the basktball whichi kuroko plays.


愛しちゃってごめんね


(ほんま、なんでこないな事になっとんねん)
締め付けられた両手首の痛みに僅かに顔を歪めながら、ワシは目の前の男を睨み付けた。



部活が終わりボールを片付けて帰ろうと体育館から出るところで、制服の裾を引かれ振り返った。
「なんや、桜井やないか」
まだおったんか、と呆れたように返せばいつものように弱気な声で「すみません」という言葉と共に俯かれて苦笑する。子供にするみたいに少し屈んで目線を合わせれば戸惑うように顔を上げた桜井と視線が絡んだ。
「なんか忘れ物でもしたんか?」
まだ鍵をかけていないし、時間的にも余裕はあるので更衣室に行く事など他愛もない。謝ってばかりの桜井の言葉を待っていても無駄なのはわかっているのでワシは笑ってその手を引いた。
「せやったら下校時間なる前に早よ取りや、更衣室でええんか?」
「す、すみません、」
「謝らんでええよー。何忘れたん?」
更衣室の鍵を開け笑いながらそう問えば、唐突に腕を引かれ壁に押し付けられた。
「…桜井?」
忘れ物はどうしたんやと問えばいつものように謝罪の連呼や。よう意味がわからん。
「…とりあえず確認したいんやけど、これはどういう事や?」
身体を覆うように両腕で壁に囲われ片腕をこつりと叩けば謝罪の後にしばしの沈黙があり、意を決したように真っ直ぐ見つめられ「…忘れ物はしてません」と返された。なんや、珍しく意思表示ちゃんとしとるやん。のんびりそんな事を考えていれば不意にふわりとした栗色の髪が目の前に迫り唇に何かが触れた。
「…は?」
それを認識する前に再び絡んだ視線に呆然とする。なんや、今ワシは何をされたんや?数度瞬いている間に再び近づいてきた顔に思わず両手を出して止めた。
「おいおい桜井なんやこれなんの真似や?」
慌ててそう問えばすいませんという言葉と共に、でも、と返ってくる。
「…すき、なんです先輩、」
微かに聞こえた声に数秒の間の後出たのは気の抜けた返事だけだった。
「…へぁ、」
「っ、が、我慢、出来なくなったんです、すいません、」
ずり落ちる眼鏡を気にする余裕もなくなりワシは慌てて桜井の手をどける。正直年下で比較的うちの部内では小柄な彼の力にかなわないわけがなく簡単にその腕は振り解けた。
せやけど、

「…なんちゅー顔してんねん自分、」
今までに見た事の無い、酷い顔だった。
「すいません、すいません、でもっ…!」
尚もワシの腕を引いて離さんとする桜井の目には涙がたまっていて、チラリと携帯を出して時間を確認する。そろそろ鍵を返さないといかん時間や。
「桜井、」
声をかけるとはい、と不安そうな返事が返ってくる。ああもう、相変わらず調子が狂うやつやな。
「とりあえずこっからは出ないかんし、続きは校舎のトイレでええか」
叱られるんはワシやから、そこは譲ってや、と溜め息混じりに呟けば驚いたように「良いんですか、続き」と発せられる。なんや辞めて良かったんかいな。
そう云えば首を思い切り振り「それで、お願いします、すいませんっ…」と懇願される。
(なんや変な事になってもうたな…)
鍵を返し校舎で一番人気の無い外側のトイレに向かいながらくつりと喉で笑えば後をくっついてきた桜井がおずおずと「本当に良いんですか、」と問うてきた。
「逃げてええなら逃げるで。ワシに桜井の足も力も、かなわん事は知っとるし」
せやけど、
「こんなんでうちの部に必要なお前失ったらアホみたいやん」
そういって振り向けば桜井の顔は真っ赤に染まっていて…、
「っ、す、すいません、先輩はそうやって考えてくれてるのにっ…!」
先程まではなんとか堪えていた様だが堰を切るように涙を流し始める桜井に苦笑いする。
「さーくーらーいー…どうしたいんやお前」
辿り着いたトイレは案の定誰もおらず、むしろほとんど使う人がいないのだろう少し埃っぽい感じすらする。
そのまま奥まで手を引き更衣室とは逆にワシが桜井を壁に押し付ける。
泣いて赤くなった瞳で見上げてくる姿は相変わらず可愛い後輩で、やはり調子が狂う、と首をかいた。

