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「俺の事見てよ」

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ぽつりと発せられた言葉に俺はしばし間を置いて「…は?」と気の抜けた返事をしてしまった。

部活が終わり、ぞろぞろと部員達が帰って行く中呼び止められて思い詰めた顔で「話があるんで少し残ってもらえませんか」と告げられ、何かあったのかと待ち構えていたところにその発言だったので俺は少々拍子抜けた。

「…んな事云うためにわざわざ呼び止めたのか」

その言葉に少しムッとした表情になり、またすぐに俯いて「悪いっすか」と呟いた。
別に悪いとかではないのだが…どうしたら良いか戸惑っていれば拗ねたように越前はブツブツ呟きだした。

「いっつもいっつも乾先輩乾先輩っつうし、なんだかんだで桃先輩とも仲良いし今日なんか英二先輩にセクハラされてたじゃないっすか」

そうやっていっつも浮気して、と云われ、流石に俺も焦りだした。

「おい…いつ俺が浮気なんて、」
「無防備なのがいけないんス」
「別に無防備じゃ、」
「しょっちゅうセクハラされてますよね」
「だからあれはー、」

そこまで云って越前が目の前に迫ってくるのがわかり口を噤む。後ろはロッカーだ、逃げ道がない。どうすれば、ときょろきょろすれば、越前は更に顔を近付けてくる。身長差があるため目の前に顔、という状況は避けられたが、元々端正な顔立ちの越前にじっと見つめられれば、正直それだけでもかなりの迫力はある。うちの部活には手塚部長や不二先輩等、中々綺麗な顔立ちの人が集まっているが、越前の顔はそれとは全く違う部類で、はっきり云って、…少しだけ、緊張感が増すのだ。それに、恐らくそんな事よりも一番の原因はー…

「…先輩は俺のものなのに」

俺と越前が、ほんの数日前から付き合い始めたという事。
そのまま顔を埋め腰にぎゅう、と抱きつかれて俺はとうとう困り果ててしまう。

「え、越前、」

ここは部室だ、とか、まだ先輩達が来るかもしれないだろ、とか云いたい事は色々あったが、結局何も云えずにそのまま少々硬いが、ふわりとクセのある髪に触れれば、不意に顔を上げられ視線が絡む。
(あ、)
どきりと胸が音を立てるのがわかり、バツが悪くなり目を逸らせば「かいどうせんぱい、」とまだ幼さの残る、少々ハスキーな声で呼ばれ、顔が熱くなる。
(顔が良くて、声も良いなんて卑怯だろ)
そんな事を考えつつも、俺は越前の言葉を待っていた。

「キスしようよ」
(ああ、)
クラリと目眩がして、身体から力が抜ける。俺は何も云わないが、僅かに腰を低くして、その状態を作ってやる。これが俺なりの精一杯なのはわかっているのだろう。少々安心したように息を吐いた越前の顔が近くなるのを感じて目を閉じる。…唇が触れ合うほんの少し前に、越前が「好きだよせんぱい。だから俺だけ見ててよ」と呟いた。

全く、こいつはいつになれば気付くのだろうか。

そんな事を思いながらも、俺はすがりつくように抱きついてきた彼の身体を抱きしめ返した。



(こんな事をさせるのは、お前だけなんだからな)


 end

******

甘えん坊リョマたん!
そして結局ほだされる薫きゅんはあはあ

初リョ海は全力で好みな感じですね薫きゅん乙女過ぎるとかそんなの知らない!薫きゅんは皆のアイドルだから良いんでs←

実は個人的には
リョマ→→→→→→←←薫
と見せかけて
リョマ→→→→←←←←薫
な感じが好きなので薫きゅんにヤキモチとか妬かせてみたいね!!あー可愛い(*´ω`*)





――「俺の事見てよ」――




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