EPISODE.00
世はまさに大海賊時代。
富や名声、力を求め、野望ある者たちは海へと繰り出した。
海賊たちにとっては夢の時代ーーしかし、彼らの中には奪うことだけを楽しみにしている者たちもいた。
それは力無き者たちにとっては、虐げられる日々が続くことを意味している。
世界政府の下にある海軍も、剣を持たない人々すべてを助けることはできない。
一年の糧となる作物も、先祖から受け継いだ財産もすべて取り上げられ、反抗した者は命さえ奪われて・・・人々は希望を見失い、暗闇の中を生きていた。
そんな人々に、救いの手を差し伸べる者がいた。
"大海の歌姫"
老若男女問わず、誰もが一度は耳にしたことのある素性の知れない歌姫。のらりくらりと島に現れては場所問わず歌を披露し、そして彼女が現れたと言う情報は瞬く間に広がり世界中のファンが押し寄せてくる。人が集まれば資金も集まり、その影響力は貧しかった町をたった一夜にして活気を取り戻させ裕福な町に変えるほどであった。
また大海の歌姫はその場所で得た資金源は必ず寄付をし、歌声だけではなく人格者としても"救世主"と崇められるほどであった。
そんな人々の心の拠り所であった大海の歌姫が、今となっては大海賊ゴールド・ロジャーの娘ポートガス・D・ナマエとして国際手配され、また麦わらの一味に仲間入りしたことにより世間を騒がす事になるなどとだれが予測するだろうか。
ナマエの居場所がバレれば世界政府、そしてナマエの力を欲している海賊たちが動き出す。
それまで貧しい国や村を訪れていたナマエも、己の身分をわきまえているため歌姫としての活動は頂上戦争以来、自分の中でのケジメをつけ、行う事はなかった。
ナマエの正体が世間に知られたとしても、それでもファンは減る事はなかった。それほどナマエの人望は高かったが、縋り付くものがなくなってしまった人々は再び暗闇へと落ちていく・・・。
誰に頼れば良いのだろう。何にすがれば救われるのだろう。
絶望する人々の前に、ナマエが引退して間もない日、一人の少女が現れた。
少女はナマエ同様に苦しみを受け止め、安らぎを与えた。暴力に怯える人々の暮らしに、希望を持たした。
彼女なら、ナマエがいなくても私たちの苦しみを分かってくれる。
彼女だけが、私たちに心の安らぎを与えてくれる。
縋り付く人々を、少女は決して拒絶しなかった。
「わかってる。わかってるよ、みんな。みんなが幸せになる"新時代"を・・・私が作ってあげる」
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