部活の休憩時間、近くの水道から戻る途中、フェンスを囲んで奇声を発している女子たちからだいぶ離れた芝生で、俯せになり手元でなにかを弄っている名前を見つけた。なにをしているのかと後ろから近寄り覗き込む。俺に気付かないらしく、彼女は手元に集中している。


「…っあーもう!さっき必殺技出せたのに!」

「……」


一生懸命ゲームをしていた。しかも、男がやりそうな格ゲー


「よっしゃきたー!…とりゃ!……あーっ!もうこいつ反撃とかまじないわー」

「喜んだり落ち込んだり忙しいな」

「どわっ!?し、しまざきせんぱい!」


声を掛けるとびくりと反応して身体を起こした。毎回思うが、こいつのリアクションは相当おもしろい。笑いながら彼女の隣に腰を下ろす。

「また高瀬待ちか?」

「え、あ、高瀬待ちってゆーか…あいつが珍しく部活終わるん待ってろってゆーから…」


視線を泳がせてだんだん声を弱めるところなんか、全然気が強そうに見えない。体操座りをして膝に顎を乗せる姿は実にかわいい。

手元のゲーム機の電源はいつの間にか切られていて、彼女はただ黒い画面をじっと見つめている。ああ、長い睫毛が白い肌に影を落として……ってかこれは付け睫毛じゃないか。微妙に接着部分がずれている。

「な、」

「…なんですか」

「それ付け睫毛だろ?少し位置ずれてる」

「………」

「ほら、戻った」

「なっ!」

「あ、おい」

逃げられた。あ、もしかして、俺嫌われてる?











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