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あんたがええんや

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「もう俺とは別れた方がええんちゃう」

帰り際に呟かれた一言に、俺は大きく目を見開いた。


「…何云うとるんですかあんた」

冗談も大概にしいや、と続ければ、「冗談でこんな事云うわけあるかボケェ!」と突っ込まれる。こんな事云いながらも突っ込み忘れないあんたに云われたくないですわ、とは口には出さず、「つまりどういう事ですの?」と問い返した。

大体俺にベタ惚れなくせに自分から別れ話とか冗談以外のなんやっちゅー話や。もごもごと云い淀む彼に俺は小さく溜め息を吐いた。
その溜め息に謙也さんはびくりと身体を震わせ「やって、」と、目の端に涙を浮かべた。

「泣く位ならそんなアホな事ほざかんで下さい」

今日はうちでゲームするんやろ時間勿体ないやん。そう呟けば謙也さんはとうとうその瞳から一筋の涙を落とした。

「やって、財前は俺みたいなんと付き合うてたら幸せになんかなれへんねや!」

やから、と叫ぶ謙也さんに俺は全てに合点がいった。

「盗み見とか趣味悪いすわ」
「ち、ちゃうわ、あんな見えやすい場所で告白されるんがあかんのや!」

なんちゅう云いわけやねん。
そう思いつつも、謙也さんが何を思ってそんなアホな事を云い出したかわかって、俺は小さく安堵した。そりゃ安心するやろ。なんやかんや俺もこの人にベタ惚れなんやから。

「安心して下さい。俺は他の誰でもなくあんたと一緒におるから幸せになれるんや」

やから別れたりはしません。そう云い放つと、一瞬で顔を真っ赤にしたかと思えば謙也さんは今度はボロボロと涙を流し始めた。

「ほ、ほんまに俺でええんか」
「今更ですやん」
「男同士やぞ」
「そんなん関係なくあんただからええんやろ」
「ざいぜん…!」

流石に少し格好つけすぎたかとも思ったけど、謙也さんは喜んどるしええか。
ほな、行きますよ、と声をかければ嬉しそうに手を握り締め歩き始めた。


(ほんま立ち直り早すぎるわ。流石難波のスピードスターやな。)
(おん?なんか云うたか?)
(さっきの泣き顔酷かったなぁっちゅーたんですわ)
(なんやそれ!むっちゃイケメンやろ!)
(マジ無いすわ)


 end

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年上ぶろうとしてるけど
結局残念な謙也さんとそんな
謙也すら愛しい財前君。







――あんたがええんや――




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