the basktball whichi kuroko plays.


憧れだけならよかったのだ


「どうしてそういう事云うんスか」
寂しそうに呟く黄瀬君を見る事すらせずに僕は床に落ちた雑誌を手に取った。
(僕たちがいつまでも一緒にいるなんて、誰にも保障できないんですよね)
発端になったのはこれだけれど、別に今思ったことではないのでそれが悪いというわけではない。そう、ずっと前から、それこそ黄瀬君と付き合うことになった頃から思っていた事だ。
「黄瀬君と僕は生きる世界が違うんです」
そのまま雑誌をめくり、彼が映っているページを見つめる。本物の彼を見つめるのは苦手だけれど、めくればすぐにそのページが分かるくらいには何度も開いてそこに映っている彼を見た。いつも僕に見せる笑顔とは違う。フィルターの先の大勢の人間に向けられた顔。僕はこの顔が少しだけ苦手で、だけどとてつもなく惹かれた。
「…君はいつか僕の元を離れていくんでしょう」
そして僕の手の届かない遠い世界に行くのだ。いつかこうして、触れることもできなくなるのだろうと思うたびに少しだけ…少しだけ寂しくなった。だけど、それは最初からわかっていたんだ。
「どうしてそういう事云うんスか?俺は、」
「やめて下さい」
辛そうに叫び出す黄瀬君の口に手をあててそれを止める。辛いのは僕の方です、なんて、云えない事は知っている。…云ってはいけないのだ。彼が好きならきっと。
「…できもしないくせに、未来の保証なんて口にしないで下さい」
その言葉に傷ついた様に顔を歪ませた黄瀬君に、僕は知らないふりをした。


title by ゆち


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