EPISODE.13



「こっからが決闘だ!!バレット!!」
「決闘・・・いい度胸だ!!どっちが強ェか殴り合いといこうぜ・・・!!」
「お前はとんでもなく強ェ!だけどおれは・・・おまえを超える!!」
「貴様にはムリだ!!」


互いに武装色の覇気を拳に纏わせ、激しい戦いが繰り広げられる。


「この海は戦場だ!己のみを信じ、ひとりで生き抜く頑固たる覚悟にこそ、無敵の強さが宿る!!!」


――バレットは完全な孤独の中で強さを積み重ねていった。


・・・ロジャー、そして白ひげ。

バレットが知る海で威勢を極めていた大海賊は死んだ。――病に負け、老いに負けた。
その死が本人にとって不本意であったのなら、死に方が選べなかったのだとしたら、どれほど強かった男も無様なものでしかない。

唯一、バレットが手も足も出せなかった男ロジャー・・・バレットがロジャー海賊団に入ったのは、そのロジャーのチカラの正体を知りたいと思ったからだった。
・・・けれど今となってはそのチカラがなんだったのかも分からなくなった。分からないのだ・・・自分の目的すらも。それでも存在しないものを求め続けるわけにはいかない。
人間の寿命は短い・・・その短い人生の時間の半分をバレットは獄中の中で過ごしてしまった。


「ッ貴様・・・・・・!」



麦わらルフィは・・・あのロジャーの謎のチカラの正体を知っているのだろうか。

ロジャーとは強さの求道者バレットに最初で最後の迷いを与えた男であった。
ほんの3年間バレットはロジャーのもとで迷ったのだ。その迷いは寄り道ではあったが、ムダであったとは思わない。


「麦わら・・・貴様が"強さ"を知っていようが、知っていまいが・・・!」
「ぐぁッ!」


重い一撃がルフィの顎をとらえ、地面に激突していくルフィ。そのルフィにトドメを刺そうと、バレットは渾身の覇気を纏いながら追撃にかかった。


「この"強さ"が海賊王だ!!!」
「!!!」


あらゆる相手を超えて倒し続けること、それが"最強"だという答えを導き出したバレット。

土煙の中から跳ね起きたルフィは真上にいるバレットを睨み上げると、ルフィもバレットを迎え撃つため、渾身の覇気を纏わせて、地面を強く蹴る。


「そんなもん海賊王じゃねェ!!」
「くたばれ麦わらァ!!これが最後だ!!!」
「ゴムゴムの大猿王・銃乱打キングコング・ガトリング!!!!」
最強の一撃デー・ステエクステ・ストライク!!!」


互いの拳と拳をぶつけながら、バレットの渾身の一撃がルフィの顔面を捉える。
地上で、サボに支えてもらいながらその戦いを見ていたナマエは大きな声でルフィの名を叫んだ。


「この海を、1人だからこそ勝ち続ける・・・・・・世界最強は、このおれだァ!!!」
「ッ・・・・・・うるせェ・・・!!」
『っ、ルフィ!!!』


この海を1人で生きてるやつなんて・・・いるわけねェだろ!!!
「!!!」




――おめェは強ェぜ。いつでも来い、バレット・・・・・・!!!




あの頃――見るからに極悪人のようだったロジャーは、笑ってはいないのに確かに笑っていた。その男を前にしてバレットは心底、勝てないと思った。・・・今は勝てない、といったほうが正しいのだろうか。だが勝ちたい。だからロジャーの強さを知りたくて、志願して船に乗った。
バレットの胸中にあるのが忠誠ではなかったことはもちろんロジャーも承知だった。


それでも・・・・・・あれはバレットが生涯唯一、心から笑った瞬間であった。

あんな清々しいときは無かった。あんなにも生き甲斐を感じる日々はなかった。





――なぜ、死んだのだ。

この海を、ひとりで生きていけるやつなんて、いるわけがないのに。




「・・・・・・・!!」
「うおおおおお!!!!」


ほんの一瞬、バレットの覇気が緩んだのを見逃さなかったルフィの攻撃が炸裂する。


「おれは!!!海賊王になる男だァあああぁああ!!!!!」



――ルフィは、鬼の跡目と呼ばれた伝説の男を遂に倒した。
地面に叩きつけられるようにして落ちていったバレットはもはや立ち上がることはなく、万博島での戦いが終わりを告げる。


仲間、同盟者、海軍、海賊・・・・・・万博島に集結した皆が、その勝利を見届けていた。


「ハァ・・・ッハァ・・・ッ」
「ルフィ!!」


覇気が底を尽き、口から空気が抜けて地面に落ちるルフィの元に駆け寄るハンコック。


「そなた、大丈夫か!」
「・・・っ獲ったぞ!!宝!!」
「!」


大の字で寝ながら笑うルフィの手には、海賊王ロジャーの宝箱があった。


「ししししっ!おれの勝ちだ!!!」
「ルフィ、これはなんじゃ?」
「海賊王の宝だ!中身は・・・」


宝箱を開け、中身を見たルフィは首を傾げ、ハンコックは目を見開かせた。


「こ、これは・・・!ラフテルへの永久指針エターナルポースじゃ!これがあれば・・・!」


偉大なる航路グランドライン最果てのラフテルへの道しるべ。この永久指針エターナルポースさえあれば最短航路となり、つまりひとつなぎの大秘宝ワンピースを手に入れたとも当然なのだ。

ラフテルと書かれた永久指針エターナルポースを手にしたルフィは、訝しげに眉を潜めた。

海賊王になるのがルフィの夢・・・エース達と約束した"夢の果て"だ。


『!ルフィ!!』


遠くにいたナマエの声でハッと顔を上げたルフィの視界に、クロコダイルとCP-0のロブ・ルッチが映る。
2人の目的はただ1つ――ルフィの持つ永久指針エターナルポースだ。


「そいつをよこせ!!」
「麦わらァ!!」
「・・・・・・!」


――バキッ!!!!!


ルフィは何の躊躇いもなく、永久指針エターナルポースを握りつぶした。完全に意表を衝かれたクロコダイルとルッチは思わず立ち止まると、ルフィを睨みつける。
・・・しかしルフィも、表情こそ冷静だが心の中は穏やかなものではなかった。


「てめェ・・・なにしやがる!!」
「おれはこれ、いらねェ!!!」
「!」


その宝のために政府も海軍も海賊も、世界が大騒ぎしたというのに・・・。
皆が呆れるなか、サボとナマエは――ルフィらしいその行動に顔を見合わせると笑い合った。


「ムチャクチャだ、麦わら屋・・・」


1つ溜息をつきながらそう呟いたローがROOMルームを張る。それに気づいたサボは被っていた帽子を外すと隣にいるナマエの肩をぐいっと引き寄せ、


「ナマエ」
『?・・・っ!』


誰にも見られないよう――帽子で隠しながらキスを1つ落とした。そして耳元で「またな」と囁き、呆然としている間にローの能力が発動する。


『ま、待って、サボ――』
「シャンブルズ!」



移動する瞬間、帽子をかぶりながら笑うサボの顔が見えた。





   



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