the basktball whichi kuroko plays.


死にたがりの恋煩い


死にたい、なんて。

「一生思う事は無いと思っていました」
唐突に黒子っちの口から零れ落ちた言葉は不完全なもので、俺は首を傾げて真意を問う。
先程は口に出されなかった言葉が、今度は確かに耳に入る事となり、喉が渇いた。
「死にたい、って、え、なんでッスか、なにがあって、」
衝撃が強すぎてまくし立てれば「君のせいです」と呟かれてとうとう頭が真っ白になる。
何故?自分が何かしたのだろうか、と不安に黒子っちの瞳を覗き込めば吸い込まれそうな空色に見つめ返される。
「今まで知らなかった気持ちが、君と付き合う様になって馬鹿みたいに溢れてくるんです」
まっすぐに見つめてくる瞳が、少しだけ揺れた。
「君を好きなはずなのに、無性に憎かったり、吐き気がしたり、いなくなってほしいとすら思いました」
突然降ってきた黒子っちからの辛辣な言葉にズキズキと痛む胸を握りしめて、「ならなんで黒子っちが死にたくなるんスか」と震えながら問うた。
見つめる瞳は全く変わらず俺を映していて、いっそ目を反らしてくれたらと願う。返事を待っている間の時間が果てのないもののようで、背筋から流れる汗が唯一時の流れを感じさせた。
「…どんなに君が憎くて、嫌悪し、いなくなれと願っても、僕は君を愛しています」
長かったような沈黙の後、ようやく視線を外して黒子っちは呟いた。
「だからこそ、浅ましい自分に嫌になって、死にたくなります」
こんなにも愛しい君がいない世界なんて、想像しただけでゾッとするのに。そう呟いた黒子っちは微かに唇が白くなっていて、思わずそこに自分のそれを重ね合わせた。
「…なん、ですか」
少しだけ目を開く黒子っちに笑って、俺は目を閉じる。
「俺も、黒子っちのいない世界なんて考えるのも嫌ッスよ」
彼がハッと息を呑むのを感じてもう一度目合わせる。いつもより目を見開いている黒子っちに薄く笑みを零し再び唇を重ねた。啄む様な口づけの後にそっと絡められた舌を拒む理由は、どこにも無かった。

title by ゆち


第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -