EPISODE.27





ドラゴンに助けられたサボは革命軍の船に乗せられ、船医によって一命を取り留める事が出来た。・・・しかし強い衝撃を受けたせいかサボは記憶喪失となってしまい、自分の名前さえ分からない状態だった。
唯一の手がかりは持ち物の名前にサボと書いてあったこと、そしてドラゴンが最初サボと出会った場所がゴア王国の高町であり、そこの貴族であるという事ぐらいで・・・ゴア王国に送り届けた方がいいのかと意見が出た途端、サボは顔色を変えて戻りたくないと否定した。
記憶を失っても両親の元に帰りたくないという強い思いがあったのだ。


それからサボは革命軍に入り、大きな成長を遂げ、もはや革命軍にとっていなくてはならない存在までに伸し上がっていった。


「その歳でここまでの手柄をあげるとは・・・大したもんだ」
「お前が革命軍を引っ張る日も遠くないかもな?」
「そういやァ七武海の勧誘を蹴ったルーキーもお前と同じくらいの歳って聞いたぜ?」
「ああ・・・火拳のことか」
「火拳?」
「ヤケに血の気の多いやつらしいぜ?まっ、新世界でどこまで通用するか・・・確か名前は、ポートガス・D・・・」
「エース」
「そうだエース!なんだ知ってたのかよ?」


自然と言葉が出てきただけで、サボは本当に自分が言ったのかと混乱した。







*


「2年前までずっと記憶は失ったままだったのか?」
「ああ・・・」
「それまで深刻だったのによく思い出せたな?」
「・・・エースが教えてくれたんだ。今ではそう思う。ッタイミングは・・・最悪だったが・・・だからこそ、あいつはおれを呼び起こした」






2年前――。革命家として実力を上げていったサボは、船の上から海を眺めていた。・・・海を眺めていると、たまに思い出すことがある。
顔は見えないのだが2人の少年と1人の少女が自分に笑いかけ、自分の名を呼んでいるのだ。


あと少し・・・あと少しで何か思い出せそうな気がするのに、思い出すことが出来ない。



「参謀総長!丁度よかった、すぐに作戦会議室へ!」
「海軍と白ひげ海賊団による頂上戦争が決着しました!!」
「!」


その日の革命軍本拠地バルティゴは騒々しかった。号外を手に取る者達は記事の内容に目を見開かせている。


「この戦争で死んだのは・・・四皇白ひげ・・・それと・・・火拳のエース・・・!」
「!」
「なによりドラゴンさん、これ・・・本当ですか?麦わらのルフィがあんたの息子だって」
「ん?ああ」
「火拳のエースには双子の妹がいたらしいぞ!名前は・・・ポートガス・D・ナマエ・・・え!?ま、まさかあの大海の歌姫セイレーンだったなんて・・・!」
「で、伝説の悪魔の実・・・キラキラの実は実在していたのか・・・」


ルフィ、エース、ナマエ・・・仲間の口から次々と出てくる、どこか懐かしく感じる名前。
足を止めたサボは大きく心臓が鳴るのを感じながら、机の上にあった新聞を手に取ると読みだした。

――表紙に載っているエースとルフィ、そしてナマエの写真を見つめ・・・・・・新聞を持つ手が、震えはじめる。


「ッ・・・・・・・・・!!!!」
「サボくん?」




"おれは海賊になって勝って勝って勝ちまくって、最高の"名声"を手に入れる!!それだけがおれと、ナマエの生きた証になる!!!世界中の奴らが、おれ達の存在を認めなくても、どれ程嫌われても!!!"大海賊"になって見返してやんのさ!!!おれは誰からも逃げねェ!誰にも敗けねェ!恐怖でも何でもいい、おれの名を世界に知らしめてやるんだ!"




「あ、ああ・・・・・・ッ・・・・・・う・・・」
「どうしたのサボくん!?様子が変だよ!」
「はあ、はあッ・・・・・・・あ・・・・・・」


上手く呼吸する事が出来ず、側にいたコアラが声をかけるが・・・堰を切ったように涙が止まらない。


「エースと大海の歌姫セイレーンが双子で、ゴールド・ロジャーの子どもだったとはなァ・・・」
「海軍にとってはこれ以上のない脅威・・・なんとしても排除したかったわけだ」


ッうわあああぁあぁああ!!!!


今までなぜ忘れていたのだろう。なぜ、思い出さなかったのだろうか。
大切だった昔の記憶がフラッシュバックしてくる。

エースと出会った日のこと、ルフィやナマエとの出会い、兄弟で盃を交わしたこと、皆で海賊になろうと誓った日のこと・・・。



「(そうだ・・・ッ・・・・死んだのはどっかの知らねェ海賊じゃない・・・!!!取り除かれるべき海賊時代の危険因子じゃない・・・!!!エースは・・・・おれの・・・っ兄弟だ・・・!!!!)」


悲鳴に似た叫び声を上げながら、サボはその日意識を手放した・・・。

――それから3日間、サボは高熱にうなされ、目を覚ませば隣には涙を堪えるコアラと、心配した表情で見つめるハックの姿。ゆっくりと体を起こしたサボは2人に記憶を戻った事を伝えた。


「全部思い出した・・・自分が何者で何で家を捨てて海に出たのかも、な」
「!じゃ、じゃあ革命軍やめるの?」
「・・・いや、やめねェよ。ドラゴンさんはまだいるか?」
「ああ」
「・・・話したいことがある」






*


「・・・あの時、エースがおれに言った気がしたんだ、お前はサボ、おれとナマエ、ルフィの兄弟だ、って。それでおれは――「ちょっと待った!!!」
「なんでござるか!いい所なのに!」
「錦えもんてめェ・・・・っなに全部飲んでんだよ!カラじゃねェか!!つまみも全部食いやがって!!」
「こ、こんな話し聞いたら飲まずにはいられないでござるよ!!」
「ま、まあまあ2人とも・・・」
「でも・・・お酒はいいとして食べ物がないとルフィが起きたときに困るわね」
「うちの連中、みんな食うぞ」
「あとで拙者と錦えもんで食料の買出しに行ってくるでござる」
「酒も頼むぞ!」

「はは!ルフィの仲間は面白れェなあ」
「飽きないわよ?ふふふ」
「なあ、早く続き聞かせてくれよ」
「ああ」





   



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