「んー? 坊やどうしたのかなー。迷子?」

 道路に一人、ポツンと立っている小学校低学年くらいの男の子に目線を合わせ話しかける。後ろの清志から舌打ちが聞こえたが知らないふり。

「わんちゃん追っかけてたら知らない場所に来ちゃった……おうちに帰りたいよぉ……」

 喉を震わせながら話す涙声に胸を締め付けられる。再び後ろの清志が「犬追っかけてここまでくるかっつの」と怒りを込めた声音でぼやいた。

「んー、今の場所言ってもわからんだろうからなー。兄ちゃんと一緒にお家を探しに行くか!」
「はっ? おいちょっとなんでだ。今オレとデートしてんだろっ? こんなちっこいの放っておけばいいじゃねーか。後で親切な人が助けてくれるだろ!」

 控えめに怒鳴る清志をひと睨みすると、先ほどの少年のように顔を歪め口を噤む。
 小さな少年の手が俺の手を握った。振り返ると少し安心したような顔で少年が俺に笑いかける。

「ありがと、おにいちゃんっ」

 可愛い。小さい子可愛い。
 心の声が漏れていたのか声に出ていたのか、清志に背中を殴られた。

   ***

「バイバーイ! ありがとー!!」

 遠くなったガキの姿にいつまでも手を振り続ける大和を睨む。コイツはオレよりも知らないガキを取るんだ、と心の中であの子供を恨んでいると「んー、いいことしたなー。さ、清志! 行こうか!」と大和が振り向いた。
 勢い良く差し出された手を無視し先を歩く。後ろから「あ、おい待ってよ」と急ぎ足で近づいてくる大和に向き合った。

「家に着いたら、さっきのガキよりも長い時間お前を拘束してやる。オレと大和の少ない時間を知らないガキに邪魔されたんだからな」

 目を見開いて呆然としている鈍感大和の手を引き家に向かって歩く。
 家に着くまでの無言の時間は少し心地が悪かったが、これから存分にイチャイチャできるのだからまあいい、と割り切った。

「お邪魔しまーす」
「おう」

 部屋に入るなり大和はベッドに腰を下ろすと自分の腿をポンポンと叩き、座れとニコニコしている。頬を緩ませながら向かい合わせに跨った。

「お、おう……向かい合うのか。あっち向いて座るかと」
「向かい合わないと意味ないだろ」

 首筋に鼻を寄せ大和の匂いを吸い込む。香水とは違う良い心地良い香りに眠りそうになった。
 背中に回った大和の腕が、オレを包むみ込むようにギュッと強まる。自分の体に恋人の体の一部が触れているというだけでひどく興奮した。唇を肩に押し付けるとあやすように頭を撫でられた。意識が蕩けそうで無意識に口が動いた。

「……大和……すき……」
「俺もすき」

 耳元で囁かれる大和の掠れた声がとてもセクシーで、心臓が激しく動く。
 膝に乗っかかったまま後ろに押し倒すと、大和は目を見開きすぐ細めた。子供体温な大和に抱きつき、このまま寝たい。

「一緒に寝る? 俺を独り占めしたいんでしょ」

 意地悪な笑みを浮かべた大和は、オレの落ちてきた髪の毛を押さえつける。大和は後頭部に手を添え引き寄せると、オレの額にくちづけた。素直にちゅ、ちゅ、とされるがままになっていると、全身でガシッと抱き締められる。
 ベッドの枕側に頭を持ってくると、大和は枕を引き抜き代わりに大和の腕が頭の下に差し込められた。

「腕枕とか……キザな」
「昭和なキザっぽい男とか清志好きそうじゃん」

 なんだか馬鹿にされた気がするが、今だけは許すとしよう。目が覚めて、それが深夜でも早朝でも構わずに縛り付けてやる。


2013/01/30 甘えてくる宮地をベタベタに甘やかす。激甘
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