「さっきの、」
「…っはい」
「…ワシが好き、云うたやろ?」
「っす、すいませ、」
「謝るんやなくてな、」
どういう事か説明してくれや、あの行為の意味も、と顔を近付ければまた顔を真っ赤にして、せやけど目を反らす事はせずに真っ直ぐ見つめ返してきた。
「…ずっと、今吉先輩が好きで、見てるだけで良かったんです、けど、す、すいませんでもあのっ、」
キス、したくなったんです、と消え入りそうになる声に呆れて溜め息を吐く。
びくりと大袈裟に身体を揺らす桜井に「ああそうやない違う違う」と笑って返す。
「そんなんやったらちゃんと真っ正面から向かってこいや男やろー?」
壁についていた手を下ろしてくしゃりとその柔らかな髪を撫でる。
でも、と戸惑うように目を伏せる桜井に
「…せやけどそれだけやったら別にあそこまでせんくて良かったんやないん?」
と、ふと思いついた事を呟けば、息を飲むのがわかる。
(ああ、ほんま素直)
「…桜井、ワシとやらしい事がしたいんか」
疑問ではなく、確認だった。
多分、今日はワシもおかしい。桜井に振り回されて、多分おかしなっとるんや。
男の後輩とセックスしてやってもええかな、なんて。
驚いて目を見開いて、少し戸惑った後に僅かに謝罪の言葉と共に頷いた桜井を見て、ワシは無意識にぺろりと乾いた唇を舐めた。
「っ、は、さく、ら、ぅあっ…!」
思ったよりも響いた声に慌てて唇を噛み締める。
なんというか、ほんまこれは予想外やったんやけど…
個室の便座に座らされて後輩にぐちぐちとケツん中いじられて、気持ち良くなってる自分に苦笑いしながらチラリと桜井に視線を向ければ、嬉しそうな、せやけど辛そうなよくわからん顔をしとって思わず吹き出してしまった。
「はは、お前、どーゆー顔しとんねんっ…」
「へ、…す、すいませんっ…」
ええよ、と返してそのまま上半身を動かし唇に噛み付いた。あ、ちょっと無理な体制したわ、肩痛なるなこれ。
そう思っていればずるりと指が引き抜かれその手を背に添えられ少し楽になる。楽になったからと調子に乗り角度を変えながらそのまま何度も舌を絡めれば桜井が「っ先輩、」と熱い息を吐いた。
「…これ、もう大丈夫なん?」
当たり前だが男とヤった事なんて一度も無く、ここまで出来てる事すら不思議でたまらないのに、これから挿入までするのかと流石に少々焦りが混じる。
「頼むからっ…、流血沙汰とかやめてくれや…?」
ただでさえ明日の部活が不安になるのだから、と低く唸れば「すいません、」と返され、せやけどすぐに「でももう、」と泣きそうな声で云われ腹を括る。
「ああもう、ええからっ…!とりあえず初めてやから、トラウマにはせんといてくれな、」
そう云うのと同じ位に、ぐちり、とまだ緩みきっていない入り口にそれを押し付けられぞわりと鳥肌が立つ。
指なんかとは全く違う質量と、あり得へん位の熱に思わず息を詰めればふわりと桜井が口づけてくる。
「っ、ん…さく、…んぅ、」
「っは、…すいません先輩、力、抜いて下さいっ…!」
そんなん云われてもやり方なんてわかるわけないやろ、と悪態を吐きたかったがこの状況でそんな事が出来るわけもなく。
「っぐ、桜、井っ…!」
堪えきれずすがりつく様にその身体にしがみつけば桜井のそれが質量を増すのを感じ思わず逃げ腰になる。
それをすかさず掴んでそのまま腰を進める桜井に何故普段からこの強気でいかないのかと呆れつつも喉からは聞きたくもない喘ぎ声が溢れ出した。
「ひぃあ、あっ、…はぁ、んうっ…っ、」
あかん、なんや女みたいで気色悪いと思うけれど今まで触れた事ない、っちゅーか多分一生触れる予定なんか無かった奥に熱を感じて、理性や恥なんてものはあっという間に無くなっていた。
「っ、桜井あかん、これっ…ひ、ぃっ…」
思っていたよりもデカいそれが、馴染むまでは我慢してくれているのはわかる。せやけど想像もした事無かった圧迫感と快感に、ほんまにわけが分からなくなって、左右に首を振る。
「っ、先輩、」
すいません、辛いですか、と泣きそうになりながら問うてくる桜井の腰に足を絡めて、「ツラくないわけないやろ」と睨んでやる。せやけどどうせ痛い事には変わらんのやから、とそのまま自ら腰をゆるくだが動かして桜井を動揺させてみる。いい気味や。
「ぇう、せ、先ぱ、」
「さっさとイって、ワシん事気持ちよぉする事に集中してくれへん?」
それに息をのんだ桜井は応える様に、打ち付ける速度を上げる。がつがつという音と、ぐじゅぐじゅという音に耳を犯され、揚句打ち付ける度に耳元に桜井の熱い息がかかるものだからたまらなくなってワシも堪えていた声を少しずつ漏らし始めた。
「ん、…桜井、…っは、ああっ、ん、…ぐ、ぅっ…」
「先輩、好きです、好きです、すいません先輩、すいません、」
なんやねん、お前何に謝っとるんや、と笑おうとした瞬間に、ある一点を強く突かれて目の前が真っ白になる。
「っひ、桜井、ちょお、待っ…あ、うぁあああっ…!!」
