EPISODE.13



ルフィの目元や鎖骨に、黒々とした模様が浮かび上がっていく。ギア4フォースだ。
横に立つナマエもキラキラの実を解放し、額に三日月模様の光が浮かび上がる。

軽く膝を曲げたルフィは凄まじいバネの弾力で魔王に向かって飛び出し、ナマエも持ち前のスピードで目にもとまらぬ速さで魔王へ立ち向かった。


攻撃の間隙を縫い、ルフィが魔王に接近しようとしている頃――現実世界でも、シャンクスが仲間の援護を受けて、現実世界に現れた魔王と対峙していた。

それを見聞色の覇気で、一瞬ではあるものの、現実の世界が見えたナマエは口角を持ち上げると手をかざし、月の光が手の中に集まり、それは光り輝く弓矢に変化した。

――このウタワールドでは、一点の曇りもない青空が広がっている。たとえ夜ではないとしても白亜の満月が、ナマエに力を与えてくれる。


弦月の弓セレーネ・アロー!』
「ゴムゴムの猿王軍鴉砲
コングオルガン
!!」


二人の攻撃は魔王に直撃し、それと同時に現実世界でもシャンクスと、そしてブリュレの兄であるカタクリの連携攻撃が炸裂する。

同時攻撃を喰らいウタワールドの魔王は体勢を崩してひっくり返った。現実世界の魔王もダメージを受け、ルフィとナマエの攻撃を喰らったのと同じ場所に、チリッとかすかな閃光が走る。

現実世界にいるシャンクスはすぐにピンときたのか「ルフィとナマエか・・・」と呟いた。その声が聞こえているかのように、ウタワールドにいるルフィとナマエが目を合わせて、笑顔で叫ぶ。


「『シャンクス!』」


ルフィとナマエの攻撃が当たったのをみていたブルックは、無い目を丸くして驚いた。現実世界と攻撃が同時だったことに気づいたコビーも身を乗り出す。


魔王は体勢を立て直すと片目に光を集め始めた。


「うおおおぉおーー!!」


ルフィが叫びながら再び魔王に向かっていき、ナマエ、ゾロも後を追う。
行手を塞ぐ音符の戦士たちをゾロは片っ端から切り刻みながら、ちょうど着地地点にいたサンジの肩を踏み台にして高々と飛び上がった。


「はああ?てんめえ!人を踏みつけにしやがってあのクソ剣士!!」
『サンジ!』
「はぁぁあーーい!ナマエちゅわぁあーーん!!おっ呼びですかぁあーーー?」
『お願い!飛ばして!』


続くようにナマエが、サンジの名を呼べば怒りの表情から一変、目をハートにしてナマエを振り返り、そしてナマエの言わんとしてることが伝わったのかすぐに頷き、宙で仰向けの姿勢になると片足を差し出した。

ナマエはルフィやサンジのように、メーヴェがないと空を自由に動くことはできない――ナマエは礼を言いながら器用にサンジの足の裏に着地し、そしてサンジは力加減を調整しながらも、ナマエをそのまま空高く、蹴り上げた。


魔王よりもさらに上を取ったナマエは魔王に光の矢を放ち、それは現実世界でベックマンが放った攻撃と同時に撃ち込まれ、大打撃を与えた。


「す、すげえナマエ!」


魔王が倒れている間、静かに目を閉じ、そして意識を集中させるナマエ。
頭の中の景色が変色し、さらにクリアになる。現実世界で暴れ回る魔王の姿、そしてそれに立ち向かうシャンクスと、赤髪海賊団。

――その中にいたヤソップの姿に再び目を開けたナマエは、その息子であるウソップを見遣る。同じ血の流れた親子なら絶対に"繋がる"はずだと信じ、ウソップに向かって叫んだ。


『ウソップ!冷静に、落ち着いて見て!』
「れ、冷静にっつったて、な、何を見るって!?」


咄嗟の状況に慌てながらも、ウソップはナマエの言葉を信じ、とにかく冷静に、落ち着かせるように深呼吸をしてみせる。すると・・・だんだんと心臓の鼓動が落ち着いてきて、冷静になった頭の中に不意に映像が流れ込んでくる。


「!・・・・み、見える!親父が見ている景色が!!」

「やーーっと気づいたか、バカ息子・・・ありがとよ、ナマエ!」



現実世界と連携すれば、魔王を攻撃するタイミングも調整することができる。勝機を見出したウソップが、大声で船長の名を呼んだ。


「ルフィーー!!」
「よし!!野郎ども!気合入れろーー!!」

「野郎ども!!気合入れろ!!」



同じ頃、シャンクスもルフィと同様に赤髪海賊団やカタクリに檄を飛ばしていた。
ウタワールドではウソップが、現実世界ではヤソップが、


「トットムジカの手足を止めるぞ!」
「指示に沿って動いてくれ!」



と、それぞれに気を吐いており、ウソップとヤソップが同時に合図を出すことで、それぞれの世界での攻撃のタイミングを合わせた。

ウソップの指示で左腕、左足、中央、右、とウタワールドと現実世界での各々の攻撃が炸裂する。
幾度となる同時攻撃を喰らった魔王は怨念じみた唸り声をあげ、間髪入れずに次々とウソップとヤソップの的確な指示で攻撃は続いた。


最後にウソップの放った弾は巨大な火の鳥へと姿を変えて魔王に突っ込んでいく。
次第に身体を失っていく魔王の最後の右腕が失われ、身体が大きくふらついた。


「ルフィ!!」
「シャンクス!!!」


今だ!!



ルフィは左拳を打ち出し、シャンクスは剣を抜いて、魔王の放つビームをかわしながら同時に跳躍した。

すでに魔王は満身創痍、だ。戦いの終わりが近いことを予感するシャンクスの脳裏に、ウタと過ごした短い期間の記憶が、奔流となってなだれ込んでくる。
その記憶は、ウタワールドにいるナマエの脳裏にも流れ込んでくるようだった。

これはシャンクスの記憶なのか、それともウタの記憶なのか・・・。


『(・・・っ、二人の、大切な思い出だ)』


シャンクスを見つけるたび、いつも嬉しそうにじゃれついてきた笑顔。ウタの歌声に合わせ、仲間と一緒に肩を組んで踊ったこと。フーシャ村で、ルフィと競争ばかりしていたウタの姿――。

キラキラの実の力によって二人の心に干渉しているのか、ナマエは目頭が熱くなるのを感じ、そして魔王の目の前に降り立つと、大きく息を吸い――愛する人への歌を、紡いだ。


『(お願い、ウタに届いて)』





――魔王に取り込まれたウタの瞳から、静かな涙がこぼれ落ちた。



   



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