白銀の狂詩曲【短編】 | ナノ


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「あ゛ッぎ、ぃあ゛あ゛あぁぁ!」
「あぁん、中すっごぉい。熱くて熱くて堪んないわぁ!」


尋常で無い痛みに悶絶するニュクスの前で、男が恍惚とした表情で腰を揺らす。
先程抉り取った、嘗て眼球が填まっていた孔に自らの性器を押し込んだ男は、その儘ニュクスの中を犯した。本来何も受け入れず、また排出する事も無い孔の中は、下半身のそれと異なり、内壁が侵入物に絡む事は無い。元々狭い内部を無理矢理押し広げ、激しく性器の出し入れを繰り返す。明らかに常識を逸した、異常な行為であったが、止める者は誰一人として居なかった。


「やっ、め゛ェろ……ッ、ぐァ……あああああああぁああああああっ!」


残された片目を見開き、必死になって男を引き剥がそうとするも、薬の回った体は言う事を利かない。涙と血、更に口の端から収まり切らぬ唾液を零し、ニュクスが絶叫する。そしてその悲鳴を聞く男は益々興奮し、中の性器を一層硬くさせた。


「ねえねえ、分かる?貴方の一番奥に当たる感じ。ああ……そう、駄目、イイわ。もうアタシ限界……イッちゃう、イッちゃうわぁ!」


男が言う通り、彼の性器の先端はニュクスの眼孔の奥を何度も突いており、その度に意識が混濁する。痛みに耐えかねて意識を失うも、直ぐに同じ痛みで現実へ引き戻され、快楽の絶頂を迎える男に対し、ニュクスは体が限界だった。
それなりに質量の有る性器を無理矢理根元まで捻じ込み、男が体を震わせる。何が起こるのか、思考が麻痺しつつあるニュクスでも即座に分かった。逃れようとする間も無く、眼孔内の性器が脈打ち、白い熱が放たれる。中を、そして脳を侵食していく熱に、ニュクスが脱力した。
全ての熱を吐き出し、男がニュクスの頭部から両手を放すと、血と白濁に塗れた体が重い音と共に地面に倒れた。


「はぁ……スゴい。ホント最高だったわ……こんなに気分良いの久し振り」


悲鳴の所為で喉が枯れたのか、掠れた声を漏らし、全身を痙攣させるニュクスを横目に、男は満足気に自らの身なりを整える。
その後、主人の行為を見守っていた部下の一人が傍に近付き、今後如何するのかを囁く様にして訊ねた。


「……んーっとぉ、さっき取った『おめめ』はちゃんと保管しといてね。それからねぇ…………彼はほっといても大丈夫らしいから、そのまんまにしときましょ」


銀月は死なない。死んでも生き返る事が出来る。それを知っているのだろう。男はわざとらしく考える素振りをした後、片手を振って眼下に倒れるニュクスの処分について告げた。


「それじゃあね、銀月ちゃん。楽しかったわ……今度は『おなか』でお願いね?」


既に見えているか、聞こえているかも曖昧なニュクスに笑みかけ、不穏な言葉を残すと、男は踵を返し、部下達と共にその場から立ち去った。


「……――、……」


男達が去り、本来の静寂を取り戻したその場所で、ニュクスは僅かに唇を動かし、言葉を紡ぐ。
彼が何を呟いたのかは分からない。彼の性格や、先程まで受けていた暴行を考えれば、大凡の見当は付くだろう。しかし、無人となった空間では、それを知る者は居ない。
夜明けが近付き、周囲が徐々に明るくなり始めた中。ニュクスは血と精液が混じった涙を流しながら、残る瞳を静かに閉じた。


Ende..


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