色々勝手でごめんなさい。ズルくてごめんなさい。

慎吾さんは好きだし、すごく大切な人だけど。あたしは勝手に自分の中で結論を出した。


部活を辞めることにした。


やっぱり、あんな高瀬を近くで見たくない。慎吾さんを傷つけたくない。二人とも大切にしたい。でも、あたしはそんなに器用な人間じゃない。


「本当に辞めるのか?」

「はい」

「お前は野球部の仲間だから、いつでも帰って来いよ」

「すみません」


先生の言葉さえ嬉しくて泣きそうだ。こんなあたしでも引き止めてくれる人がいるなんて思わなかった。
涼しい職員室を出ると、慎吾さんがいた。


「なに、今の」

「なにがですか」

「辞めるって」

「部活辞めたんです」

「なんで、笑ってんの」

「泣くのに疲れました」

「なんで俺頼ってくれねぇの」

「慎吾さんには感謝してます。だけど、あたし慎吾さんが思ってるような人間じゃないんです。自分の勝手で、人利用して、ズルくて、最低の糞女です。だから、あたしと別れてください」

「…はっ?、」

「あたし、弱いんです。すぐ、嫌なことから逃げるんです。面倒くさいから大切なもの全部捨てて、楽に生きるんです」

「…」

「だから、サヨウナラ」

「…」


あたしは結局何も守れなかった。結局逃げた。逃げるのに慣れた。


慎吾さんは追いかけては来なかった。








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