白銀の狂詩曲【短編】 | ナノ


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レライエの朝は無い。
自他共に認める夜行性であるレライエが、午前中に起きる事はまず無い。目が覚める――基、兄弟のシトリーに叩き起こされるのは大抵日が傾き出す昼過ぎで、それまでは完全に爆睡している。
眠い、もっと寝かせろ、うるさい、起きろ、やるのか、勝てると思うのか。寝惚けつつも洒落にならない口論をし、軽く殴られ、漸く起きる。軽く、と言ってもシトリーの怪力を思えば決して可愛いものでは無く、打ち所が悪いと打撲になるし、口の中を切る事もある。骨折に至らないのは、一応シトリーが手加減をしてくれているからだろう。彼が本気になれば、複雑骨折どころか下半身不随にされる。レライエ側も反撃するが、兄弟相手は如何にもやり辛い。
眠気を誤魔化しつつ身嗜みを整え、日が沈み始める頃に活動を開始する。葬儀屋の仕事が有れば其方を優先的に消化し、その儘『食事』の為に街へと繰り出す。食事は一日に一度だけ。その分大量に食べる。肉を好み、野菜を嫌う典型的な偏食だ。シトリーに偶に栄養バランスが偏るからと、野菜ジュースを押し付けられる事が有るが、余りの不味さに吐きそうになる。野菜が駄目なら果物はどうかと、果汁たっぷりのジュースを渡された事も有るが、矢張り不味かった。これならまだ栄養ドリンクの方がマシだと言ったら、シトリーに盛大な溜息を吐かれた。
食事の対象となるのは、葬儀屋から与えられる任務の中の獲物か、事前に食べても良いとされるモノのどちらかだった。それ以外を手に掛ける事は上から禁止されており、迂闊に手を出せば酷い制裁を与えられる。性的には喰っても良いと言われている為、それで我慢する事も有るが、お伽噺に出て来る様な淫魔では無い為、鬱憤は晴れても空腹感を満たす事は出来ない。
夜明け前に帰宅し、入浴剤入りの風呂に入る。風呂上りにスキンケアをし、髪を乾かしていると、丁度起き出して来たシトリーと遭遇する。ほぼ入れ替わりで向こうは活動を始め、レライエはその儘自室で休む。奇妙だが、定着し、馴染んだ双子の生活だ。

そんなレライエの一日。




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