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死ぬまで一生愛してる

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白石と俺は、時々セックスをする。
だけど俺達は付き合ってるわけじゃない。



(所詮セフレっちゃね…)
部活が終わりバラバラと部員達が帰り人の少なくなった部室で、はぁあと深い溜め息を吐けば隣にいた謙也が顔を覗き込んできた。

「どしたんや千歳、そんな溜め息」
「んー…、恋の悩みったい」
笑いながら答える。間違えてはいない。しかしそれを聞いた謙也はキョトンとして「え、千歳彼女おったっけ?」と返してくる。
「や、彼女ち云うよきゃん、その…」
「片想い?」
「んー…みたいなもんやね」
苦笑いすれば珍しいものを見つけたように謙也がへーと零した。
「千歳なら一発オーケーもらえるんやないん?告白とかせんの?」
あっさりと云う彼に苦笑いながら俺は着替え終わって使わないロッカーをばたんと閉じた。

「気持ちは伝えたっちゃよ。ばってん、心はあげれんち云われたったい」
その言葉にギョッとした謙也が声を荒げた。
「お前、セフレおるんか…!」
その言葉に一気に残っていた数人の部員の視線が集まる。気まずい。
「…謙也、声が大きかよ」
呆れて云えば流石にまずかったと思ったのか素直にすまんと返された。
「せやけど、え、実際マジなんそれ?」
ばってん流石思春期の男子ったい。そのまま話は続けられて、俺はやれやれと思いながらも他の部員には届かないように声を潜めて答え始める。

「ちょっと謙也が思っとるんとは違っとうかも知らんけど…まぁそんなこつやね」
「なんでそんな関係になったん?」
「あ、ほら、俺がサボり癖酷いっちゃろ?いつも叱られとって、ばってんセックスばさしてくれたらちゃんと学校行くばい、ち冗談で云うたら…」
「ヤらしてくれたん?」
「…ん」
「え、何、年上なん?」
「んー…タメやね…」
「…なんや、大変やなぁ」
謙也は幼なじみか何かと思ったのか「そら悩みもするわな…」と1人で呟いちょった。
「せやけど好きなんやったらセフレはあかんやろ、やっぱりもっかいちゃんと伝えてー」

謙也がそこまで喋った時に、部室の扉が開いた。

「謙也お前部室でなんちゅー話しとんねん。外まで丸聞こえやで」
「白石…」
そう云いつつもえっ、嘘やろ!なんて慌てる謙也には大して気にも止めず、彼の視線は俺に向いていた。その瞳は、今にも泣き出しそうで思わず抱き締めたくなった。


「っ、白石、待ってくれんね?」
そのまま日誌を謙也に押し付けて部室からバッグを取り出て行った彼を追い呼び止めれば、せっかくの綺麗な顔を歪めて白石は叫んだ。
「お前、好きな奴おるのに、俺なんかとセックスしとったんか…!」

「っ、…え?」
恐らくさっきの話なのだろうが、明らかに勘違いをされている。
「白石それは、」
「なんでそうならそうやって云うてくれんかったんや!云うてくれてたら俺やって、…っ」

そこまできて、俺は白石の言葉に違和感を覚える。
「…なして白石がそんなこつ気にすっとや?」
「…な、なんやいかんのか」
咄嗟に口ごもる白石の腕を掴み、引き寄せる。一瞬逃げようと身を捩られたが、力は俺の方が格段に上だ。白石もすぐにそれを諦めた。
「白石、なして…?」
「、部員が不純異性交遊なんてしとったら、こっちが迷惑するねん」
逃げるのは諦めたが視線を合わせずにそう云う白石に、俺は胸がじくりと疼く。

「…、ばってん、俺と白石は違っと?」
「…は、」
「白石と俺は、不純同性交遊じゃなか?」
「っ…!」
俺が云わんとする事を理解し一瞬目を見開いてすぐに顔を真っ赤にして手をあげた白石に俺は咄嗟に目を瞑る。しかし襲ってくるはずの痛みは訪れずに、そぅっと目を開ければ白石がへたりと土に座り込んでいた。

「しらい、」
「…せやったらどないしろっちゅーねん、」
「ー…え、」
いつもじゃありえない程の弱々しい声で白石はぽつりと呟いた。

「…俺もお前も男で、いつか捨てられてまうのに付き合うとかアホらしいやん」
「し、」
「…せやけど好きなんや…しゃーないやろ」
俺は思わず目を見開く。
彼は今、何と云った…?

「白石、俺んこつ、好きにはなれん、ち…」

一番最初に彼に云われた言葉を呟けば、
「どうせ恋人になっても捨てられるなら、友達でおって、セフレのが良かったんや…!」
と俯きながら白石はそう吐き出した。

「っ、ちと、」

その言葉に我慢出来なくなった俺は思わずその身体を抱き締める。
「何すんねんちとー…」
「好いとう人は白石ったい」
「…え、」
「濁して話しとうたら謙也が女と勘違いしただけばい」
「う、嘘、」
「嘘やなか!」
思わず叫べば、びくりと身体を跳ねさせる。
ああもうこんなところさえ愛しいというのに。

「…俺は白石が思っとう以上に白石を好いとうよ…捨てるも何も、俺が好きなんは一生白石だけばい…」
真正面から見据えながらそう告白すれば、白石の真っ赤になった瞳からまた何筋も雫が零れ落ちる。
「嘘やそんなん、絶対嘘、」
「嘘やなか、…もし嘘やったら、俺んこつ殺しても良かよ」
真面目にそう呟けば、白石は涙を流しつつもクスリと微笑んだ。
「…なんやそれ、捕まるんは嫌やで俺」
その泣いてるのに愛しげな、それでいて切なげな表情にどくりと胸が鳴る。
ああもうほら、こんな時ですら君は美しい。
「白石、好いとうよ…」
再びその身体を抱き締めて囁けば一瞬間を置いて、「…俺もや千歳、」と泣きながらも強く抱きしめ返されて、もっと愛しさが溢れてきた。


end

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久しぶりのちとくらでした!
前に書いたのがすれ違いでバッドエンドっぽかったので今回は幸せエンドですドヤッ!

相変わらずうちの謙也さんはアホですね。自重しろ。しかし友達思いなだけなんです。うん。







――死ぬまで一生愛してる――




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