はい、慎吾。
お、ありがと。
今日も練習がんばってるね。
おー、奈々が見てくれてっからがんばれる。
やだ、なにそれ。
ほんと、ほんと。
……とかなんとかいちゃいちゃした会話でも交わされてるんだろうか。
初めて来た野球部の練習見学。ファンの子だらけでまともに見えないけど、運よく見える位置に島崎先輩と奈々先輩がいて。
タオルを島崎先輩に渡す奈々先輩の笑顔に、あーやっぱかわいーなーなんて思ってみたり。改めて失恋を実感した。そーだよね、私みたいなお子ちゃまより大人っぽくてかわいらしい奈々先輩の方が全然いいよね。はあ…
溜め息を吐いてぼーっと二人を眺める私の隣でふとファンの子の会話が聞こえた。
「ねえ、島崎先輩と奈々先輩って付き合ってんの?」
「えっ!うそなにそれ初耳なんだけど!」
「私も!」
「だってなんかあの二人いつも一緒にいるじゃん」
「あーたしかにそーかも」
「でもさー、ただ仲いいだけかもしんないじゃん」
「えーでもわかんないよ?」
みんなあの二人が気になってるみたいだ。でも真相がわからなくてうやむやしてる、そんなかんじ。絶対付き合ってるって。私昨日見たもん、二人が部活サボって校門でいちゃついてたとこ。あーもうほんとショック。
「俺さ、聞いてみたんだ」
「だれに」
スポーツ雑誌を食い入るように見つめる高瀬の隣に座って新発売のポッキーをかじる。ここは言わずもがな、高瀬宅です。雑誌から目を離す事なく高瀬は続けた。
「慎吾さんに」
「なにを」
「奈々先輩と付き合ってるんすかって」
「うん」
「したらさ、」
「うん」
「はぐらかされた」
「あっそ」
はぐらかす=付き合ってるって事なんじゃないの?もういいよなんか。私が失恋したってゆー事実は変わんないんだから。
ピンポーン
そんな時、呼び鈴が鳴って訪問者を知らせた。お前出て、って言われてだらだらと玄関へ向かう。今ここには高瀬と私しかいないから私が行くしかない。がちゃりとドアを開けるとそこに立っていたのは、