忘れさせて (田天 R18)
※高天が別れた直後
※田天R-18
(天城視点)
高良と別れて数日が経った。 普段から一緒にいる時間が多かったわけじゃないから、学校生活は大きくは変わらない。だけど、ふとした時に胸が締め付けられるみたいに苦しくなる。
環境委員も一緒ではあるけど、ほとんど事務的な話しかしない。付き合う前よりもずっと遠い関係になってしまった。
「高良、 カノと別れたってほんと?」
「…どこで聞いたん」
「3ヵ月だっけ、高良にしては続いた方じゃん〜」
高良の声が聞こえる。 聞きたくなくて耳を塞ぎたくなるけど、意識してるってバレたくないから我慢した。
たしかに、 たった3 ヵ月の出来事なんだよな。俺にとっては凄く大切だったのに、時間としては本当に短くて。
「別れたなら、 今日デートしようよ」
「…別に。いいけど」
「やった! 高良のガード緩んでる、嬉しい」
...あ、そう。 出かけるんだ二人で。そんなことを今さら俺が気にしたって仕方ないんだけど、こうして目の前でそんな話を聞かされると、さすがに落ち込むことしかできない。
「元彼めちゃくちゃチャラいじゃん」
涙目になって自分の席で俯いていると、 背後から肩を叩かれた。
「…田中氏」
振り返ってみると、田中氏いた。 一人で泣いてるのは悲しかったから、正直ちょっと助かった。
「あいつも女とデートみたいだし、 天城も俺と出かけちゃう?」
「やだ。嫌な予感する」
「ウケる。 でも恋を忘れるには、 新しい恋しかなくね」
たしかに、それは一理ある。 また好きな人ができるまで、 高良への未練を引きずりそう。
「新しい恋って、誰と?」
「えー?じゃあ、俺としてみるか」
「田中氏と俺が?絶対ない!」
「おい。めちゃくちゃ失礼じゃね?」
即座にツッコミを入れてくる田中。
「恋に落ちなくても、セックスしたら人生観が変わるって」
「うわ、ドン引き。 どんだけ男とヤリたいん」
でも別れた理由は、多分それ。 だって 『俺がお願いしたって、 天城は譲らないじゃん』 と言われたのが最後だった。
セックスをすることって、そんなに大事?
俺は高良といる時間の方が、遥かに大事だったのに。
「...田中氏」
「なに」
「優しくしてくれる? 痛くない?」
セックスを知ったら、 高良の気持ちを少しは理解できるんかな。
そう思って、ついそんなことを言ってしまった。
「なに。 興味もったの」
「...まあ、そうかも」
「じゃあ放課後、校門で待ち合わせってことで」
田中氏が離れたと同時に、予鈴のチャイムが鳴った。 席につこうとするタイミングで、高良をチラッと見る。
(もしかして今の、聞かれた?)
一瞬だけ目が合ってドキッとしたけど、すぐに視線を逸らされた。その瞬間に、心がバラバラになったみたいな喪失感と、痛み。
(俺の事なんて、もうどうでもいっか)
大切なものを失うときって、こんな感じなんだ。 自分のことなんか、何もかもどうでも良くなっていく。
もう深いこと考えずに、高良に抱かれてれば良かったんかな。
ーーー
田中の家にきてすぐ、ベッドに押し倒された。 びっくりしている と、シャツのボタンを外されながら尋ねられる。
「キスしていい?」
「ちょ、ま…早いってば!」
田中に言われて、慌てて距離を取ろうとする。
高良以外とキスするの?そう思ったと同時に、改めてショックを受ける。
俺が誰と関係を持とうが、高良はもう関係ないんだって、自覚させられちゃったから。
「わ…わかった」
少しヤケになってきて、コクコクと頷いた。 流された方が、この痛みに耐えるよりずっと楽になる気がした。
ちゅ、と唇が触れた瞬間、なにか大事なものを失った気がして思わずジワッと涙が出てくる。
「寝取りしてる感じして大興奮」
「 最低、んぅ…」
「心ここにあらずくんに言われたくねえよ」
それを言われると、なんにも言い返せない。田中は唇から首、鎖骨と少しづつキスの位置を落としてくる。
シャツの前ボタンを全部あけられて吸いつかれたのは、とんでもないところ。
「ひぁっ!... 田中そこ....やだ」
「柿本がさ、 男でも乳首は感じるって言うから興味持っちゃったんだよね(笑)」
涙がボトボトと落ちる。 高い声が漏れて、 止まらない。
「......や、あ...」
たしかに気持ちいい。 気持ちいいけど、だんだん胸が痛くなってくる。
色んな気持ちが麻痺してきて、心が空っぽになる。
「ねえ天城」
「……っ、あ、なに?」
「俺、このままヤっちゃえるけど。いい?」
田中の目を見て、 何となく察した。
これが最後の意思確認。 まだ止めるって言ったら聞いてくれてる 気がする。
「…うん」
だめだ、俺が俺を大切にできていない。 そんなことくらいは頭で わかってる。
でも、俺のこと大事にしてくれる人は、もう誰もいない。
これが失恋なんだ。めちゃくちゃつらいじゃんけ、みんなどうやって乗り越えてるん。
「...続けて田中」
今こうなってから考えると、高良と初めてができていたら幸せだったんだろうな。
今さら、もう遅いけど。
「天城」
「…え?」
「俺にしとけば?」
そんなことを言いながら、ベルトをガチャガチャと外し出す田中。 どうしたらいいか分から なくて、 ただされるがままの俺。
「なんて。冗談だけど」
田中がそんなことを言って、目を伏せて笑った。今の言葉の真意が読み取れなくて、思わず惚けてしまう。
それと同時に、パンツをずり下ろされた。「ひゃっ」と声を出した瞬間には、露出したところをねっとりと舐められる。
「ひぁ...ああ、んん、!」
頭が何も考えられなくなって、 全てが真っ白になっていくみたいで。胸の痛みだけはただ、今までよりもずっとズキズキと増していた。
END
続き