EPISODE.12
サボとスモーカーの放った攻撃が究極バレットの右肩を削る。再構成される前に崩壊したバレットの右腕は肩口から切断されるように、まるで山が崩れるかのような勢いで地面へと落下していった。
しかしそれで動じるバレットではなかった。千切られた右肩から再び再構築が始まり、青い光を纏ったガラクタが結合していく。
「そうはさせるか・・・!ッ、ナマエ!!」
――サボが背後にいるナマエを振り返る。そこにはすでに光り輝く弓矢を構えて準備をしていたナマエの姿があった。
ズキンズキンと痛む左腕に渇を入れながら、歯を食いしばるように究極バレットに狙いを定めるナマエの光の矢は、綺麗な弧を描くようにして――再構築する究極バレットの右腕に直撃した。
ドオオオオォォオォン!!!!!
激しい爆発と衝撃。究極バレットの一部だったガラクタは再構築が難しいほど粉砕され、バレットは矢が飛んできた方角――ナマエを視界に捉えると口角を持ち上げた。
「!ッロジャーの娘・・・カハハハ・・・これで追い込んだつもりか!」
「!まずい!離れろ!!!」
究極バレットは左腕を振り上げ、危険を察知したローの言葉にサボ、ハンコックたちが大きく距離をとる。
「片腕ぶん削がれようが・・・きさまらを消すには充分だ!!」
武装色の覇気を纏った左腕が、地面を叩きつけられる。その勢いはとどまることを知らず・・・能力の多用により、各々の体力はとうに限界を超えていた。
「チッ、ダメか・・・」
『!まだだよ!』
「!」
「全員でもう一度やつを削る!ルフィに繋ぐんだ!」
「麦わら屋・・・?」
ロー達はそう言い放ったナマエとサボを見た。2人の瞳はまだ希望を持っているようにみえ、首を傾げた一同が、2人が見ている方角に視線を移す。するとそこには――弾む男となったルフィが空高く飛び上がり、巨人族よりもさらに大きく腕を、筋肉風船を増強していたのだ。どんどんと大きくなっていく腕は究極バレットに匹敵するほど、さらに巨大化していく。
その姿にハンコックは歓声をあげ、一番疲弊していたはずのローが再び全員に指示する。
「麦わら屋に続け!!!」
戦場にいた者達は、例え仲間でなくても1つの意思となって動きはじめる。
バレットも上空にいるルフィの存在に気づいたようだが、決して手を出そうとはしなかった。いかなる攻撃であれ、ガシャガシャの実の能力が負けるはずがないのだから。
それよりも自身に向かってくるサボ、ナマエ、スモーカー、ハンコック、そしてローたちを迎え撃とうと身構えた。
「バカが!!弾き返して終いだ!!!」
究極バレットの武装色は鉄壁の鎧・・・四方向からやってくる者達に反撃しようとしたその時――ローが刀の鞘を捨て、再び能力を発動した。
「"ROOM"――シャンブルズ!!!」
「!!」
次の瞬間、四方から仕掛けてきた5人が一瞬でバレットの目の前に移動される。しかし驚いたのはバレットだけではない・・・事前の打ち合わせもなく、突然場所が移動したことによって意表をつかれた一同だったがそれでもサボ、ナマエ、スモーカー、ハンコックはすぐにローの意図を察し、攻撃準備に掛かる。ただ1人・・・バギーを除いては。
「どェっえええ!?な、なんでこんなところにー!?」
「火拳!!」
『弦月の弓!』
「ホワイト・ブロー!!」
「虜の矢!!」
「ラジオナイフ!!」
それぞれ繰り出された技が1つとなって、究極バレットを貫く。
武装色の覇気の鎧は破られ、究極バレットの腹部が半分削られるほどの大きな穴を開けた。
「ぬおおお・・・!!っこざかしいわ!全て叩きつぶしてくれる!」
ガシャガシャの実の能力が発動する。初めて怒りを露にしたバレットは、無かったはずの下半身と脚を作り出すと目の前にいる5人を蹴り飛ばした。
