どこからか甘い匂いがする。どこかのクラスが調理実習でお菓子でも作ってんのか。匂いからするにチョコ系か。なんて思いながら窓の外を見ると利央がサッカーをしてた。元気だなーあいつ。つか犬みてー。


休み時間、何人かの女子がガトーショコラを持って来た。部活終わりにでも食べようとか思いながらカバンに放り込む。ふと廊下に目をやると山ちゃんと名前がいた。手には可愛い小さな包みが握られている。なにやら山ちゃんと言い合ってるようだ。

「な、んで私が!」

「これも作戦のうちだって」

「なんなんですか作戦て!そんなふざけた作戦いりませんよ!」

「大丈夫だって」

意味わかんねー会話。作戦て一体なんの話。にしても周りから見たら仲のいい奴らに見える。てゆーかいつの間に仲良くなったんだ。あ、そーか昨日からか。話の内容が気になったのもあるが、なんだか山ちゃんが彼女と仲良く見えたのが気に食わなくて二人に近付いた。瞬間気付いた彼女は目を見開いて、島崎せんぱい…!と呟いた。続いて振り向いた山ちゃんは俺を見るなりにやにや笑った。

「なーに話してんの?」

「今、俺にガトーショコラくれるとこ」

「は」

「ちょっ!」

彼女の包みを取り上げ、中身を一口で胃の中に葬った。突然の事に驚いて声も出ません状態の彼女に対し、ちょううまかった!と笑う山ちゃん。するとようやく覚醒した彼女はわたわたと俺になにやら違う違うと言い始めた。

「ち、違うんです!私ほんとは島崎先輩に…!」

「なに照れてんの」

「なに意味わかんない事言ってるんですか!」

顔を真っ赤にしてなぜか今にも泣きそうな表情の彼女を見て思った。彼女は山ちゃんの事が好きで、ただ照れてるだけなんじゃねーかって。

「だ、から…私ほんとはっ」

「山ちゃんに食べてもらってよかったな。俺だったら昨日奈々からもらったから断ってたわ」

つーか俺甘いもんあんまし好きじゃねーし。そう言うとまるで冷気に触れたように顔の赤みが引いていく。言葉を失い伸ばした手を力無く下ろした。ちょっと言い過ぎたか。結構冷たく言ってしまった。でも、だって、山ちゃんが彼女の作ったやつを食べて、それを見て頬を染める彼女がなんか気に入らなかった。










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