「愛さないと見えないものがある」
臨也はそんな事を言ってきた。何の前触れもなく、独り言の様に。
「……あぁ?」
臨也は突然俺の家に来たかと思えば何の遠慮もなしにソファーにどかりと座った。
いつもの俺ならその時点でコイツを殴っているが、今日のコイツは何処か可笑しいと違和感を感じた俺はとりあえず、様子をみることにした。
「この言葉はね、シズちゃん。ある哲学者が言ったんだ、『愛が認識を基礎づける』っていう言い方でさ。それにしても、『愛さないと』っていう言い方はちょっと重すぎると思わない?言い換えるなら『相手に関心がないと』って感じかな」
臨也は俺に視線を向けることなく、何処か遠い所を見ている様だった。
「……何が言いたいんだよ、手前は」
「まぁまぁ、急かさないで聴いてよ」
臨也は微笑を浮かべ、また話始めた。
「聴かれるほうからすれば、相手が自分に関心があるのかどうかは、その聴き方ですぐにわかるものでしょ?だからこちらの聴き方しだいで、愛されていると感じたり、自分のことなんかこの人にとってはどうでもいいんだと感じたりもする。正確に、そして繊細に。だからさ、対話においては、語る方が先に傷つくんだよね」
「それがどうしたんだよ」
俺にはいまいちコイツの言いたいことが分からない。
「………今の話をシズちゃんはどのくらい聴いていてくれたかな、どのくらい理解してくれたかな、どのくらい関心を持ってくれたかな」
臨也の声は若干震えていて不安気で泣きそうな声に聞こえた。
「?おい、臨y「ねぇ、シズちゃん……」」
いつもの臨也とはやっぱり違うと思った俺はどうしたのかと本人に聞こうとしたが、その本人に遮られてしまった。
臨也が顔を上げ視線を俺に移したので俺も臨也の顔を見た。すると、臨也の表情は俺に助けを求める様で、目には今にも溢れそうな涙があった。
「俺はね、人間が好きだよ。人間を愛している。それって関心があるってことでしょ?だけど、たった一人、シズちゃんだけ嫌い。大嫌い。だけど、……俺はシズちゃんに関心がある。…これってどういうことかなぁ」
俺はそれを聴いて矛盾してると思った。臨也だって自分で分かっているはずだ。どっちが間違っていて、どっちが当たっているのか。
「…………俺も…」
俺は無意識に語りはじめていた。臨也の瞳を真っ直ぐ見詰めて、静かな声で、しかし、臨也にちゃんと届くように話した。
「俺も……手前に関心がある………関心がなければ手前をいちいち追っかけたりしねぇよ」
臨也はその言葉を聴いて目を丸くして俺を見ていたが、やがて嬉しそうに目を細めた。
あぁ、クソ。
臨也が何を不安がったか知らねぇが、いつもの手前に戻るのなら、俺はこんな言葉も言えちまう。
「だから、安心して俺に追いかけられてろ」
手前も俺もらしくねぇな。
そんなことを思いながらスッキリした顔で笑ってるコイツに俺も笑っていた。
飛行少年のshinoさんから
頂きますた(・ω・´)
素敵静臨ありがとう!
1000ヒットおめです!