「っあの状態になって動けるのか・・・!!」
地面に叩き飛ばされ、唸るロー。しかし5人の攻撃を繋げるように、上空から――ルフィの声が、全体に響き渡る。
「バレットォォオオオ!!!!!」
膨らませ続けていた右腕に、これなら負けないと絶対の自信を持つルフィ。
青い光は究極バレットの全身を覆っていき、先の攻撃でダメージを喰らった右腕、腹部は再構築は出来ないものの、下半身の構築が終わると足場を固め、全ての破棄と能力を、残された左腕に集中させた。
「ウルティメイト・ファウスト!!!」
「ゴムゴムのォ・・・・・・大大大猿王銃!!!」
巨大なふたつの拳が激突する。武装色の覇気は共鳴するようにきしみ合った。
――2人の戦いに島全体が揺れ動き、転地異変が覆い尽くしていく。
『ルフィ・・・!』
長い接戦の後、打ち抜き勝ったのはルフィの拳だった。
覇気を破り、究極バレットの拳を打ち砕いたルフィはそのまま究極バレットの頭部に拳を喰らわせたのだ。
鈍い音が響くと同時、究極バレットの頭部は爆発し、青い光が拡散する。・・・ガシャガシャの実が解除されたようだ。
維持できなくなった究極バレットは空中で分解されるとバラバラに崩れ落ちていき、それを地上から見ていたロー達は勝利を叫ぼうとした――が、戦いはまだ終わってはいなかった。
『!』
崩壊していく究極バレットの残骸の中に、鉄巨人バレットの姿があったのだ。恐らく本人はあの中にいるのだろう。
「麦わらァ・・・!!よくも・・・ッ・・・だが残念だったな!!」
空中で、鉄巨人バレットは落下しながらも身構える。ルフィの腕の筋肉風船はしぼんでしまったものの、それでも覇気はまだ残っている。弾む男の姿を維持したまま、立ち向かおうとしたが・・・相手は最悪の世代総がかりでも倒す事のできなかった化け物だ・・・どこまで通用するかルフィ自身、知る由も無かった。
「カハハハ!あと一歩強さが足りなかったな・・・!!」
鉄巨人の腕がルフィを標的にする。地面に降りると同時にルフィ目掛けて攻撃を繰り出そうとした――刹那。
――パキッ!!!
だれも木の実が割れる音には気づかなかった。
鉄巨人バレットのボディに入り込んでいた多数の木の実――クルミ弾が割れて、中から緑の芽が出るとそれは急成長をし、蔓となって鉄巨人のボディに絡んで身動きを止めたではないか。
「な・・・なんだこりゃァ・・・?」
さすがのバレットも動揺を隠し切れなかった。操縦席まで機体の内部から生えてきた蔓に埋め尽くされ、動きを封じこめられてしまったのだから。
「壊れた・・・?どうなってるんだ・・・?」
『もしかして・・・・・・』
バラバラになる鉄巨人バレットに、ロー達も一体何が起きたのか理解していなかった。
ただ1人・・・心当たりのあったナマエは、麦わら一の狙撃手――ウソップを思い浮かべていた。自分を助けてくれようとした時、どさくさに紛れて仕込んでいたというのか・・・。
弱いと貶していたウソップの攻撃が、まさか自分を追い込ませる決定打となるなんて・・・バレットは思ってもいなかったのだろう。
「やっと出たな!!」
鉄巨人の中から現れたバレット本人の姿に、ルフィの口角が上がる。ありったけの覇気を纏い、硬化した拳をバレットに打ち込んだ。
「ッ麦わらァ・・・!!」
一瞬、意識を失いかけるバレットだったが、鬼気迫る表情を浮かべるとルフィに反撃を開始した。
いかにバレットといえど、あれほどの巨大な物体に覇気を纏わせ続けていたのだ。消耗していないわけがない。そしてロー達の攻撃は確実にバレットの覇気を削っていて、ルフィの大大大猿王銃も効いている。
――バレットの表情に、先ほどまで見せていた余裕は無かった。
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