EPISODE.06



「え・・・ちょ、どわーっ、たたっ、大変だァー、!そんな、絶対秘密のはずなのに・・・!ちょっとフェスタさん!危機管理どうなってんだよー!!!」


モデラートの焦った実況が響き渡る。海軍の襲来に島にいた海賊達は狼狽えていた。
あれほどの数の軍艦、あらかじめ情報が漏れていなければ動かせるはずがない。
海賊万博にいる者達は、丸ごと売られたのだ――街全体のスピーカーを通して話す、この男に。


「さて、おれが海賊万博主催者の祭り屋ブエナ・フェスタだ!退屈な挨拶は省こう!紹介する・・・ダグラス・バレットだ!もう気づいている者もいるだろう!海賊王ゴールド・ロジャーの元船員であり、鬼の跡目と呼ばれた!インペルダウン最悪の脱獄囚!!さァ、ここまでは前夜祭だ・・・最悪の世代?七武海?海軍本部?どいつもこいつもお呼びじゃねェぜ!これから始まる祭りはダグラス・バレットの祭り!世界最強のォ・・・ケンカ祭りだァ!!さァ出て来いや挑戦者!かかってこい!!」


――万博島は大混乱に陥った。裏切られたことを知ったモデラートは持っていたマイクを投げ飛ばし、アンも悲鳴をあげながらその場から逃げ出していく。

港にできた土砂の島でバレットは、最悪の世代と呼ばれる船長たちを前に悠然と構えていた。
全く隙をみせないバレット・・・船長クラスでさえも攻撃のチャンスを掴めずにいた。


「あいつ海賊王の宝箱を持ってる・・・なんで持ち逃げしねェんだ」


ボニーが気づいた。バレットの目的が海賊王の宝であるならば、すでに獲っているのだから逃げてもいいはず・・・しかしバレットは宝に目もくれておらず、何か別の目的があるようだった。
しかしどんな目的があろうと、ルフィにとってもはやどうでもよかった。


「おまえ・・・おれの仲間に手ェ出して、覚悟できてんだろうな」
「仲間?この宝箱ひとつ守れねェ、カスのことか」


経緯は分からないが、バギーが獲ったはずの宝箱はウソップの手に渡っていたらしく、それをバレットに見つかり、奪われたのだろう。
ルフィは無言でバレットを睨みつけ、その姿にバレットの笑みが深まった。


「煩わしいな・・・貸し借りだの、掟だの、仁義だの・・・シャバに出てきてみれば、今時は最悪の世代、ってのが強ェらしいな?」


目の前にいるルフィたちが当人と分かった上で、敢えてバレットは宝箱を見せびらかすようにして言った。


「この海賊王の宝がほしけりゃ、全員まとめてかかってこい!!」


叫んだバレットが大きく目を見開かせたその瞬間、噴火口跡が大きく揺れる。

――覇王色の覇気だ。

その力は凄まじく、遠く離れた会場を逃げ惑う海賊たちが次々と意識を失って倒れていき、キッドたちでさえ踏み止まるのが精一杯だった。


「どうした最悪の世代?ビビって動けねェか?」


――それまでただ黙って立っていたルフィとナマエも、大きく目を開かせると覇王色の覇気を放った。三つの覇気がぶつかり合ったその瞬間、中央港を中心に激しい衝撃波が辺りを襲う。

覇気には覇気で応じる・・・怯むことなくバレットに対抗するルフィとナマエだが、2人の覇王色の覇気に対してバレットは余裕そうに笑みを浮かべると、いとも簡単に2人の覇気を相殺してみせた。


「ルフィー!ゾロー!ナマエー!!」


無事に着水していたサニー号に乗っていたナミに呼びかけられる。


「わたしたちはサンジくんと連絡をとって脱出の準備をするわ!でも、あの軍艦の数・・・逃げるには、何か策を考えないと」
「・・・ゾロ、ウソップは任せろ。サニーを頼んだ」
「わかった」
「ナマエ、おれがあいつと戦ってる間にウソップを頼む」
『うん!』


船医チョッパーがいない今、頼みの綱はナマエしかいない。地面に倒れているウソップの血の量は多く、一刻も早く手当をしなければ命に関わってしまうだろう。

船長の指示でゾロはサニー号に戻り、サニー号は湾岸へと向かった。



――中央港に残ったのは、それこそ最悪の世代と呼ばれるルーキーばかりだった。
キッドとキラー、アプー、ドレーク、ボニー、ウルージ、ベッジ、ホーキンス、そしてルフィとナマエ。
中には時に同盟を組んだ者もいるが、ローとは違いそれ以降は関わりを持っていない。