ワシが止めるのも聞かずにそこを狙って腰を捻じ込まれて、わけがわからんくなる。
ちょ、ウソやろ、そういえば挿れられてからはずっと前いじられてんし、これ、もしかしてケツだけでイく事になるんやないんか?
もう何もかも信じたくない事だらけで、せやけどそんな事をしていてもいつもの様に可愛い顔して不安そうに見てくる桜井にもうなんや、どうでもよくなってまう。
「…、先輩、僕ももう、」
限界を訴える声の通り、中に突っ込まれたそれはぱんっぱんに腫れとって、ワシの内壁をぐじゅり、と強く抉った。
「お前…っ可愛い顔してほんま、えげつない、わ、ぁ…!」
そのまま便座から落ちてしまうんじゃないかと思うほど強く腰を引かれ、奥に熱いものを注ぎ込まれる。
「っ、…は、ぁ、…先輩、」
「ん、…ぐ、…あっつ、…あ、…はぁ…、」
その衝撃でワシもイってしまっとったけど、中に注ぎ込まれる感覚の方が体に与える刺激が強く、びゅくびゅくと出続けるそれを搾り取る様に蠢く自分の臀に流石に呆れてしまう。
(なんやこれ、そっちの素質あるんやないんか…)
考えたくもない可能性に小さくため息を吐けば、慌てて桜井がそれを抜き取った。
「っひ、んっ…!…、桜井おまっ…いきなり抜くなや!!」
一瞬で過ぎていったがそこで達した後に与えられるには強すぎる衝撃に思わず桜井の頭に拳を落とす。
「っ、す、すいません…!!」
頭を押さえてへこへこと謝る桜井に「とりあえず服着ろや」と促せば、急いで服を着た後に、そのままワシの足元に跪いた。
「…は、ちょ、桜井、」
今更かもしれんけど、流石になんも着けてない状態の下半身を眼下に晒すんは恥ずかしくて、ワシも服を着ようとすれば、「ダメですよ先輩、」とその腕をひとつに括られ固定される。
あかん、今は力全然入らんから抵抗出来ひん。何をされるのかと身を強張らせれば再びその入り口に指が宛がわれぎょっとする。
「おい桜井、もう終わったやろ、なにするんや…!」
ぎり、と睨み付ければ今までで見たことないほどの強気な表情で「ダメです」と威圧される。どういう事やねん。
混乱していると、そのままスムーズに奥に入る指がぐちゅりと嫌な音を立ててかき回される。
「は、…っ桜井…おま、なんやねんほんまっ…!」
その音を聞いていたくないのに、羞恥に目を閉じてしまったせいからか余計にその音が聞こえてしまいふるりと首を振る。突っ込まれとった時の方がまだ良かった。最初に慣らしとる時はこんなに気持ちよくなかったから気にならなかった恥ずかしさに、頭上でまとめられた拳を握りしめる。
「…すいません、でも、中で出してしまったから、ちゃんと出さないと、」
先輩が後でキツイのでと云われてせやったらなんでゴムつけへんねんと舌打ちをする。せやけど今更云っても遅い事もわかりきってるので、開き直ってその快感に堪える事に集中する。
「っ、は、…ああ、…んぅ…っ…」
思わず揺れる腰にイラつきながらも必死に堪えて、ようやく指を引き抜いた桜井に「…っ、ええの…?」と確認する。
「はい、…すいませんでした、先輩、」
最早体を動かすのも億劫で、それがわかったのだろう彼に服を着せてもらいながら、蕩けきった思考でぽつりと呟いた。
「なぁ、ほんまにお前、ワシの事好きなん?」
びくりと肩を震わせる桜井に「正直に教えてや」と囁く。あ、声出し過ぎてちょっと嗄れとるやん。かすれた事でほんの少し強請るような云い方になってしまいああもう、と嫌悪する。
せやけどその問いに真っ直ぐに視線を合わせて「すいません、でも、好きです」と返してくる桜井に、小さく息を吐いた。
「…そか、」
なんやろうな、こんな事許しとる時点で、多分部活とかそういうの抜きにしてワシはこいつの事特別なんやないか、なんて、考えが浮かぶ。
「…ええで、付き合うても」
そのまま瞳を見つめたまま呟けば、もともとまん丸い目がさらに円く見開かれて、思わずふっと笑みを零す。
「え、あの、先輩、」
「ワシも別にお前の事嫌いやないし、…ちゅーか、こんなんヤっといて今更普通のチームメイトに戻れるんお前?」
「…っ、それ、は、」
戸惑う桜井に「ワシは無理やぞ」と手を伸ばして頭を小突く。
「こう見えても結構デリケートやから」
そう笑えば泣き出しそうになりながら「すいません、好きです、今吉先輩、好きです、お願いします、」と頭を下げる桜井がやっぱり可愛くて、あーつまりこの感情ってそういう事やったんか、なんてよく働かん頭で考えて、そのまま引き寄せる様に手を伸ばして甘いキスを強請ったのだった。



(せやけどワシが女役なんはあんま納得いかんのやけどなー)
(え、す、すいませんでも僕もそこは嫌なんで…それに先輩の中すごく良かったからこっちで正解だと…はっ、す、すいません…!!)
(お前可愛い顔して云うとる事ほんまえげつないで…!!)

title by ゆち



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