友情出演:大輝くん



 遊び場で親の迎えを待っている大勢の園児。砂場でお城を作っていたりそれを壊す子もいれば、ブランコに揺られている子や鉄棒で遊んでいる子たちもいて、皆それぞれ自由に遊んでいる。
 隅々に目を行き渡らせていると、ぽつんと池を見つめている子が見えた。あれはダイキくんではなかったか。何故あの子が一人で? と疑問に思い、近付いた。

「ダイキくん。何してるんですか?」

 目線を合わせるためにしゃがむと、キラキラと輝かせた目を向けられる。

「ザリガニ見てるんだ! 赤くてハサミもったやつ!」
「ダイキくんはザリガニが好きなんですね。お絵かきの時もザリガニでしたね」
「おう! 兄ちゃんが捕るやりかた教えた! 俺に! それで好きになった!」

 ザリガニを見ながら兄の迎えを待つダイキの頭を撫でる。
 それぞれの親が来るまで迎えに来る中、自転車に乗った学生が保育園に近付いてくるのに気付いた。

「お兄さん来ましたよ、ダイキくん」

 ダイキは黒子の言葉にバッと顔を上げると、自転車から降りた兄の方へ向かって全速力で走りだした。派手に転びそうだとハラハラしながらダイキの後ろをゆっくりとついていく。
 ダイキは兄の足に飛びつくと、身体をよじ登っていき大和の腕に収まった。


 ダイキの兄は誠凛高校の生徒で、朝も夕もママチャリでダイキを送り迎えしている。
 懐かしい制服だなと思い出に浸っていると、大和が黒子の方を向いた。

「こんにちは黒子さん! ダイキは今日も良い子でした?」
「大和くんこんにちは。良い子でしたよ、暴君っぷりは相変わらずですけど……」

 微笑を含めると、大和は何かを堪えるような表情をした。
 ダイキを胸に抱いたまま黒子を抱き締める。ダイキはウッと苦しそうな声を上げるが、大和は抱き締めるのをやめない。

「あぁ〜……黒子さんの笑顔やばい……癒されるぅー」

 黒子の頭に顎を乗せ、溜め込んでいた疲れを吐き出すように溜息をついた。そんな年下である大和の可愛さに口元が綻ぶ。
 視線を上げると、苦しさから逃れるために大和の肩に跨っていたダイキと目が合った。

(そうだ、ここは保育園でしたね……)
「大和くんっ、取り敢えず疲れてるなら早く家に帰って休んだほうがいいですよ?」

 黒子から離れた大和の顔は不満気で、子供っぽいなと小さく吹き出してしまった。


 大和と黒子が二人で話す時間は限られていて、三十分にも満たない。話すにも人目に触れることになってあまり自由な事ができずに居た。
 お互いに好意を抱いていながら、お互いに相手の気持ちに気付いていないという空回りな状況。
 黒子は大和ともっと話したいもっと大和を知りたいと思っている。そこで、今週に自分の休みがあることを思い出した。ここで誘ったら大和は頷いてくれるだろうか。不安を募らせながらも聞くことにした。

「……大和くん、もし良かったら今週の土曜何処かに遊びに行きませんか?」

 控えめに、自己主張が強くならないように尋ねると、大和は一瞬呆然としたが直後に激しく首を縦に振った。

「い、行く行く! 行きます! 行きたいです是非!!」

 興奮を露に喜ばれ、黒子は目を細めた。



 黒子と別れたあと、携帯でスケジュール帳を開く。
 そこには「デート」の文字が書いてあり、その文字を見ながら大和はニヤニヤしていた。

「なあ兄ちゃんテツせんせーとデートすんのか?」
「なっ……なんでそう思うんだよー。ハハハ違うからね。黒子先生の前ではデートとか言っちゃダメだよ?」

 肩車されていたダイキには携帯の画面は丸見えで、それなのに早口で言い訳を捲し立てる大和の話は、ダイキの耳には入っていなかった。


2012/12/20 「if」の世界。高校生主×保父黒子
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -