高尾はいつも通り、チャリアカーで緑間を運ぶ形で登校した。靴を履き替え自分の教室に向かう。廊下を歩いていると、目の前に見覚えのある姿が見えた。
(あれって大和さんじゃね?)
 無防備に欠伸をしている大和にそろりそろりと近付く。

「どーん! 大和さんはよーっす!」

 負ぶさるように背中へ飛びつくと、大和はとても面倒くさそうな顔で振り向いた。
その表情に納得がいかずムッとした高尾は、大和が苦手にしている事をやってのけた。

「ひっ……、このやろ高尾! 耳はやめろって言っただろ!」

 前に散々弱いと宣っていた耳に唇で挟むように噛み付くと、思っていたよりもキレた大和に固い床へ押し倒された。
 忘れていけないのは、ここは生徒が沢山通る廊下だということだ。殴られるか、と覚悟を決め目を瞑る。

「ギャーッ! いたい、いたいぃっ!!」

 殴りはせず、代わりに仕返しだと言うように耳を噛まれる。食い千切られるほどの勢いに、痛さのあまり涙が浮かんだ。高尾は耐え切れず、大和の髪の毛を引っ張り、引き剥がそうとする。
 そこへ、高尾よりも先に教室へ行ったはずの緑間が通りかかった。

「な、公衆の面前でなにを如何わしい事しているのだよっ!」

 なんとも見当はずれな事を叫んだ緑間に高尾は助けを求める。

「真ぢゃん助げでぇー! いだいよぉ〜」

 本気で泣き始めた高尾を見て、大和は一瞬口を離す。その隙を狙って、高尾は自分の耳を隠すように手で押さえた。
 罪悪感に居た堪れなくなったのか仕返しに満足したのか、大和は高尾の上から退き、床に腰を落としたままのの高尾に手を差し伸べ立ち上がらせる。急に紳士的な態度を取った大和を少し不思議に思った高尾は首を傾げた。

「あー、仕返しし足りない。緑間にもやってやろ」

 緑間には聞こえない声で呟いた大和に、高尾は恐ろしいモノを見る目を向けた。
(やっぱりな! まだ仕返し足りなかったんだ!)
 ゆらゆらと緑間に近付き肩にガッと手を置く。様子がおかしいと思った緑間は大和を心配した。

「ど、どうしたのですか、大和せんぱ、ぁいっっ!」

 大和は一直線に耳に齧り付く。緑間は涙を浮かべながら高尾に助けを求めようとするが、高尾はもう既にその場にいなかった。

「た、高尾ぉぉぉ!!」

 そして緑間は犠牲となったのだ。


2012/12/21 先輩主×緑間か高尾
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