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気付く事も出来ないくせに

―――――――――――――


「なぁ真田、」

幸村は、神の子なんかではない
…少なくとも、俺にとっては。


部活も終わり、俺と蓮二と幸村の3人だけが残る部室に幸村の部誌を書く音だけが響く。
時々その音が止まるが、蓮二と何か話して再びペンを走らせる音が聞こえる。

前に赤也が残っていた時は「この空気ちょー辛いッスよ副部長!」などと騒いでいたが俺はこの時間がとても好きだった。
幸村のペンが奏でる音も、試合とは違う意味で張り詰めた空気も、2人が喋る声も、俺は好きだった。
それより何よりもー…

「真田、終わったから帰ろうか」

全てを終えて満足げに微笑んで俺の名を呼ぶ幸村はとても美しく、俺はこの瞬間が一番好きなのだ。

「真田?」
呼びかけられてハッと顔を上げれば2人がこちらを見ていた。
「また精市に見とれていたのか弦一郎」
蓮二にからかうように笑われて顔が熱くなる。確かにその通りだが言葉にされれば恥ずかしい。しかも本人は涼しい顔をしているのだから妙な気恥ずかしさがある。

「そうからかうなよ柳。顔が真っ赤だ」
幸村はクスリと微笑めば、俺の首のマフラーをふわりとかけ直した。
「外は冷えるから、気をつけないと」
その顔が近くて、顔の熱がさらに上がる。
「お前の方がよっぽどタチが悪いぞ」
呆れたように呟く柳に幸村は楽しそうに笑うと「真田が俺を好きなんだからしょうがないだろ」と云い放つ。
「なぁ真田?」
穏やかに微笑まれる。勿論否定はしない。事実を誤魔化してどうにかなる話題ではないのは日常によって覚え込んでいる。
「可愛いな」
そんな俺の様子にそう呟けば、蓮二は呆れたように溜め息を吐いた。


「柳は面白いな真田」
一瞬何のことだ、と云いかけてさっきのやり取りを思い出す。「お前は俺と蓮二どちらをからかっているんだ」と問えば「お前をからかった覚えはないぞ?」と心外そうに目を丸くされた。俺はからかわれてる気しかしないんだが、とは云わずに「もう良い」とだけ呟き止めていた足を進めた。

「…なぁ真田」

瞬間どくりと脈打つ。
幸村はよく俺にこう問うが、この問いかけには幾つものパターンがあり、俺はこれが一番苦手だった。
続けられる言葉は決まっている。ほぼ毎日される問いだからだ。

「お前は俺が好きかい?」

しかし何を云われるかわかっていても、俺の鼓動は速まり、顔に熱が集まる。今日は風が無いのにやたら冷える。顔だけがやけに熱くて、それが更に恥ずかしさを助長する。
いたたまれなくなり、背を向けたまま小さく「愚問だな幸村さっき自分で云っていたではないか」と呟けば「はっきり言葉で欲しいんだ真田」と腕を引かれ向き合わされる。

(ああ…)

いつだって自信に満ち溢れている幸村の美しい顔が、恐らく唯一歪む時。それがあるとしたら今だろう。俺はこれを最近毎日見ている気がする。
「そんな顔をするな」
「教えてくれ真田。…俺が好きかい?」
真っ直ぐに見つめられ俺は「…好きだ」と蚊の鳴く様な声で発した。

「そうか」
それを聞けば幸村はさっきまでの表情はどこへやら。いつものように綺麗な笑顔を俺に向けて「早く帰ろう、真田」と俺を追い越して歩き始めた。

「…いつになればわかるのだ幸村」
そんな幸村に我ながら振り回され過ぎている、と思うが否定する事も拒む事も出来ない。惚れた弱みというものか、と小さく呟くが届かなかったらしい幸村は「なぁ真田、俺もお前が好きだよ。だから真田にはもっと俺を好きになってほしいんだ」と云い放った。

「何を云うんだ幸村」
「本音だよ」
「全く理解出来ない戯言だな」
「何故だい」
「ー俺は、…もう良い。行くぞ」
「ええ?気紛れだなぁ…」

笑って先を行く幸村の手を取り俺は並んで歩き始めた。


全く。何故わからんのか。
幸村が神の子だなんて、嘘だ。


(こんなにお前を好きだと云うのに)



END


***********

なんだこれ←
真田可愛いよ真田って
気分が全面に出ちゃいましたね
申し訳ないです←←←

幸真を形にするのは初めてなので
色々間違えていたらすいません^p^





――気付く事も出来ないくせに――




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