バスケ部に向かう途中に大和を見かけた木吉は、急いで階段を駆け下りた。

「おーい! 大和ー!」

 残り三段、というところで足を踏み外す。
 焦り顔できよしに駆け寄り、落ちてくるだろう場所に手を広げ構えた。

「――あぶねっ」
「うぉっ」

 自分の胸に収まった木吉を見てホッとする反面、うんざりした声を出した。

「もうちょっと落ち着け? 俺は逃げないから……」
「大和が逃げないのは知ってるぞ?」

 狙ったように聞こえる科白も、彼女の素の部分なのだから驚きだ。
 木吉を一人にしておくと危なっかしくてハラハラしてしまう。
 彼女に食べ物や飲み物を運ばせると、何もない所で躓き飲み物をぶち撒けてしまうし、洗い物をしていると皿を割るなんてしょっちゅう。
 大和にとって木吉は、恋人という関係を除いても放っておけない存在だ。

「鉄は俺が居ないとダメだなぁ」
「ああ! これからもずっと一緒だからな!」

 噛み合っているのかいないのか、そんな会話をしながら熱い抱擁をする二人を、周囲の生徒は目を逸らしながら避けて通っていった。


2012/12/17
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