それぞれが戦闘態勢に入るなか、先頭に立つルフィが言い放つ。


「おれがやる。お前らジャマすんな」
「あのおっさんをやったら次はテメェだ麦わら」

「話はまだ終わらねェのか?面倒だ・・・まとめてかかってこい」


新世界で名を馳せるルーキーたちが、雑魚扱いされている。その言葉に青筋を立てたキッドが唾を吐いた。


「鬼の跡目だァ・・・?中年海賊オールドルーキーがシャバに出てきてはしゃいできてんじゃねェよ」

「来ねェなら・・・行くぞ」


地面を強く蹴ったバレットがルーキーたちに襲いかかる。ルフィはギアセカンドで即応するとさらに武装色の覇気を纏い、バレットの拳を拳で受け止めた。
威力は五分五分・・・だがバレットはさらに拳を押し込んでルフィごと地面に叩きつける。


「うわぁアアアア!!!」
『ルフィ!ッ・・・!』


ルフィに視線を向けたその瞬間、ルフィの近くにいたはずのバレットが、目にも留まらぬ速さでナマエの間合いまで詰めてくる。
真下で拳を構え、口角を持ち上げるバレットに唇を噛み締めたナマエは力で敵わないことは分かっていたため、仕掛けられた拳の軌道を逸らし、そのままキラキラの実の力と覇気を纏った拳をバレットの顔面に打ち込む・・・が。


「・・・いい拳だァ。さすがはロジャーの娘」
『!』
「だが・・・!まだまだだ!!」


もう片方の拳がナマエの腹部を直撃する。一撃・・・たった一撃で気を失いかけたナマエはそのまま後ろに吹き飛ばされ、起き上がったルフィによって受け止められる。
意識は保っているものの、攻撃の余韻が残ったまま・・・苦しそうに腹部を抑えるナマエの姿を見たルフィはさらに目つきを鋭くさせ、バレットに立ち向かう。

――ルフィと同様に悪魔の能力を持ったルーキーたちが続けざまにバレットに攻撃を仕掛けるが、どんな能力者であろうとバレットの前では無意味なのか・・・誰一人としてバレットに傷を負わせることができなかった。

自身の腹部に手を当てながら、ゆっくりとフラつきながらも立ち上がったナマエはルフィたちがバレットと戦っている間、自分の使命を果たすべくウソップの元へと駆け寄る。


『ウソップ・・・!』


全身の怪我もひどいがまずは止血が先だ。もう少しの辛抱だよ、と意識を失う仲間に懸命に声をかけながらナマエは結んでいた髪を解くと、リボン代わりにしていたスカーフを裂き、ウソップの傷の部分に強く巻きつけた。
応急手当てをしながら、同時に治癒能力を当てていると・・・ふと、敵意を察し、後ろを振り返ると同時に月の壁ムーン・ウォールを張った。

バンッ!という激しい衝突音・・・ギリギリのところでバレットの攻撃を防いだナマエだったが、月の壁ムーン・ウォールに亀裂が走り、軋む音が聞こえてくる。


「此処は戦場だ・・・貴様、一体何をしてる?」
『っ、』


このままではバリアがもたない。しかし背後にはウソップ・・・守るべき者がいる。
バリア越しに自分を睨みつけるナマエの強い眼差しに、バレットは遥か遠い昔――ロジャーと戦った日のことを思い出していた。


「その目・・・ロジャーとの戦いを思い出すなァ・・・!」
『っ、・・・それは、光栄ね・・・!』

「バレットォオオオオ!!!」
「『!』」


上空から、ギアフォースになったルフィが飛びかかってくる。
気づけばルーキーたちは激戦の後、再起できぬほどのダメージを受け、尽く倒されていた。

ルフィの一撃によってナマエから引き離されるバレット。ルフィはナマエの前に立つと、弾みながら、バレットに狙いを定める。


「残ったのはお前か、麦わらァ・・・どっかで見たような帽子だなぁ?おれはロジャーを目指し・・・超えるぞ!」
「おまえが海賊王を目指すってんなら、絶対に負けられねェ!!!」






   



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