こう側には何隻もの海賊船があり、一斉砲撃を受けていた。
応戦しようとヨンタマリア号並びに他の海賊船が砲撃の準備をしていると・・・なぜか、敵船団にだけ藤虎の集めた瓦礫が落ち始めたではないか。

雨のように落ちていく瓦礫によって海賊船は次々と沈んでいき、藤虎がなぜそうしたのか――ルフィ達がその理由を知るのは、もっと先のことである。


砲撃が収まり、静かになるとルフィの前で跪いていたバルトロメオの瞳からは大粒の涙が溢れ出ていた。


「ッ自由・・・自由・・・!それがルフィ先輩の・・・!だばおれ、尚更あんたに惚れたべさルフィ先輩!!」
「ガッガッガッガ!同じくだ!!・・・おいバルトロメオ、口上を言え!こいつが親の盃を飲まなくてもいい」
「!確かにそうだ」
「互いに勝手気ままならいいな?」
「お前は人の自由も止められねェはずやい!」
「そうなんれすね!」
「ルフィ先輩!誠に勝手ながら口上を述べさせていただくべ!」
「ん?口上?」

「――ではルフィ先輩!!ここに我ら子分となりいついかなる時も親分"麦わらのルフィ"先輩の盾となり!また矛となる!!こ度のご恩に報い!我ら7人!命全霊をかけてこの"子分盃"!勝手に頂戴いたしますだべ!!!」


ルフィが何か言う前に、バルトロメオたちは持っていた盃を自分達の口元へと運んでいくとそれをグイッと飲み干した。


「ああああ〜〜〜!?なーにやってんだお前ら!?」
「ふふっ。勝手な人たち」
「ははは!子分盃ぃ?なんだそりゃ!」
「「「麦わらのお頭!よろしく頼むぜ〜!!」」」
「何ィ!?おい!おれ飲んでねェからな!なんかもう中身無くなってるけど・・・!」
「ああ、それでいい!お前は今まで通りだ・・・おれ達が勝手にお前に忠誠を誓ったんやい。そして何かありゃ勝手に命かけて参上する。そんな奴らがいても・・・」


サイが話している途中、ルフィは運ばれてきた闘魚の丸焼きステーキに釘付けで全く話を聞いていなかった。
憧れのルフィたちの傘下に入れたことに感動のあまり立ち上がることすらも出来ないバルトロメオにイデオが声を掛け、キャベンディッシュがレオたちに今から宴をする事を伝えると、レオたちも宴にだけ参加すると大はしゃぎ。帰りはイエローカブに乗って帰るそうだ。


「ん?船を出すのか?」
「よーし!!親分からの命令だ!!帆をあげろー!!!」
親分じゃねェし!!命令してねェし!!!


碇をあげ、帆があがる。ヨンタマリア号を先頭に海賊船は一斉に大海原へと出航をはじめた。
空から降ってくる瓦礫は全て外れ、空にあった瓦礫の数が少なくなっていくと同時に空から太陽の光が差し込む。




瓦礫のち晴れ――ドレスローザ近海ではこの日、世にも珍しき天候が観測されるのだった。



「さァ野郎ども!!ミンゴファミリーとの戦いはおれ達のぉお〜・・・勝利だァアアー!!!」



ルフィの掛け声と共に、大宴会が始まった。


ドレスローザでの激闘も、人知れずかわされた極めて異例の子分盃――引き寄せられてかはからずか、麦わらのルフィの子分にと名乗り集った曲者7人・・・この先各個に成長を遂げ、いずれ歴史に名を残す一代事件を引き起こすのだが・・・今はまだ、誰も知らない物語――・・・・・・。



   



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