この春の顛末


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フルーツバスケット



「A組、お疲れ〜!」

体育祭のあと、教室で開催された打ち上げ。

みんなでジュースやお菓子を持ち寄るだけのライトな規模感で、殆どのクラスメイトが参加してる。

「天城、リレーで大活躍だったね」

隣にいるザッキーが、肩にもたれ掛かってきた。

普段だったら「引っ付くな!」って怒るところだけど、今日は休ませてあげようかな。

サボるって言ってたのに、誘ったら来てくれたんだもん。

「ザッキーの障害物競走、見てて面白かったよ」
「途中で力尽きちゃった」
「網に絡まって動けなくなってたの、漁業みたいだった」

あれは本当に面白かった、助けに行く先生が漁師にしか見えなかったもん。笑

今日の楽しかった出来事のハイライトについて語って語っていると、ふと近くの女子が立ち上がった。

「フルーツバスケットやろー」
「いいね、ちょうどいい。笑」
「みんな円になって〜」

うわー懐かしい、なんだっけフルーツバスケットって。

うろ覚えのまま、机と椅子を運んでいると、ものの数分で準備ができた。

椅子に座って、最初のゲームが始まった。

「じゃあ…最初は無難に。A型のひとー」

A型の人が一斉に立ち上がる。

…あんまりルール覚えてないけど、A型だけが立ってほかの椅子に座ればいいんだっけ?それから椅子取りゲームをして、座れなかった人が負け、みたいなルールだった気がする。

狼狽えているうちに、みんな俊敏な動きで椅子を獲得していく。

どうしよ、俺こういうの鈍臭いタイプかも。

「…あ」

最後の椅子に座ろうかと思ったら、高良と目が合う。

そういえば高良もA型だっけ。俺と同じところに座りたい感じ?

困りましたな。高良さしおいて座るの、俺にはちょっとできないぞ。

「おい譲り合うなよー」
「お前らもう二人で鬼でやれば?笑」
「ああ、いいじゃん鬼2人に増やそ」

ちょっとした野次に救われる。結局どちらも座らず、そのまま二人で鬼することになった。

「テーマ何にする?朝食はパン派とか?」

ウキウキと高良に相談したら、間髪入れずに高良が声を上げた。

「恋人に誰か引っ付いてたら嫉妬するひとー」

え、なんで無視して1人で決めるん?っていうか急に具体的じゃん。

「高良のお題きも!」
「俺立つわ。笑」
「立ってる女子、彼氏いんのー」

クラスの4分の1くらいが立ち上がって、ゲラゲラ笑われている。

ひとまず席に座ることが先。サクッと近くの椅子に座った、高良をチラ見した。

…もしかしてさっき、山崎と引っ付いてたことに拗ねてるとか?そんなことが頭によぎる。

「次ー、好きな人いるやつー」

だんだん恋バナによってくるテーマ。好きな人がいるってバレるの恥ずかしいな、なんてちょっと照れながら立ち上がる。

他にも意外だとびっくりされてる人や、堂々と立ち上がって笑われている人達がいるなかで。

…え?

「高良、お前立たねえの」
「うるさ」
「愛はどこに行ったんだよ。笑」
「振られたか」

ふと高良を見たら、座ったままでいる。

なんで?別に付き合ってる人がいることは隠してないじゃん。

ショックで立ったままポカンとしてると、いつの間にかみんな座ってて。ポツーンと俺だけ立ってる状態。

あ、俺もしかして鬼?ダブルで辛いわ。泣きそう。

「…ごめん、俺立つの忘れてた」

見かねた高良が、ちょっと気まずそうに顔のまま立ち上がる。

「なんだお前、きも」
「いまの1分で愛を取り戻したか?」
「高良も鬼やれ」

田中達に野次を飛ばされながら、高良がフラッと俺の隣に立った。

「…」

ムッとして高良を見ると、「ごめんね」と小声で謝られる。

仕方ない、許そう。コクリと頷いて「俺もごめん」と謝る。

「テーマどうする」
「…いま恋人とお揃いのもの持ってるひとー」

高良がまたテーマを決める。

えっ!待って、それって…。

教室がシーンとなる。誰も立ち上がらなくて、完全に滑った。

「は?ふざけんなお前ら持ってるだろ」
「いや、体育祭に持ってこないべ」
「高良なんか持ってるん」

一軍にやいやい言われてる高良の横で、思わず赤面してしまう。

…だって俺ら、今日。

「あれ?高良と天城、靴下おそろいじゃん」

田中からニヤニヤして突っ込まれて、いたたまれない。

これならバレないと思ったのに!真っ赤になってつい俯いてしまう俺の横で、高良がボソッと呟いた。

「フルーツバスケット」

全員が一斉に立ち上がる。

「お前やりやがったな」
「滑ったのごまかすための全員シャッフル。笑」

ご、ごまかせた?慌てて座ると、隣に座ってきたのは香取。

「今のはアウト」

ぼそっと言われて、思わず両手で赤くなった顔を精一杯に隠した。

END


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