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迷子な僕ら

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なんでこんな事になってしまったんやろか。
考えても考えても答えは見つからなくて、アタシの口からは溜め息ばかりが吐き出された。

一氏に、「本気で付き合って欲しいんや」と告げられたのは、ほんの数日前の事やった。
…正直、一氏の事は好きや。でも、一氏の好きは明らかにアタシの好きとは違っていて、アタシは一氏を拒絶した。
『本気とかなんやの。気持ち悪いわ』
『…え』
『てか自分ノンケやろ?一時の感情に流されたらあかんよ』
『こは、』
『…俺もお前も"男"なんやぞ?』
びくりと大袈裟に身体を揺らし、ごめんこはる、と小さく呟いて一氏は逃げ去った。
あれから避けられる事こそ無いがあからさまに顔色を窺う様になられ、クラスメイトには「なんや夫婦喧嘩でもしたんか?」とからかわれたが部員達はそうもいかず、空気は最悪。常に気を遣われているあの雰囲気にそろそろアタシも限界やった。

(今日はサボってしまおか…)

部室の近くでそう思い至り踵を返せば、千歳が立っていた。
「行かんとよかばい?」
ユウジと喧嘩して会いたくなかとね?と笑いながら近寄る千歳に、アタシは思わず口ごもる。「別に喧嘩なんてしてへん…」
すぐ目の前に立たれ、後ずさろうとすれば不意に腕を掴まれた。
「ち、」
「俺も今日はサボろ思ってたとよ。小春一緒にマックでもどげんね?」
あまりに自然に云われ、アタシは一瞬反応が遅れてしまう。そしてその一瞬で荷物を奪われ、「よっしゃ決定ばい!」と腕を引かれてしまう。
「ま、待ってや千歳くん、アタシ別にサボるなんて、」
抵抗するアタシに千歳は背を向けたまま呟いた。
「小春がそげんに辛そうにしとっと、見たくなかとよ」
なんで、と、空気のように発せられたアタシの声に千歳は不意に振り返って、目を見据える。
ドク、と鼓動が跳ねる。
(この目、苦手や)
全て見透かされそうで、アタシは千歳の手から逃げようと身を捩り、目線も逸らす。
その瞬間、だった。
ドサリとお互いの荷物が落ちる音が聞こえて、目の前が真っ暗になる。アタシは今、千歳に、

「好いとうよ、小春」



(嗚呼、どうしてこうなるんや)
抱き締められた広い胸で、アタシは一気に頭が痛くなった。


 end

*******

本気で好きなユウジは冷たくあしらえるのに、
ただのチームメイトな千歳の気持ちは
拒否出来ない小春超可愛い。


口調?そんなん知らないよ!!←





――迷子な僕ら――




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