君とならどこまでも



「サボ君、ナマエさんがいなくなったって急に騒ぐから何事かと思ったよ」
『ごめんね。迷惑かけて』
「ううん!怪我がなくてよかったわ。それにナマエさんのおかげでわたし達が探ってた武器商人の密輸の大元も分かりそうだし」


大手柄だよナマエさんとウインクしたコアラは縄で縛られた男たちに視線を向ける。
・・・あれから近くで待機していたコアラ達革命軍の船がやってくると男達の身柄はすぐに確保され、捕まっていた女性や子供達もそれぞれの場所へと帰されていった。

コアラからもらったホットココアを啜るナマエは、隣でムスッとした顔で座る、なんとも声の掛けづらいオーラを放つサボに恐る恐る声をかけてみる。


『サボ、なんか怒ってる・・・?』
「・・・ああ。ナマエから目を離した自分の不甲斐なさにな」
『そ、そんな事ないよ。わたしも、楽しすぎてつい気を抜いちゃって・・・っ、ごめんね、心配かけて』


男達もまさか攫った相手がポートガス・D・ナマエだとは気づいていなかったようで、手当たり次第、1人になった女性を狙って人攫いをしていたらしい。

サボ君こわーい、と遠くから野次をかけるコアラに小さく舌打ちしたサボは、徐に立ち上がるとナマエの持っていたカップを奪って床に置き、「行くぞ」と手を引っ張ってその場を後にした。


「ナマエとの貴重な時間を・・・はあ・・・とんだ邪魔が入ったぜまったく」


サボも同じ気持ちだったことを知ったナマエは堪らなくなり、目の前にいるサボの背中に飛びついた。


「うおっ」
『助けてくれた時のサボ、凄くかっこよかった』


助けてくれてありがとう、そう伝えるとサボは赤面した顔に手を当て、天を仰いだ。
そしてナマエの腕の中でくるりと向きを変え、向かい合うようにすると正面からナマエを抱きしめ直し、身長差で前屈み状態になったサボはナマエの肩に顔を埋めながら、ハアと重く長いため息を吐く。


「あー離したくない・・・ナマエ、いっそのこと革命軍に入らないか?」
『ふふっ。そしたらまたルフィが泣いちゃうよ』
「だよなァ・・・・・・残りの時間、どうする?」
『あ、その事なんだけどね、私、サボと行きたい場所があって・・・その、静かで、2人きりになれる、ところなんだけど』
「ああ、どこへでも連れてって・・・・・・へ!?」


大胆すぎるナマエの誘いとも呼べる発言に顔を上げたサボは期待の眼差しを向けた。ほんのりと赤く頬を染めるナマエに、バクバクと心臓が大きく鳴り止まない。


「そ、それって、」
『う、うん・・・あのね、』












『わあ、もうこんな高いところまで登ってきた!見てみてサボ、人があんなに小さい!!』
「だよな・・・そんなわけ、ないよなあ・・・」
『?サボ?』


――1人遠い目を向けていたサボは、"観覧車"の中ではしゃぐナマエを見つめ、酷く落胆した様子で溜息を吐いた。
恋人同士なのだから、"そういう事"もある程度想定はしていた・・・が、ナマエはルフィと並ぶほどの純粋な心の持ち主。よく考えれば絶対にありえないと分かる事を、少しでも期待してしまった自分が恥ずかしく思えてきて心の中で何度も「悪いエース」と兄弟に謝っていた。


『・・・大丈夫?具合でも悪いの?』
「っ、」


1人自己嫌悪に陥るサボの顔を、心配そうに覗き込むナマエ。
余計な心配をかけてしまったことに「悪い、考え事してただけだ」と頭を撫でれば、ナマエはそれならよかったと言ってサボと向かい合わせになるように座ると、ずっと手にして持っていたシャボンディパークのパンフレットを見せた。


『あのね、これ見てどうしても乗りたかったんだ』
「ん?」


渡されたパンフレットには、シャボンディパークの観覧車に乗ったカップルは永遠に幸せになれる、と如何にも子供騙しのような謳い文句が書いてあって。
けれどそれを信じているナマエは頬を赤く染めながら『サボと乗れて嬉しい』と言うものだから、もはやそんなジンクスがなくとも一生幸せにしてあげたいという愛おしむ気持ちが込み上げ、サボはナマエの腕を引っ張り自分に引き寄せると、そのままナマエを強く抱きしめた。


