EPISODE.04
サニー号は宝島の湖に着水した。
視線の先には鋭く切り立った崖が湖にせり出しており、その頂上になにかを見つけたナミが船から身を乗り出すようにして双眼鏡で覗く。
――宝島の崖に横たわる巨大なガレオン船には、湖から見上げても分かるほどの金銀財宝が山のように積まれてあり、ナミは始終目をお金にさせて輝かせた。
そうこうしている間にもライバルの海賊船たちが次々と着水してくる。
「獲られてたまるかァア!」
「へっ、強ェやつはどこだァ?」
『なんだか楽しくなってきたー!』
「ちょ、ちょっとナマエ!?あんたはここにいなさーい!!」
ルフィとゾロ、そしてナマエがサニー号から飛び降りる。
それまで興味を示していなかったナマエだったが周りの熱気に当てられたのか、それとも血筋なのか・・・元々こういったお祭り騒ぎが大好きなナマエはいつの間にかやる気に満ちており、その姿はさすが姉弟というべきなのかルフィと瓜二つだった。
しかし世界を揺るがす力を持ったナマエが表に出てしまえば、下手すれば海賊王の宝よりもナマエの力を欲しがる海賊たちが現れかねない。
そんなナミの心配も他所に、子どものようにはしゃぎながら走っていくナマエに「全くしょうがないんだから!」と呆れながらもナミは双眼鏡を再び覗いて財宝を観察する。
「あの小さな宝箱・・・他の宝物はピカピカだけどあれだけ妙に古い・・・あやしい臭いがプンプンするわァ!ルフィー!財宝の中に一つだけ小さな古い宝箱があるの!きっと海賊王の宝よー!!」
「おう!分かったァ!」
「よーし!おまえら獲ってこーい!!」
「あんたも行きなさいよ!」
「お、お、おれは狙撃手!援護が花道だ!!」
怖いだけでしょ、とナミが鋭いツッコミを入れればウソップは図星だったのか冷や汗をかいていたのはいうまでもない・・・。
宝島に辿り着き、海賊達が目指す場所はただ1つ――ガレオン船だ。
各船、砲撃の飛び交うなか大勢の海賊達がガレオン船のある崖へと殺到していた。
皆がそれぞれの船長を先に行かせるために突破口を開こうとしており、ゾロはどこからともなく向けられた敵意に瞳を鋭くさせると足を止める。
「先に行け!」
「わかった!!」
ゾロが振り返り、刀を構えた瞬間――キッド海賊団の戦闘員キラーの攻撃を受け止めた。
ゾロとキラー2人の激闘が幕を開けるなか、宝島の崖を駆け上がっていたルフィとナマエだったが・・・背後から殺気を感じたナマエが空中で身を翻し、両手を前にかざす。
『月の壁!!』
「爆!!!」
ナマエがバリアを張るのと同時に爆撃が襲いかかる。間一髪のところで防げたものの凄まじい爆風が辺りを包み込み、土煙が舞う中ルフィとナマエの前に現れたのは――スクラッチメン・アプーであった。
体を楽器にして音で爆破攻撃を仕掛けるアプーは、リズミカルな動作で2人の前に立ちはだかる。
「おめェたちのイカれYOには迷惑してるゼ!」
『ふふっ、面白い!あなたの相手はわたしね!』
「頼んだぞナマエー!」
叫びながらルフィが先を行く。道を阻もうとするアプーを前に、両手拳を構えるナマエは相手が億越えの船長だと知っていても尚、楽しそうに笑顔を浮かべていた。
それが癪に触ったのかアプーはリズミカルに自身の体を楽器のように叩き、次から次へと爆破攻撃を仕掛けてくる。
しかしナマエも見聞色の覇気を使って身軽にそれらを避け、再び上空に舞い上がると――まるで弓を持っているような、そんな構えをしだした。
ナマエの手には弓矢など見つからず、「血迷ったのかYO!」と今度こそ狙いを定めるアプー。
にやり、口角を持ち上げたナマエの額に三日月の模様が浮かび上がると月の光が手の中に集まり、それは光り輝く弓矢に変化した。
――幸運なことに今日は満月。日中でもキラキラの実の能力が最大限、発揮できる日であった。
「な、なに!?」
『弦月の弓!』
放たれた光の矢を咄嗟に避けるアプー。すると地面に突き刺さった矢は巨大な爆発を巻き起こし、後から来た海賊達をも吹き飛ばしていった。
その凄まじい破壊力を目の当たりにしたアプーは額に冷や汗を浮かべながら崖上で自分を見下ろすナマエを睨みつける。
さすがは伝説の悪魔の実――と言いたいところだが、どうやらそれだけではないらしい。
軽い身のこなしや覇気の使いこなし、そして何より一端の船長相手にまだ余裕を見せているところを見ると、彼女の潜在能力はこの先脅威になることは間違いなかった。
「さァ大混戦!!多くの海賊が脱落するなか、宝を手にするのはだれなのかァーー!?」
「獲ったぞォーーーー!!!」
宝島に、先ほど聞いたばかりの声が響き渡る。
戦闘を一旦中止した海賊達の視線の先には――ガレオン船の上で宝箱を両手で掲げているバギーの姿があった。
いつの間にあんなところまでいたのだろうか、という疑問も他所に、ガレオン船付近で交戦していたドレーク、キッド、ウルージ、ルフィが目を光らせる。
ルフィは目一杯伸ばしたゴムの腕でガレオン船を殴りつけ、バギーを引き摺り下ろした。
「待ちやがれバギー!!」
「ギャハハ!誰が待つかクソゴム!海賊王のお宝だ!きっととんでもねェもんに・・・!!」
逃げながら、バギーは持っていた宝箱を開け中身を覗き込んだ――次の瞬間、激しい地響きが宝島を襲った。
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