白銀の狂詩曲【短編】 | ナノ


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マスターの生活は夜に重点を置いており、朝が遅い。
日が完全に昇り、殆どの者が活動を開始している最中に起床し、家事をする。朝食はバランスを考慮したものを作り、それを済ませると軽い筋トレを行う。如何な日でも、筋トレを欠かす事は無い。
筋トレを済ますと市場に買い出しに出る。大体バーの仕込みの為の材料を調達するのだが、個人的な買い物も大体この時間でする。セールの時間には早い為、お買い得感は無いが、こればかりは仕方が無い。
買い物から戻ると食材の仕込みをし、バーの開店時間まで準備を進める。バーのある建物は自宅と一体化しており、移動がとても楽である。この時余裕が有れば大型端末で情報収集もするが、大体自分の夕食を作り、済ませて終わってしまう。
日が沈む頃にバー・月桂樹が開店時間となり、食事や酒、仕事を目当てに訪れる客の相手をする。常連客は勿論、新規の客も常に大事にしなければならない。南エリアで活動する『その手』の者達の多くはマスターの店を利用する。斡旋してくれる内容に信頼がおけるのと、提供される料理が美味いと巷では評判だ。銀月、風使い、闇医者、狩人……時には東エリアから有名な大学の教授がわざわざ足を運んで来る事も有る。店が繁盛するのは有り難いが、其処での諍いは許さない。来客の数が多い分、出禁となった人間の数も少なくない。
日付を跨ぎ、バーの閉店時間を迎えると、早々に片付けをし、翌日の準備をしてから居住スペースへと戻る。残っている雑多な仕事をこなし、シャワーを浴びてから再び筋トレに取り組む。『現場』に出る機会は殆ど無くなったが、だからこそ鍛錬は重要で、今日までトレーニングを怠った事は無い。
朝日が窓から差し込む頃に、マスターは就寝する。起床するまでの時間は決して長くないが、元々ショートスリーパーと呼ばれるタイプの人間だ。大して問題は無い。

そんなマスターの一日。




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