『わっ』


驚きながらもナマエも嬉しそうにサボの背中に手を回し、隙間なくピッタリとくっつく2人。


「ナマエ」
『ん?』
「また来ような」
『!うん!絶対!』


楽しみが増えた、と無邪気に笑うナマエに、サボはナマエがかけていたサングラスを外すと自身のサングラスも外し、そして触れるだけのキスを落とした。


『ん・・・』


ひょいと軽々しく身体を持ち上げられ、膝の上に座る形になると自然とナマエがサボを見下ろす形となり、その間も2人の唇が離れることはなかった。
優しく啄むようなキスを繰り返していると、窓の外を見たナマエがサボの肩をぐいっと押し、顔を離す。


『・・・サ、サボ?もう着いちゃ、っ』
「まだ・・・足りない」


先ほどの優しく啄むような接吻とは違う・・・喰らいつくようなキスをされる。
逃げられないよう後頭部に手を回し、もう片方の手は腰に回してしっかりと固定をし、呼吸の仕方が分からないナマエからは次第に息が上がってきた。

2人を乗せたゴンドラはゆっくりと下降をはじめ、地上が近づいて来たのを横目に、名残惜しそうに唇を離したサボは肩で息するナマエの前髪をかき上げるとちゅっとリップ音を立てて口付ける。


「ルフィが羨ましいよ・・・毎日ナマエといられるんだもんな」
『そ、それを言うなら私だってコアラさんが羨ましいよ?』
「ナマエになら口煩く言われてもいいかも・・・」
『えー、私サボに強く言えるかなあ』


なんて他愛もない話をしているうちにゴンドラは終点について、手を繋いで出て来た2人は時間も時間のため、コアラ達の待つ革命軍の船に帰って行った。


――その日の夜は、コアラに渋々了承を貰い、サボの部屋で眠ることになったナマエ。
案の定、サボはナマエの知らないところで理性との戦いを繰り広げていたが、ナマエを大切にしたい一心でその勝負に負けることはなく(キスはたくさんしたが)、2人は同じベッドの中でぐっすりと眠ることができた。









「ナマエさん、またいつでも来てね!待ってるから」
『ありがとう、コアラさん!ごめんね、お洋服までもらっちゃって・・・』
「いいのいいの!それより、さん付けやめにしない?コアラって呼んでよ。その代わりわたしもナマエって呼ぶからさ!」
『!うん!』

「おーい・・・俺のこと忘れてねェか・・・?」


港まではコアラとサボが見送りに来てくれた。ナマエとコアラ、すっかり2人だけの空気に疎外感を覚えたサボが俺もいるのに、敢えて寂しそうに言いながら背後から抱きつけば、ナマエは顔を赤面させながらも必死に謝ってくる。


『ご、ごめんねサボ、そんなつもりじゃなくて、』
「はは、分かってるって。ちょっとからかいたくなっただけだよ。ごめんな」


そう言って頭を撫でればナマエは安心したのか嬉しそうに微笑んでいて、そんな2人のイチャイチャとした光景を目の前で見せつけられたコアラは心底呆れたように溜息を吐く。


「サボ君、いつまでもそんなんだと・・・そのうちナマエに愛想つかされちゃうよ?」
「んな事あるかよ。俺たちは永遠に幸せになるんだよなーナマエ」
『!う、うん』
「げっ。ナマエはともかくサボ君からそんな言葉聞くなんて・・・なんだか気分が悪くなってきたわ」
「なんだよそれ!失礼なやつだな」
「ナマエ、まだ遅くないから、考え直さない?ほら、ナマエにはもっと相応しい人がいると思うの!」
「お前なぁ!」


いつもと変わらないコアラとサボの掛け合いに笑っていると・・・船の汽笛が鳴った。出航の時間がきたようだ。


「またな、ナマエ」
『うん!サボ、コアラ。ありがとう!』
「気をつけてね」


橋を渡ってしまえば、暫くサボとは会えない・・・そう思うと急に寂しさが込み上げて来て、ナマエは一度乗った橋から踵を返すと、驚いてこちらを見つめるサボの元へと飛び込むとぎゅーっと首に抱きつき、そして『またデートしようね、サボ』と頬にひとつ、キスを落とした。

――ナマエがこういう行動を人前でするとは思っていなかったサボは呆気に取られ、ひょいとサボから離れたナマエは笑顔で手を振り、橋を渡り船へと乗り込んでいく。


『サボー!コアラー!またねー!』


手を振り返すコアラもまた、先程の光景がまだ脳裏に残ってるのかその顔は真っ赤に染まっていた。


「・・・ナマエってば意外と大胆」
「クソ・・・何回俺を落とせば気が済むんだ・・・」


船は出航し、サボとコアラに見送られる中、ナマエはエレジアへと向かった――。













『ルフィー!みんなー!』
「!ナマエーーー!!うおおおおん心配したんだぞぉおおーー!!??」
『えへへ、ごめんね。そうだルフィ!これあげる。心配かけちゃったお詫び』
「?なんだこれ?」
『グラマン!みんなの分もあるから、一緒に食べよ!』






   



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