俺の幼なじみは泣いたことがない。いや、泣いたのを見たことがない。きっと我慢してんだと思う。何故我慢しているのかは俺には分からない。実際、何十年も一緒にいるけど彼女が俺に気を許したことがあるだろうか。
「……」
「なにしてんだよ」
「…なにも」
「泣いただろ」
「泣いてない」
ほら、我慢してる。目なんか真っ赤にして、泣いてました。って言ってるもんだろ。
「泣き跡残ってんぞ」
「泣いてない。てか、ほっといてよ、馬鹿慎吾」
「何で、いつも俺の前では泣かないの」
「あたしは生まれてから泣いたことないの」
小学生みたいな嘘をつく。現に目真っ赤だっつの。本当に同い年ですか。なんの意地を張ってんだ。
「泣けばいいだろ」
「無理。悲しくもないのに泣けない」
「おまえの悲しいの基準てなに?」
「……」
「あ、質問難しかった?」
「慎吾」
「なに、」
「だから、慎吾!」
「だから、なにつってんじゃん」
「あたしの悲しいの基準はあんただ糞馬鹿慎吾!」
そう言い逃げして行った。確かに彼女が目が真っ赤な時は俺が彼女つくった時とか、夏大負けた時とか、全部俺じゃん。つまり泣かしてたの俺か。なんか、嬉しい。
つか言い逃げとかずりー。