白銀の狂詩曲【短編】 | ナノ


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「エレミアちゃんのおちんぽ見せてねえ」


ズボンの中に手を入れられ、更に下着をずらされ、中の竿を握られる。誰にも触らせた事の無いそれを触れられる感覚に怖気が走るが、拳を握り、耐えた。男は無造作にジェレマイアの性器を出し、照明の下に晒すと、それを観察しようと顔を一気に近付けて来た。


「あっ、ちゃんと皮剥けてるんだね。てっきり包茎かと思ったぁ」
「……悪かったですね」


嗚呼、殴りたい。もっと言うなら殺したい。
サイズについては言及して来なかったが、もしされたら本気で殺そうと思った。柔らかな質感のそれを勃起させようとしているのか、男はぐにぐにと先端を指で弄り、時折強く揉んでは根元から扱き上げる。だが、決して気持ち良くは無い。


「かわいいおちんぽだねぇー。かわいいおちんぽは可愛がってあげないとねぇー……でも中々勃起しないなぁ」


寧ろこんな状況で勃起すると思っているのか。『もしかして緊張してるの?』等と聞かれたが、其処は愛想笑い――と言うには余りにも引き攣っていたが――を浮かべ、適当に流す。


「うぅーん、これじゃあ楽しめないねぇー。ボクのとっておき、使っちゃおうかなぁ」


言って男はジェレマイアの性器から手を離し、ベッドの傍に有ったサイドテーブルへ移動する。とっておき、とは何だろうか。良い予感はしない。嫌な予感はびんびんにする。
テーブルの上のトレイには、様々な器具や道具が揃って入れられている。その中から、男は不気味な色の液体が入った小瓶を取り上げ、ジェレマイアの元へと戻って来た。ローションか、それともお約束の媚薬か。
何時だったか、媚薬を盛られた相方を、危機的状況から救い出した事がある。その時の相方の乱れ方は酷く扇情的かつ蠱惑的で、同性であったにも関わらず、下半身に熱が篭ったのを覚えている。勿論、襲ったりはしなかったし、しようとも思わなかったが。というより、その様な真似をすれば例え相方であろうと確実に殺される。一時の快楽に溺れる様な半端な理性は持っていない。何より度胸が無い。恥ずかしい話だが。


「これはねぇ、ボクが出資して開発した特別なお薬なんだぁ。これを使うと……何だっけ、すっごぉく気持ち良くなって、不感症も治っちゃうんだってぇー」


すごいでしょ。同意を求める様に言い、にたにたと笑う男に対し、気持ち悪さを通り越した何かを感じた。否、これは危機感だろうか。瓶の中の液体の色を見た時点で、ジェレマイアの中で激しい警鐘が打ち鳴らされていた。これは、不味い。これは、危険だ。使わせてはいけない。使われたら、如何なるか分からない。
それでも、ジェレマイアには抵抗したり、逃げると言った選択肢は無かった。何故此処まで我慢しているのか、自分でも理解出来なかった。相方の為とは言っても、此処まで大切にする必要が、果たして有ったのか。


「このお薬を、エレミアちゃんのおちんぽに掛けてあげるねえ……ああ、ボクはちょっと手袋するねぇ。本当に凄いんだよぉーこれ」


ゴム製と思しき手袋を自らのポケットから取り出して装着して。男は瓶の蓋を外し、中にある液体を揺らし、一層不気味な笑みを浮かべる。手袋をする程だ。薬の効果は相当なものなのだろう。
そうして男は掌に液体を垂らし、それをジェレマイアに見せ付ける様に掲げた後、彼の性器の先端へ塗り付け始めた。ぬるりとした感覚に、ジェレマイアは思わず『ひっ』と声を漏らしそうになり、咄嗟に片手を口元に添え、唇を噛み締める。ねちょり、ねちょりと。耳に残る粘着質な音と共に先端を中心に薬が塗り込まれて行き、暫くして塗られた箇所が芯から熱くなっていくのを感じた。


「どうかなぁー?エレミアちゃん、おちんぽ熱くなって来た?」
「……ッ、どう、でしょうねえ」


ぐちぐちと弄られる不快な感覚が、何故か心地良い。生理的な嫌悪を上回るそれに、恐怖を覚えつつも、男の問い掛けには曖昧な答えを返す。此処で素直に快楽を認めれば、相手の思うツボだ。


「熱くなってない?大丈夫だよぉ、今からあっつあつのトロットロにしてあげるからぁ」


その時、性器に与えられる刺激で気付かなかったが。
荒い鼻息と共に男はジェレマイアに対し、少々理解に苦しむ言葉を投げて来た。


「……は?」


そしてそれが何か、ジェレマイアが訊ねようとした所で、危機的状況を察する。
男の手には先程まで無かった、鈍い光を放つ銀色の棒が握られていた。




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