誠凛高校女子バスケ部の練習中、一人の男子が体育館の扉を開けた。
 その瞬間、部員の殆どが一斉に音のした方に顔を向ける。
 入ってきた人物を見ると、日向が突然顔を真っ赤に染めた。

「んなっ!? 大和なんで来たんだよ!」

 大声で叫びながら大股でドスドスと近付き、大和の腹をグーで殴った。
 しかし大和は何ともない表情で話をし出す。

「いやぁ、順子のバスケしてる姿見てみたくてね。試合も見にいけたことないからさ……駄目だった?」

 眉を下げ申し訳なさそうな顔をした大和に日向はグッと押し黙った。
 日向は大和の困った顔と声に弱いのだ。
 「見ててもいいけど邪魔するなよ」そっぽを向きながら呟くと、日向は練習に戻った。

「はい、二十分休憩!」

 リコの声が体育館に響き、ボールとバッシュのスキール音が止む。
 日向も手を止めた。
 少し遠くに居た伊月へ話しかけようと体の向きを変えると、大和に名前を呼ばれる。小さく走り彼に近づいた。

「どうした?」
「凄いね順子! シュートとかすっごいキレイだったよ!」
「なっ……、うるせぇよだぁほ……」

 興奮気味に褒められ、恥ずかしさのあまり悪態をついてしまった。

「あらあら、大和君ったら日向ちゃんにこんな顔させるなんて! さっすがー!」

 肘で大和を突きながら茶化すと、日向は顔を真っ赤にさせながら反論した。

「別にどんな顔もしてねーけど!?」
「いやぁねー、大和君に褒められて嬉しいって顔してるけど?」

 ニヤニヤと日向を挑発する。
 事実を言われた日向は火が出そうなほど熱くなっている頬を手で押さえた。



「何なんだ、あのリア充臭いのは」
「おっ! 伊月にしてはマトモなこと言ってるよ水戸部!」
「……!」


2012/12/17
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