この春の顛末


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03





(ゆうや視点)



ハッと気がつくと、また見知らぬ場所にいた。少しの間だけ脳みそがフリーズする。

「…っ、ん…!」

唇に吸いつかれてる。でも今、俺の上に覆いかぶさってるのが柿本さんじゃなくて。

トントン、と胸を押してもやめてくれない。この人は誰?香水の匂いが違うし、体の大きさも何もかも違う。

―――やだ、怖い!

「…嫌だった?」

体をねじると、その人はピタッと動きを止めて顔を覗き込んできた。

目が合ったのは、高良パイセンで。びっくりしすぎて心臓が止まりそうになる。

もしかしてここ、高良パイセンの部屋?どおりでイケてる部屋だわ、一軍男子の部屋ってこうだよな。

……って。そうじゃなくて!

「た、高良パイセン」
「は?」
「また入れ替わっちゃった……」

さすがに2回目にもなれば分かる。入れ替わってるわ、天城くんと。

慌てて助けを求めると、高良パイセンがジッと俺を見つめてくる。

「……もしかしてゆうや?」
「う、うん」

高良パイセンが、両手で顔を隠してショックを受けてる。

いや、気持ちはわかるけど、キスされて嫌だったのは俺の方なんですが!

「こんな頻繁に起こるとマジで困るから、即刻やめて」
「俺だって好きでやってる訳じゃないって」
「で、なに。アンパンマンでも見る?」
「バカにしすぎ!」

迷惑そうな顔されるのムカつく。何なんアンパンマンって、赤ちゃん扱いされるのうざい!

俺だってせっかく柿本さんとエッチしてたのに、いきなり邪魔されて最悪だし。


ーーー…ん?エッチしてたけど……。


「ねえ高良パイセン」
「なに」
「エッチ中に入れ替わっちゃったらどうなるん…かな……なんて。アハハ…」

冷や汗ダラダラで尋ねてみたら、高良パイセンが持っていたアイスコーヒーを思い切りこぼす。

あ、高そうなパーカーが…!

「どこでヤッてた?」
「え、俺んち…」
「行く」

立ち上がる高良パイセン。

「え!?ま、待って俺も行くから!」

カバンを手にして、早々に部屋から出ていこうとする高良くんを慌てて追いかける。

柿本さんたち、どうしてるんだろ?だんだん不安になってきた。

どうか、どうか何も起きていませんように…!!



ーーー


(天城視点)


え、なにこの状況。ヤバい状況なのは分かるんだけど、マジで理解が追いつかない。

柿本の膝に跨ってる体制でめちゃくちゃ密着してるし、そもそも俺、ズボン履いてない……。

「ゆうや、早く動いてくんない?」

俺のなかに何か入っていて、ちょっと動いただけで体がビクビクする。

ど、ど、どうしよう……!とにかく早く柿本の膝から降りないと、大変なことになりそう。

「ま…待って!」
「待てないって。わかるでしょ、ほら」
「っひぃ!っ、んぅ…」

グイッと下から突かれて、体が跳ねる。何これ、目がチカチカする。

こわい、やだ、必死でしがみつくことしかできない。
涙がじわじわとにじんできた。

「今日は泣いても甘やかさないから」
「ちが……っ!入れ替わった」
「え?」
「天城……だから、ぅ、降ろして」

伝えると、ピキって固まった柿本。あ、完全に頭がバグっちゃってる。

「え、マジで言ってる?」
「うん」
「いやいやいや。無理だって。これは回避不可能……」

いや、それは凄くわかる!
わかるんだけど、今の状況を何とかして……!早く!

変な体制のせいで膝がガクガクしてる。

「抜くわ、降ろすから待って」
「っ!…ひぁ」

持ち上げられて柿本のが抜けると、ちょっと楽になった。

「マジでごめん、大丈夫?」
「うん……」
「とりまこれ使って」

柿本にバスタオルを手渡されて、慌てて濡れてるところを拭いた。

―――ど、どうしよう…!不可抗力とはいえ、高良以外の人と…!

いやいやでも身体は優也くんだし、浮気には入らない?どっち……?なんてグルグル考えながら涙ぐんでいたとき。


「あー、なるほど。高良達が焦って電話してきた理由ってコレね」


部屋の扉がガチャっと開いて、田中が入ってきた。

「柿本がガチで天城の処女フライングゲット?ウケる(笑)」
「いやノーカン。 秒でやめたからセーフだろ」
「いや〜アウトだろ」
「高良には絶対に言うなよ、 お前言ったらマジで殺すから」

柿本が田中の胸ぐらを掴んだのは、

「……おい。何を言うなって?」

とんでもなく怒ってる顔の2人が、 部屋に入ってきたのはその3秒後。



END





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