この春の顛末


≫Top ≫Novel






入れ替わりパロ 3話



(優也視点)


ハッと気がつくと、また見知らぬ場所にいた。少しの間だけ脳みそがフリーズする。

「…っ、ん…」

唇に吸いつかれてる。でも今、俺の上に覆いかぶさってるのが柿本さんじゃないことだけはわかる。

トントン、と胸を押してもやめてくれない。本当にだれ?香水の匂いが違うし、体の大きさも何もかも違う。怖い。

「…嫌だった?」

体をねじると、その人はピタッと動きを止めて顔を覗き込んできた。

目が合ったのは、高良パイセン。びっくりしすぎて心臓が止まった。

ここ、もしかして高良パイセンの部屋か。どおりでイケてる部屋だわ、一軍男子の部屋ってこうだよな。

…ってそうじゃなくて。

「…高良パイセン」
「は?」
「また入れ替わっちゃった…」

さすがに2回目にもなれば分かる。入れ替わってるわ天城くんと。

助けを求めると、高良パイセンがジッと俺を見る。ガンつけられてるみたいで怖い。

「…もしかしてゆうや?」
「…うん」

高良パイセンが、両手で顔を隠してショックを受けてる。いや、気持ちはわかるけど、キスされて嫌だったのは俺の方なんですが。

「こんな頻繁に起こると困るから、即刻やめて」
「俺だって好きでやってる訳じゃないってば」
「で、なに。アンパンマンでも見る?」
「バカにしすぎ!」

迷惑そうな顔されるのムカつく。何なんアンパンマンって、赤ちゃん扱いされるのうざい。

俺だってせっかく柿本さんとエッチしてたのに、いきなり邪魔されて最悪だし。

…ん?エッチしてた…けど…。

「ねえ高良パイセン」
「なに」
「エッチ中に入れ替わっちゃったらどうなるん…かな…なんて。アハハ」

冷や汗ダラダラで尋ねてみたら、高良パイセンが持っていたアイスコーヒーを思い切りこぼす。

あ、高そうなパーカーが…。

「どこでヤッてた?」
「え、俺んち…」
「行く」

立ち上がる高良パイセン。

「え、待って俺も行くから」

秒でカバンを手にして、部屋から出ていこうとする高良くんに慌てる。

天城くんの荷物どれ?と思ってアワアワしてたら、高良パイセンが荷物を取ってくれた。

柿本さんたち、どうしてるんだろ?不安になってきた。どうか、どうか何も起きていませんように。


−−−


え、なにこの状況。ぜったい飛んでもない状況なのは分かるけど、頭が追いつかない。

「ゆうや、早く動いてくんない?」

柿本の膝に跨ってる俺は、ズボン履いてない。そもそも俺のなかに何か入ってる。

ちょっと動いただけで背中がゾクっとする。

あ、これヤバいやつかも。どうしよう、とにかく早く柿本の膝から降りないとヤバい。

「ま…待って」
「待てないって。わかるでしょ、ほら」
「っひぃ…っ、ん…」

グイッと突かれて、体が跳ねる。何これ、目がチカチカする。

怖い。これ本当にやだ、動くのが怖くてしがみつくことしかできない。涙がじわじわとにじんできた。

「今日は泣いても甘やかさないから」
「ちが…、入れ替わった」
「え?」
「天城…だから、降ろして」

伝えると、ピキって固まった柿本。あ、完全に頭がバグっちゃってる。

「え、マジ」
「…うん」
「無理だって。これは回避不可能」

いや、それは凄くわかる。わかるんだけど、今の状況を何とかして。早く。

変な体制のせいで膝がガクガクしてる。

「抜くわ、降ろすから待って」
「…っ!…はぁ…」

持ち上げられて柿本のが抜けると、ちょっと楽になった。それと同時にポタタと下に何かがしたたる。え、何これ?

「マジでごめん、大丈夫?」
「うん…」
「とりまこれ使って」

バスタオルを渡されて、とりあえず体にまく。それと同時に、部屋の扉がガチャっと開いた。

「あー、高良達が焦ってた理由これね」

田中がスマホを片手に入ってきた。反射的に体を隠すけど、考えてみれば俺はいま田中の弟なんだった。意味ない。

柿本がガチャガチャとベルトをしめる。俺も慌てて、近くにあったパンツとズボンを履いた。

「おもしろ、ガチで天城の処女フライングゲット?」
「いや、ノーカンだろこれ、秒でやめたからセーフ」
「アウトだろ」
「絶対に言うなよ…」

柿本が田中の胸ぐらを掴んだ。


「何を言うなって?」


とんでもなく怒ってる顔の2人が、部屋に入ってきたのはその3秒後。



END





「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -