02
「入れ替わっちゃった…ねえ」
柿本がめちゃくちゃジッと見つめてくるのが怖い。
ここはどうやら田中の家で、俺と田中の弟が入れ替わっちゃっているらしい。
「本当に中身、天城なん」
「そう…だけど…」
自分でも信じられない。でも、渡された鏡を見たらどう見ても自分より幼い顔になっていた。
というか、田中に似すぎててビックリする。
「この場合どうすんの?今後どっちとセックスすんのが正解なわけ」
田中がとんでもないことを言う。
「柿本が体重視なら、体がゆうやの方とセックスしたい感じ?」
「なんで体重視で話が進んでんの、やらねーよ。中身は天城くんだろ」
「だって、襲ってたじゃんさっき。さすが天城、押し倒されのスペシャリストちゃんだわ。笑」
うわ、不名誉なあだ名か定着しそうでショック。
でも高良、田中、柿本 とここにいるほぼ全員に押し倒されててぐうの音も出ない。
…なんか、高良に申し訳なくなってきた。
「柿本さん最低!俺以外にキスマークつけるとかありえない」
隣では、田中の弟が涙目のまま怒っていた。
声でか!俺の体ってこんな大声が出せるん、びびったわ。
「悪かったって。ゆうやだと思ってたから許して」
「しかも距離近いよ、二人とも離れて!」
「天城にこのテンションで怒鳴られて、俺すでに頭がバグりそうだわ。よしよし」
柿本が俺の頭をなでる。うわ、柿本とイチャイチャしてる俺の図って気まず。
そう思ってたら、高良が柿本の手を払い除けた。
「やめてくれる?天城の体なんだけど」
高良もキレてる。
「高良もまだ怒ってんの?」
「人のもんに手を出しといて何ナメたこと言ってんの」
「未遂だって、服ぬがしてキスマークつけただけ…って、なに」
ぎゃー!柿本なんでそんな細かく説明すんの!
高良とそこまでのことやったことないのに。
「…あれ?もしかして高良と天城って」
柿本が察したっぽい。最高に良いおもちゃ見つけた!みたいな顔をしてる。
「え、柿本が追い越し決めちゃったの?」
「高良は本命に手を出せないくんだったか。ごめんな、追い越して」
お祭りみたいなテンションになる高良と柿本。
うわー、高良ごめん。今後ぜったい弄られ続けるやつじゃん。
っていうか、中3の田中弟は、柿本とそんなことヤッてるの?さすが田中の弟、すごい。
「ちょっとトイレ行ってくる」
ゆうやくん(俺の体)が不意に立ち上がった。
フラフラと部屋から出ていこうとする腕を、高良がいきなり掴む。
「待って。天城の天城をゆうやが掴むん」
「うわ、高良パイセンきも」
「ゆうやでも無理、俺がついてく」
ちょっとちょっと、なんの話ししてるん!
「待って高良、ぜったいだめ!だめ!」
「天城の天城が、よその男に掴まれるのを耐えろと」
「その言い方やだ!」
「ゆうや、俺とトイレ行こ」
高良が面白がってんのか冗談なのかわからなすぎて焦る。
田中兄 は隣でアヒャヒャヒャと爆笑してる。
「いや、ゆうやとそういう下品プレイしたことないから止めてくれる?追い越し決めんの」
「え!柿本さんそういうの興味あるの?」
「なかったけど、ゆうやならナシではないかな。とにかくゆうやがトイレするなら行くのは俺だから」
立ち上がる柿本。お願いだからみんな座って!
あーもう、話が下ネタばっか!
俺もトイレ行きたいけど、まだしばらくそんなこと言えそうにもない。
END