EPISODE.03
「一気にトップに躍り出た!麦わらの一味ぃぃイイイ!!」
砲撃戦を繰り広げながらレースの先頭争いをする海賊達の頭上を追い抜いていくサニー号。
スタンド席からも大歓声があがり、あっという間に抜かされたキッドは面白くなってきやがったと口角を持ち上げた。
「フランキー最高だァ!」
「ったりめェだ!サニー号は最高の船だぜ!」
「よーしぶっちぎれー!」
舞い上がっていた、その時だった。
不意に船室の扉がガチャリと開き、すかさず身構える麦わらの一味。仲間たちは全員甲板にいるため・・・誰かが潜んでいたということになる。
緊迫とした空気のなか、扉の向こうに現れたのは・・・トラファルガー・ローであった。
顔見知りのローに一度は安堵する麦わらの一味だったが、深手を負っていることに気づくとその笑みも消えてしまう。
立つのもやっとだったローが倒れそうになったところを間一髪で支えたナマエはそのままローと一緒に座り込むとキラキラの実の能力を解放した。
額に三日月の模様が浮かびあがり、淡い光がローを包み込む。
ローに治癒能力をかけている間、救急箱を取りに船室に駆け込んで行くチョッパー。
「トラ男くん、一体何があったの?」
「・・・っ、すぐに行く。乗せてもらった礼に教えてやるがお前ら・・・すぐこの島を離れろ。フェスタは・・・」
「フェスタ・・・海賊万博の元締めの?」
「ブエナ・フェスタだけじゃねェ。奴ら、何かとんでもねェことを・・・ッつ・・・うちの連中はなんとか逃したが、ここは戦場、に・・・うっ・・・」
ロー自身も混乱しているのか、話にあまりついていけない。しかしその表情と怪我から、ただならぬ空気を察した一味。
ただのお祭りだと思って参加していたが・・・ローも元は王下七武海・・・その彼がこんな深手を負わせる相手とは一体・・・?
「ッ、もう十分だ歌姫屋・・・」
『でもトラファルガー、安静にしてなきゃ』
治癒の力はあくまで回復速度を通常より早くさせるだけで、完全に治せるわけではない。傷の具合からみてチョッパーの手当ても必要だろう。
立ち上がり、よろけて船べりに手をつくローを支えるナマエ。
数分前、会場でバギーに追われていたローはオペオペの実の能力でサニー号に瞬間移動したそうだ。さっきバギーの言っていた"あいつ"とはローのことだったのだろう。
辻褄が合ったところで船室から救急箱を持ったチョッパーが戻ってきて、ローの手当てを始めようとする・・・が。
「っ必要ねェ。邪魔したなトナカイ屋・・・これはおれが探っていた問題・・・」
「どこへ行くのよそんな体で」
「やつらに・・・礼をしに」
その時だった。
衝撃と共に水飛沫があがり、後ろに視線を向けてみればずいぶん距離を離したと思っていたキッドたちの海賊船が追いついてきているではないか。
たくさんの砲弾がサニー号を襲うなか、船長ルフィの下した決断は――。
「このまま進む!!けど、トラ男も放っておけねェ!チョッパー、頼む!」
「わかった!おれはトラ男についてる!」
「おい・・・!おれは行くぞ!手当てはいら、」
「なら、わたしも行くわ。七武海のバギーが動いてるということは、海軍だって、この海賊万博のことを把握していても不思議じゃないわ。そして、奴ら・・・フェスタだけじゃないっていうことは、つまり組織的な取引や抗争が裏で動いてるということ」
もしこの海賊万博になんらかの罠があるのだとしたら、それはローだけの問題ではなかった。
ロビンに続いてサンジ、ブルックも同行することが決まり、手分けして別行動が決まる。
大変な事件に首を突っ込もうとしているというのに、ルフィはそれさえも楽しみといわんばかりに笑みを深めた。
一時は海賊同盟を組んでいたローもルフィたちが決めた以上、止められないことを分かっていたため、半ば諦めたように同意するしかなかった。
サンジ達は小型潜水艦に乗って突きあげる海流から抜け出した。
「なんかあったらこの電伝虫に連絡をくれ!」
[了解!]
そうこうしているうちに、突きあげる海流の海賊船デッドヒートは大詰めを迎えていた。
ルフィ一行を乗せたサニー号はライバル達と砲撃戦を繰り広げながら、尚も先頭を突っ走る。
「見えた!てっぺん!」
ゴールはもう目と鼻の先にある。果たしてこのまま進んでいいのか、そんな悩みもルフィの「このまま突っ込め!」という勇ましい声と共に吹き飛び、サニー号は水柱の頂上部に突っ込んでいった。
辺りが水飛沫と泡に包まれたかと思えば次の瞬間・・・視界が開け、サニー号は宙に躍り出た。
上空を落下して行くサニー号、その船首像に立ったルフィは宝島を視界に写すとニヤリ、口角を持ち上げた。
「先頭集団!突きあげる海流を登りきったー!!空に舞い上がった海賊船!次々と!こんな光景、見たことないぞー!!!」
映像電伝虫による中継が会場にも伝わる。
サニー号に続いて新世界に名を馳せるルーキーたちの海賊船も突きあげる海流を突破し、大空へと舞い上がっていく。
一瞬の浮遊感、そして次にはサニー号は真下にあったシャボンの表面に激突し、沈むようにして内部へと侵入した。
「宝島に一番乗りは・・・やはり!麦わらの一味だァ!!!」
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