白銀の狂詩曲【短編】 | ナノ


1  




世の中には物好きがいるものだと、目の前の光景を見て思った。


「おい、そっち押さえろ」


地面に仰向けに転がされ、真横に広げられた両手はそれぞれ屈強な男達によって押さえ付けられている。
事の始まりは一時間程前。礼拝をさせて欲しいと、深夜にも関わらず宗教団体を名乗る男達がやって来た。非常識な時間帯に不信感を覚えたが、断るのも気が引けた為、中に通した。礼拝堂に案内しようとして、背後から首に『何か』を刺され、意識が遠のいて、そして。


「お、やっとお目覚めか」


床が冷たい、等と。意識が戻って来て最初に思ったのがそれだった。
何が起こっているのか。未だぼんやりとしている頭を働かせ、現状を把握しようと周囲を見る。場所はシトリーが管理している教会――の、礼拝堂。周りに居るのは下卑た笑みを浮かべる男達。人数は此処に来た時と変わらない。
身を起そうとして、着ている服がずたずたに裂かれているのに気が付いた。ハサミかナイフでやられたのだろう。下の肌が露出する程裂かれ、更に下半身の服――ズボンと下着――が脱がされていた。


「……ッ」


今の状況がどう言うものなのか。分からない様な初心ではない。瞬間、過去に受けた陰惨な記憶が脳裏を過り、咄嗟に彼等を振り払って起き上がろうと全身に力を込める。しかし、意識を失う前に刺された『何か』に毒でも仕込んであったのか、思い通りに動かない。


「へへ……葬儀屋の土葬サマもこうなっちゃあどうしようもねえなあ?」
「体は動けなくなるけど、とっても正直になるお薬を打ってやったんだ」
「そろそろ効いて来るんじゃねえ?」


その場で身じろぐシトリーを見て、男達が愉快気に笑う。何とも悪趣味な事だと思ったが、だからと言って此処で大人しく犯される気はない。
動かないならば、根性で動かすまでと。全身に力を込め、動こうとすれば、男達が驚いた様に声を上げる。


「おいおい、まだ動けるってのかよ。結構な量をブチ込んだんだぜ?」
「さっすが、土葬サマは……噂に違わぬバケモンだなァ!?」
「――――ッ!」


やかましい。人より少し力があるだけで、他の異端者と大差無い。
化け物呼ばわりは心外だと、反論しようと口を開きかけた所で、それは声にならない悲鳴に変わる。左手、やや遅れて右手に走る激痛。何をされたのか、不自由な首を無理やり横へ向ければ、掌の中央に男がナイフを突き立てているのが見えた。ナイフは掌を貫通し、床の木板に深々と突き刺さっている。


「い、ぐっ……!」
「動くなよぉ? 下手に動けばアンタの綺麗なお手手が裂けちまうぜえ?」


普段ならば、こんな事をされる前に返り討ちにする処だが。今の状況は芳しくない。
助けを求めようにも、こういう時に限って、同居している片割れの兄弟は外に出てしまっている。
男の一人が辛うじて身を隠している服の布を乱雑に剥ぎ取り、晒された胸部に手を這わす。毛むくじゃらで、ごつごつとした汚い手。無遠慮にべたべたと触って来るのは愛撫のつもりだろうか。
気持ち悪い。触れて来る手の感覚も、己に注がれる男達の視線も。逃れられない状況に歯噛みしつつ、せめてもの抵抗とばかりに目の前に居る男を睨んだ。


「おいおい、そんなこえー顔すんなよ。これから気持ち良くさせてやっからさ?」


ぐり、と。右側の乳首を無造作に摘ままれ、抓られる。当然、痛みが走るが、投与された薬の所為か痺れる様な感覚が駆け抜け、反射的に体が戦慄く。


「……っ」
「ははっ、可愛いちんこかと思えば意外としっかりしてんだなあ」


正面に居る男は執拗に乳首を弄り、その横に居る男は自分の股間を覗き込んでは下品な笑い声を上げる。性器に可愛いも何もあるかと思ったが、悪態を吐く余裕は無く、ただ無理やり生み出される快楽に必死に耐える。気持ち良い、と。認めたくなかった。そも、こういった行為自体嫌いなのだ。幼い頃の忌まわしい記憶も蘇る。あの頃の様な事は、もうしたくない。


「やめ、ろ……さわる、な……!」
「何言ってんだよ。もう硬くなってきてんじゃねーか」


言った所で無駄なのは分かっている。ただ、その虚しい抵抗が男達の劣情を更に煽る事になるのには、気付いていない。
男の一人がシトリーの性器を握り込み、根元から先端に向かって無造作にしごき上げる。優しさも何も無い動きだったが、それだけで性器は反応し、自分の意志に反して硬くなっていく。気持ち悪い。けれど、気持ち良い。この矛盾した感覚は、薬が齎す催淫効果か。


「さーて、そろそろケツの穴イっときますか」


横に居た男が懐から小さな瓶を取り出し、中に入っている液体を自らの手に掛け、それを秘部へと持って行く。逃れようとする間も無く、ぬるりとした感覚が入り口に触れ、何とも言えない悪寒が駆け抜けて行った。這って来た指は暫く入り口付近の緊張を解そうとゆるゆるとした刺激を与えるも、暫くして先端を中へ押し込もうと動く。それに気付き、反射的に力を込め、侵入を拒んだ。




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