EPISODE.02



「おい、サニー号に急げ!なんか司会者が言ってるぞ!
「他の船はもう出てる!大遅刻じゃんか!」
「あんた達のせいでしょ!宝探しの準備だけっていったのに、なにお腹いっぱい食べてんの!」


ルフィもチョッパーも出店の食べ物を食いまくったせいでお腹が風船のように膨れ上がっていた。
苦しそうにする2人を見て叱るナミだが、ナミもまた10段重ねアイスクリームとショッピング袋を山ほど持っており「お前もだ!」とすかさずツッコミをいれるウソップ。


海賊万博を各々が満喫し、少し出遅れた麦わらの一味だったが海賊王の宝探しはまだ始まったばかりのようだった。


「にしてもこの盛り上がり・・・こいつは本物だぜ!」


ゴールド・ロジャーが遺した宝がこの島に眠っている・・・その事実が嘘であれ本当であれ、周りを見れば一目瞭然・・・本物であると信じる他なかった。


「安心しろ!宝は必ずこのウソップ様が獲る!やるぞチョッパー!!」
「おーう!」

『でも集まった海賊を見る限り・・・』
「やばそうな方々がウヨウヨしてますね」


ナマエとブルックの発言にそれまで威勢を張っていたウソップがピタリと止まる。
見聞色の覇気で探ってみれば周りには強敵ばかり・・・しかし海賊船の旗印を見れば懸賞金億越えクラスが並んでいるのでそれも納得だ。

顔を真っ青にさせたウソップは持病の"海賊王のお宝を探してはいけない病"が出たらしく、慌ててチョッパーが診察を始めるその一方で、ルフィは船首像に立つと船長らしい威厳たる姿を見せていた。

――会場はもう目と鼻の先だ、ルフィが期待を膨らませたその時・・・突然の海鳴りが襲う。


「なんだなんだ!?」
「ちゅ、ちゅ、中止の合図!?」
「違う、これは・・・海流が・・・!」


ルフィがサニー号の舳先から海面を覗き込んで見れば、潮の流れが急変していた。

万博島の中央港、噴火口跡の水の底から何かがせり上がってくるようで・・・中央港の海が突然、渦を巻き起こす。


「諸君!さっきの言葉を思い出せ!"深く高い暗闇にわれらの答えを葬り去る"!!」
「でも高くってどういうこと?」


モデラートとアンの実況が会場内に響き渡ると同時に・・・巨大な水柱が立ち上がった。

島の下から垂直に突き上げた海流は万博島の特殊な地形で増幅されて劇的な自然現象を生じ、深海の闇から、はるか天空へと昇るそれは――突きあげる海流ノックアップストリーム
深く、光も届かぬ深層から高く雲のある空まで・・・万博島のメイン会場に巨大な水柱が噴き上がった。
しかしそれだけでは終わらない――さらに水柱は驚く変化を海賊、観客達に見せつけた。


「島っ・・・島!?島が丸ごとおさまったシャボンがァ!!!」


突きあげる海流ノックアップストリームの奔流の中に、なんと巨大なシャボンが現れたのだ。よくみればシャボンの中には小さな島があり、会場中に小さなシャボンと水飛沫を吹きあげながらシャボンに包まれた島は水柱の中をものすごい勢いで上昇していく。


「これは・・・っもう間違いない!海賊王ロジャーが隠した宝の答えはあれだァ!!あのシャボンの中の島こそ、まさに宝島!!さァ海賊諸君・・・!あの突きあげる海流ノックアップストリームの頂にある宝島まで、どうやって突き進むー!?」


突きあげる海流ノックアップストリームの頂に達している宝島は、かなり高い上空にある。突きあげる海流ノックアップストリームは落ち着いたもののこの先一体どうやって進もうというのか・・・先陣を切ったのはユースタス・キャプテン・キッドらが乗るヴィクトリアパンク号だった。
キッドたちの船は突きあげる海流ノックアップストリームの周りを流れる螺旋階段のような海流に乗って上昇していく。


「おお!口火を切ったのは最悪の世代・キッド海賊団!船長ユースタス・キャプテン・キッドと相棒の殺戮武人キラー、共に参戦だァ!さあ、盛り上がってきた海賊万博!!これはもう・・・え、ちょ、アンちゃん?」
「これはもう海賊王ゴールド・ロジャーのお宝争奪戦争スタートだァー!!!」


モデラートのマイクを奪い取り、実況を盛り上げるアン。

キッドに続くように、最悪の世代と呼ばれるスクラッチメン・アプー、X・ドレーク、ジュエリー・ボニー、ウルージ、カポネ・ギャング・ベッジ、バジル・ホーキンスらの海賊船が後を追いかけていく。
続々と海流に乗っていく海賊船・・・その中にはキャベンディッシュ、バルトロメオの海賊船もあった。


・・・絶え間ない水飛沫、突きあげる海流ノックアップストリームに耐えきれず砕け散った海賊船の残骸が降り注ぐ中、ルフィと麦わらの一味もペースを上げる。


「よし!行け、フランキー!」
「任せろ!こんな時のためのとっておきがある!!楽しい元気な頼れるアニキ、フランキー・・・サウザンド・サニー号フライングモデル皇帝ペンギン仕様!!!」

「「「かっこいいー!!!」」」


変形するサニー号。舷側から翼が広がり、ライオンの船首像はペンギンになっていた。
ルフィ、ウソップ、チョッパーの3人はその変形に興奮するように目を輝かせ、感動する三人をよそにナミが急いで帆をたたむようにブルックたちに指示する。

準備している最中、背後からどこかで聞いた声が迫ってきた。


「待てこらクソゴムー!」
「あ、バギー」
「久しぶりだな麦わらァ!"あいつ"を渡しやがれ!!」


千両道化のバギーを乗せたビッグトップ号がサニー号に接近してくる。
バギーの言うあいつが一体誰のことを指しているのか全く見当がつかないルフィは特に気にすることもなくフランキーに合図を送った。


船長の掛け声と共に風来クー・ド・バーストが発動される。
船を飛ばすほどの爆発的なエネルギーが船尾から発射されるとサニー号の背後にいた海賊船はバギーたち含め吹き飛ばされていき、サニー号は物凄い勢いで空を飛んでいく。


「なな、なんとォー!どん尻から一気にまくってきたのは!今や!この海に知らぬ者なし!懸賞金15億のあの男!モンキー・D・ルフィー!!!」
「きゃー!!ナマエお姉さーーん!!!応援してまぁーーす!!!!」
『え、アン?』


仕事だと言うことを忘れ、興奮したように叫ぶモデラートとアン。
飛んでいく最中、アンの声が聞こえたナマエは驚いたように振り返った・・・が、実況席のある場所からはずいぶんと距離が離れてしまっており姿は確認できなかったものの、確かにその声には聞き覚えがあって。

旧友との再会に思わず笑みがこぼれるナマエ。



バルトロメオとキャベンディッシュの船を抜き去り、サニー号は空からトップグループを追いかけた。




   



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