EPISODE.26



――ドレスローザ。東の町にあるカルタの丘。



そこには広大に広がる花畑と、一軒の小屋・・・キュロスの家があり、ルフィ達はキュロスの家で身を隠していた。ドフラミンゴが倒された後、海兵たちはルフィ達を血眼になって探しており、此処が一番安全なのだ。

手当てを受けたルフィはベッドの上で気持ち良さそうに眠っており、続くようにキュロス、ロー、ウソップがあっという間に夢の世界へと入っていく。
あまりの寝つきの良さにフランキーは呆れ、ロビンは小さく笑った。


「こりゃ当分起きそうもねぇなあ」
「今はゆっくり寝かせてあげましょう」
「ったく酒は置いてねェのか?」


家の中を漁るゾロがそう愚痴をこぼした・・・その時だった。扉の前に人の気配を感じたゾロは咄嗟に刀を構え、他の者達も身構えるなか――ゆっくりと開かれる扉。

その向こうに立っていたのはサボだった。サボの腕の中には気持ちよさそうに眠るナマエの姿もあり、攻撃を仕掛けようとしたゾロに口角を持ち上げたサボは片手で「ほらよ」と持っていた酒を渡し、サボの姿を見たロビンが笑顔で駆け寄る。


「サボ!それにナマエも・・・!よかったわ、無事で」
「よっ」
「知り合いか?」
「ルフィのお兄さんと、お姉さんよ」
「!姉貴は前に会ったが・・・髪色が違うぞ?」
「変装してたからな」


言いながら、サボは抱えていたナマエをルフィの横にゆっくりと寝かせる。2人して幸せそうに眠る姿に思わず笑みがこぼれてしまう。

サボが来たとロビンがルフィを起こそうとするが・・・「いいよ」とサボ本人に止められる。


「最後に顔を見に来ただけだ」
「!もう国を出るの・・・?」
「ああ。厄介な連中が此処へ引き返してきてる」
「何者だ?」
「・・・CP0」
「!」
「ドフラミンゴの一芝居にも加担した連中だ。・・・連中の狙いはおれ達だ、1日2日でドレスローザは混雑するぞ。お前たちも可能な限り早く出航しろ」
「分かったわ。教えてくれてありがとう」
「どっちにしろ長く留まる気はねェよ。・・・にしてもエースの他に兄貴がいたとは・・・ナマエの話はしょっちゅう聞いてたけどよ・・・」
「全くだ、初耳だぜ」
「だろうな。一番驚いたのはルフィとナマエだろう」
「?そいつはどういうこった?」
「おれはずっと・・・死んだ事になってた」


――サボの言葉にゾロ達は目を見開かせた。唯一、事情を知っているロビンは小さく頷き、サボは眠るナマエとルフィを見つめながら、話し始める。


「ルフィとエース、ナマエとは・・・ガキの頃、いつも一緒にいたんだ。男3人で暴れ回って、怪我して帰ってくればナマエに叱られて・・・ガープのジジイにもしごかれて、将来は海賊だ、って・・・おれ達は兄弟の盃を酌み交わしたんだ。だけど・・・おれはある日、事故にあった。いや・・・事件、か」



サボは12年前、あの出来事を思い出していた。











「ッこの街は、不確かな物の終着駅グレイ・ターミナルよりもイヤな匂いがする・・・人間の、腐ったイヤなニオイがする・・・!此処にいてもおれは・・・ッ・・・自由になれない・・・!!!!」



――不確かな物の終着駅グレイ・ターミナルで火事があると知りながらも、ゴア王国の民は自分たちは特別なのだと、これから死ぬ人がいようといつものように過ごし笑顔すら浮かべている。
サボは不確かな物の終着駅グレイ・ターミナルにいるエース、ルフィを助けるため家を抜け出し、助けようとした。しかし兵士に見つかってしまい、家に連れ戻され・・・まるで鳥籠のような生活にサボはエース達に会いたいと、切に思った。

淀んだ空気が充満するこの国で生きていくことに耐え切れそうも無い・・・自由とは、なんなのだろうか。どこにあるのか。


それから暫くして――サボは盗んだ漁船で1人大海原へと旅立った。街を出航してすぐ、目の前に大きな船が現れ、何も知らずその船の前を横切った――次の瞬間。



バァアアン!!!


突然砲撃され、船に火が上がる。慌ててサボは脱いだ上着で火を消そうとするが火は消えるどころか強さを増していくばかり・・・。


「ジャ、ジャルマック聖!ふ、船には子どもが!」
「海賊旗を掲げたら何者だろうと海賊だえ・・・何より・・・下市民が私の船の前を横切った!!!!」


先ほどサボの船を撃った天竜人が、再び持っていた武器の引き金を引く。
――木っ端微塵となり、燃え上がる船。サボのトレードマークである帽子は海の中へと沈んでいき・・・・・・それから暫くして、波に流されるままかろうじて息を残していたサボは木の破片に必死にしがみついていた。


「ッエース、ナマエ・・・ルフィ・・・った、すけ――ッだれ、か・・・」


力が底を尽き、意識を失うように海の中へと沈んでいくサボの手を掴んだのは――革命軍総司令官モンキー・D・ドラゴンであった。




   



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