白銀の狂詩曲【短編】 | ナノ


 薬抜き  




ニュクスの状態は酷かった。
あの男に盛られた薬は相当強いものだったのだろう。ベッドの上で震え、悶える彼の顔は紅潮し、目元には涙が滲んでいた。


「随分苦しそうじゃあないか」


熱を孕んだ吐息を漏らすニュクスを見て、レライエが苦笑する。或る程度の予想はしていたが、まさか此処までとは。今、彼の体は疼きと熱に苛まれている。溜まっている欲望を吐き出したくて仕方が無い筈だ。あの男がそうなる様に仕込んだ薬故、簡単には抜けないだろう。彼を楽にさせる方法は、一つしか無い。


「今の私は機嫌が悪いからねえ。優しくは出来ないよ?」


ベッドの上に片手を付き、上体を屈める事でニュクスの耳元へ顔を近付け、低く囁く。その吐息だけでも刺激になるらしく、ニュクスの体はびくりと震え、嫌がる様に首を何度も横に振った。


「嗚呼、可哀想に。直ぐに楽にしてあげるからね?」


衣服は着ていた。恐らく、あの男が気を利かせたのだろう。裸の儘放置しては帰り辛いだろうと。全く、妙な優しさを持っている。
腰と腕に巻かれているベルトを解き、コートを脱がすと、ベッドの下へと放り投げる。続いてインナー、パンツ、下着と。纏うものを全て剥ぎ、裸にしてやると、外気に触れるだけでニュクスの身は戦慄いた。
今なら、耳を指先で弄るだけで達してしまうかも知れないと。眼下で悶えるニュクスを眺め、レライエは思った。けれどそれではつまらないし、何より己の鬱憤晴らしにならない。
ちら、と横を見れば、部屋の出入り口である扉の前にシトリーが立ち、腕を組んだ姿で此方を見ていた。レライエを止めるつもりは無い様だが、かと言って混ざるつもりも無いのだろう。堅物で、律儀な彼の事だ。きっと行為が終わるまで其処で待っているつもりなのだろう。


「それじゃあ、『頂きます』」


無防備な姿を晒すニュクスを前に、レライエは形だけの呟きを漏らし、その身に覆い被さった。


****


硬くなった乳首を摘み、軽く引っ張るとニュクスは良い声で鳴いた。
更にそれを捩り、爪を立てれば痛みも快楽になる様で、嫌だと言わんばかりに首を何度も横に振る。その様子を見るのが楽しくて、レライエは執拗に弄り、舌先で舐め上げては吸い付き、歯を立てた。


「ひっ、や、だっ……っあ!」
「嫌だと言うけれど、下は大喜びじゃないか。素直じゃないねえ?」


全身を愛撫した後、彼の両乳首を弄り出して如何程経っただろうか。良い様に弄られ続けた桜色の突起はぷっくりと膨れ上がり、熟した果実の様になっていた。
嫌だ、止めろ、離せ。そんな拒絶の言葉を吐き出す割に、ニュクスの体は快楽に従順で、股間の中心は勃起し、先端から透明な液体をとろとろと溢れさせている。その事実を指摘し、肩を揺らしてレライエは笑う。ニュクスを抱くのは初めてではない。過去に何度も彼を犯し、時に喰らい、楽しんだ。ただ、薬によって此処まで『出来上がっている』状態は初めてで、普段以上に高く鳴くニュクスに対し、興奮する気持ちを抑える事が出来なかった。


「ほら、そろそろ挿れるから。もっと激しく乱れておくれ?」


最も弱く、敏感な部位である耳に舌を這わせ、其処に付けられているピアスごと舐め、わざと音を立ててやる。羞恥心を煽って来る責め方にニュクスは泣きそうな表情を浮かべ、呂律の回らない状態で『嫌だ』と漏らす。普段強気で勝気なニュクスの蕩けた姿に、レライエは口元に歪な笑みを浮かべ、片手をその下半身へと伸ばした。


「慣らして欲しいかい?」


慣らし無しでの挿入はニュクスにとって拷問でしかない。答えは分かり切っていたが、レライエは敢えてニュクスにそう問い掛けた。彼が望むなら、先端から溢れる先走りを指先で拭い、それを潤滑剤代わりにして『入口』の筋肉を解し、慣らすつもりだが。


「う、あ……――、やだ……」
「おや、慣らし無しで良いのかい?とんだドMだねえ」


弱弱しく吐き出された拒絶の言葉は、この行為そのものに対してだったのだろうが。レライエはそれをわざと慣らさないで欲しいものであると解釈し、揶揄する様に言って笑った。元より、優しくするつもりなんて無いのだ。薬抜きと言う名の憂さ晴らし。それで彼が如何なろうと知った事では無い。更に言えば、ニュクスには被虐嗜好が有る。乱暴に犯す方が、心身共に嬉しいに違いない。
レライエが自らの修道服のスリットの隙間に手を差し込み、下着をずらして既に硬く勃ち上がった性器を取り出す。それを見たニュクスが恐怖し、反射的に足を閉じようとするが、レライエは直ぐにその間へ割り込み、阻害する。


「やめろ……やめ、て……や――」
「良い加減、素直になったらどうなんだい」


薬の入っていない、普段の状態ならば幾らでも抵抗する事が出来たであろうが。あの男に調教され、更に薬を盛られた状態では満足に動く事も出来ず。長い銀糸を振り乱し、半泣きで懇願する姿にレライエの中のどす黒い欲望がはち切れそうになる。
ニュクスの片足を掴み、自らの肩に掛け。レライエはニュクスの堅く閉ざされた孔へ、自らの怒張を強引に捻じ込んだ。




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