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もしもなんていらない

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なんとなく。
そう、本当になんとなくだったんだ



「あんたもし俺が死んだらどうする?」


特に何かを意図したわけでもなく、なんとなく不意に思い立って顔も会わせずにそう呟けば、ひくりと息をのむ音が聞こえた。

「遠やー…、」
その音に振り向き様子を見れば聞いた俺が驚く程の形相で、遠山は俺を見ていた。

「なんで、」
そんな事云うん、と呟いた遠山の瞳からポロリと雫が零れて、(しまった)と小さく心の中で舌打ちする。
「コシマエは死にたいん?」
「別に、」
「せやったらなんで!…なんでそんな寂しい事云うんや…」
あまりにも苦しそうに吐き出すから、俺まで辛くなる。
本当になんとなく聞いただけだったのに。なんでこいつはこんなに辛そうにするんだ。
ごめん、と囁きながら俺より少し大きい身体を腕の中に引き寄せれば、されなれない行為に戸惑いながらも、恐らく想像したのであろうそれを振り払うかの様に遠山は俺の身体にしがみついてきた。

「…わい、コシマエが好きや」
「うん」
「むっちゃ好きやねん」
「…うん」
「ずっと一緒におりたい」
「…」
「ずっと一緒におって、一緒にテニスして、一緒に笑って、一緒に泣いたりとか、色々、したいねん」
「…俺は泣かないけどね」
すかさず突っ込みを入れれば「今のはボケちゃうわ」と小突かれる。なんだ元気じゃん、と笑おうとしたら、眉間に皺を寄せて、いつもじゃ有り得ない程切なげな顔をした遠山が俺を見つめていて、

「せやから、ほんまに頼むわ…もしもでも、死ぬとか云わんといて…っ」

とくり、と胸が音をたてる。
「そういうのって、想像するだけでも寂しいやんか」
きゅう、と胸が締め付けられる。
「…そういうの、ほんまに嫌やねん」
いつの間にか背中に回された腕に力が込められる。馬鹿、痛いじゃん。
「せやからコシマエ、」
「うん」
「…?」
もう涙でぐちゃぐちゃになった顔を上げて俺を見る遠山に苦笑しながらちゅ、と軽く触れるだけのキスを落とす。

「ごめんな遠山、もう云わないから」

一度だけ「おん、」と呟いた遠山がまたキスをねだるから、俺は今度は深く深く口づけてやった。


(たった一言でそんな泣きそうになるなよ)


…それでもあまりに切ないそれに、
普段の口癖は呟く事すら出来なかった。



end


***********

なんかよくわからないですね!
リョーマがいなくなったら
金ちゃんすごい寂しいよね
って思ったらこんな話に
なってました一応設定的に
2人は付き合ってるよ!(笑)

他のカプでもこのシリーズは
書いてみたいなぁ。







――もしもなんていらない――




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