この春の顛末


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ちょっとだけ触らせて







高良の家にお泊まりに来るのは、今日で3回目。

お風呂に入って歯磨きもしたし、あとは寝るだけ…なんだけど。

「高良、今日もソファで寝るん」
「その予定だけど。なに?」

すでに高良はソファに座って、毛布を膝にかけていた。寝る準備をバッチリ済ませてる。

確かにもう良い時間だけど、せっかくお泊まりなのにもう寝ちゃうのは少し寂しくて。

「え、なに」
「お邪魔します」

高良の膝の上に、ちょこんと向き合って座る。

顔を見るのが照れくさくて、思い切って高良の胸あたりに顔を埋める。お風呂上がりの優しい匂いがした。

「ちょ…ちょっと!離れて」

でも引っつけたのは一瞬で。無情にも、床にポイッと投げ下ろされる。

「…ポイって」
「俺も理性と戦ってるから」

高良を恨めしそうに見ると、ごめん許して、と言いながら視線を逸らす高良。

ちゃっかり体育座りになってて、俺がもう座れないようにガードしてる。

「高良ひどい。甘えたかったのに…」

分かってるよ。高良が俺を大事にするために、我慢してくれてるってことは。

でも、でもさ。

「言葉にするのが苦手な分、俺は抱きしめたりしたい」

思い切って伝えてみたら、高良がちょっと悩んでる。

視線を左右に泳がせてうろたえたあと、ソファのうえで体育座りにしていたつま先を、床にそっと下ろした。

「…おいで」
「え!いいの?」
「その代わり、ちょっとだけ天城に触らせて」
「な、なにその交換条件」

抗議しようとしたけど、思いのほか高良の顔は真剣で。

「…好きな子に触りたいから」

そんなことを言われると、つい黙ってしまう。

多分これが、お互いの妥協点ってことを何となく理解した。

「い…痛いのは無理」
「大丈夫。上しか触らないから」

頭を優しく撫でられて、ちょっとだけ安心する。

おずおずと高良の膝の上に座ると、向き合っている高良に再び抱きついた。

「天城、すごい心臓バクバクしてる」
「高良が変なこと言うから、緊張してきた」
「…触るよ」

そう言われてビクっと構えると、子供をあやすみたいに背中を優しくポンポンと叩かれる。

「…え?」
「怯えてる子に、いきなり変なところ触れないでしょ」

そう言われて、ジーンと感動する。高良はいつも優しい。

もう片方の手は、冷たくなってた俺の指を握ってくれて。その手の温もりに、ちょっとだけ体の力が抜けた。

「…じゃ、失礼して」
「うわっ」

高良がそっと、服の袖から指を入れてくる。

や、やっぱり触るんだ…!

腰あたりをゆっくりと撫でられた。まるで、ちょっとずつ慣れるのを待ってくれてるような。

「これもOK?」
「う…うん」
「じゃあもう少し上、触るね」

ススス、と指が上に動いていく。思わず背中が震えてしまって、ちょっと恥ずかしかった。

「天城の肌、すべすべで好き」

高良に見つめられて、そんなことを言われるとまたドキドキとしてきて。

何だか凄く悪いことをしているような気分になってきた。

「…っ、!」

触られたのは、俺の真っ平らな胸。

え、待って待って。男のそこって触って楽しいの?頭がフリーズしてしまう。

「た…高良…?」

声をかけても無視される。摘まれたり、指で撫でられたりすると少しだけ擽ったくて。

「俺は男だから…そこは」
「知ってる」
「え、でも…」

何だか、ちょっぴり申し訳なくなってきた。

やっぱり胸がフワフワの女の子の方がいいよな、とか考えてしまう。

高良は大きさより形とか言ってたし(※リミットレス高天)、こだわり強いんじゃ…。

「ご、ごめんな。ガッカリしたならそう言って…」
「俺は天城のが好きだから」

高良はそう言いながら、俺の服を捲りあげる。

ええっ!ここまでオープンにするのは聞いてない。触るだけって…触るだけって言ってたのに…!

「た、たたたから…!」

止めようとしたとき、乳首をペロッと舐めて、チュッて吸われた。

それと同時に、なんだか腰の辺りが疼いて。

「…っ、え?…、ひぃっ、ぁ」

一瞬だけ。何だか電気が走ったみたいな、気持ちよさを感じて。ビックリして思わず身をよじる。

すると、高良の足の付け根にある固いものに自分のが当たって。

え、高良も勃って…。

「うわっ!」

そのことにも驚いて、うっかり背中から床にひっくり返ってしまう。

なななな何今の。いま、触られて変な感じが…。あと今、触れ合っちゃいけないものが触れ合ってしまったような。

「…気持ちよかった?」

高良が尋ねながら、腕を引いて起こしてくれる。

恥ずかしすぎて目も合わせられなくて、慌ててTシャツの裾をむりやり引っ張って。主張してる下半身をなんとか隠す。

「ち、ちが…!」
「俺も限界だから、今日はおしまいにしよ」

高良がギュッと抱きしめてくれて、またヨシヨシと頭を撫でられる。

これだけ近いと、どっちの心臓の音かなんてよく分からなくなってきて。

「好きだよ」

…ガッカリされなくて、良かった。その言葉に安心して、何だかちょっぴり、泣きそうになったりした。


END







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