「…………あ、」

ぱたり、と足を止める。校門付近に島崎先輩と女の子が一緒にいるのを見てしまったからだ。たぶんあの女の子先輩だな、なんか雰囲気大人っぽいし。二人とも楽しそうに会話してる。え、まさか付き合ってるとか?うそー……そんな噂聞いた事ないぞ島崎先輩に彼女がいるなんて!そこで私の儚い恋は脆く崩れ去った。あんなかわいい先輩が彼女だったなん、て、
てゆーか島崎先輩部活は?サボり?サボってまで会いたかったくらい好きなの?そーなの?そーなんだ…

私は失恋した直後に島崎先輩の前を通りたくはなかったので、教室に戻って高瀬が部活終わるのを待つ事にした。失恋話をしてそのショックをとりあえず誰かに聞いてもらいたかった。その恰好の相手が高瀬。

なんとなく高瀬にはなんでも言える気がした。





「うっそ、慎吾さん彼女いたのかよ!?」


ファミレスで、パフェを掬って口に運ぶ動作を繰り返しながら、驚いた様子でテーブルに身を乗り出す高瀬に頷く。高瀬はひたすら、うそーとかまじかよー聞いてねーよーとか一人で喋ってた。

「初めて聞いたぜそんな話!」

「私だって初めて聞いたわよ」

「でも、あー…彼女どんな人だった?」

「んー、フツーにかわいかったよ。ゆる巻きヘアーの背がちっちゃい、たぶん先輩」

「えっ、それもしかして奈々先輩じゃね!?」
「…だれよ奈々せんぱいって」

二年の高瀬が知ってるほどその奈々って先輩は有名な人なんだろうか?私はそんな名前聞いた事ない。奈々先輩なら納得、てかぜってーそれ奈々先輩だって!とか言ってどこかにやにやし始めた高瀬に眉を寄せた。だから、だれだよ奈々先輩って。

「奈々先輩って何者」

「は?お前知んねーの?野球部のマネージャーじゃん」

「え」

なんでお前知らねーのって言われて、だって私野球部の練習とか見に行った事ないしと返す。そーかそーか、マネージャーか。……。なんか、私完璧失恋よね。またどっかでチャンスが…!とか思ってたのに、マネージャーとただの後輩なんて差ありまくりじゃん。マネージャーの方が島崎先輩といる時間長いわけだし。そりゃあんなかわいい先輩に島崎先輩が惹かれないわけがない。あーもう私死んだわ、失恋とかほんとないよね、さよなら私のときめき、

「お前失恋したよな」

「だまれ」

「奈々先輩相手じゃ仕方ねーよ」

「うるさい」

「俺はお前はがんばったと思うよ」

「……私なんも努力してない」

「……」

「私もマネージャー志望したらよかったなー…」

「だよな」

「……」

「……」


人生甘くないな。












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