可愛くなりたかった。島崎の隣を歩いても恥ずかしくないように。だけど私はどうしようもなく不細工なのだ。目が小さくて睫毛が短くてまゆ毛は太い。鼻は低いし豚鼻だし歯並び悪いし顔おっきいし(以下略)。可愛いという単語からかけ離れた顔なのだ。保健室に置いてある鏡に映った自分を見てそう心の中で実況。からのため息。
「お前、何してんの?」
「いや、化粧してみてもブスは所詮ブスのまんまだなって」
「可愛いよ」
「嘘の優しさはよくないと思います」
「またそんなこと言って」
「ちょっとした自虐プレイだから気にしないで」
島崎は自分の容姿が嫌いな私を気遣ってかよく"可愛い"と言う。あきらめ悪く化粧したりお洒落すると必ず島崎はそうやってお世辞を言ってくれるのだ。私がそうとうな卑屈みたいに思われそうだけど違う。島崎は本当は可愛いなんて一ミリも思っちゃいない。
「可愛い」
「二組の高橋さんとどっちが可愛い?五組の加藤さんとどっちが可愛い?」
「お前のが可愛い」
人は顔じゃないって言うけどそんなの嘘。だから島崎はそう言って私を喜ばせてから可愛いあの子のところに行くんだ。