「おはよ、健……」

 寝起きで掠れた大和の声が福井の耳に届き、小さいながらも返事を返した。

「あれ? 俺の分も作ってくれたの?」

 昨日の夜に突然家に上がり込んできた、恋人である大和。
 大学の飲み会で酔い潰れてしまった所、福井と大和共通の友人が福井の家まで運んできたという。
 福井が用意した朝食は、まさに日本の朝ごはんと言えるような一汁三菜がテーブルの上に並べられていた。

「別に大和の為に作ったんじゃないし」
「え? じゃあ誰のために作ったの? 俺と健以外、人居ないよね」
「――っ、作りすぎたの!!」

 本当は大和を思って作ったご飯なのに、頑なに認めようとしない。
 早く座れ、と命令し大和を席につかせる。
 温かい手料理を幸せそうな顔をしながら食べる大和を見て福井は内心、料理のジャンルを増やそうと思った。

「俺さ、何気に健の手料理初食いだよね」
「まあ始めて人に作ってあげたし」
「へっ? やっぱり俺のために作ってくれたんだ!」

 素直になってしまった自分が恥ずかしい。
 素直なんて似合わないキャラなのに、と自らを卑下する始末だ。
 まともに大和の顔を見れず、俯いてしまう。

「ありがとう健。 美味しいよ、また作ってね」
「気が向いたらね」

 大和に褒められるなら、偶には出れるのも悪くないかもしれない。


2012/12/18
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