冬は嫌いだ。まず寒いのは嫌いだし、あとなんとなく暗いのも嫌だ。暖房を入れないとやっていけないし、マフラーだってうっとおしい。首に毛糸がちくちく当たるのがイヤだ。クラブハウスの部屋はやたら寒いし、やってられない。
「だからさ」
「ん?…だから?」
「暫くここにいるわ」
事務室の後藤の机の前にごろごろと椅子を引きずってきてどかりと腰を下ろすと、後藤ははぁ、と言った。
「やだ?」
「…気が散るな。」
「えー。俺が風邪ひくのとどっちがいい?」
「わかったわかった」
後藤もこの省エネ節約のクラブハウスの寒さは知ってるらしい。にしても、ここはいい。暖かい暖房におやっさんたちの声がうっすら聞こえて、選手もたまにいて、お客さんもいる。ここがこのクラブの中心。俺の真ん中。
「ここにいていいよ。ただしあんまふらふらするなよ」
「なんで集中できねぇの?」
はは、と後藤は眉毛を下げて笑う。
「そんなの気になるからだよ」
「気になるの?」
「なるよ。なに考えてるのかとかなにしてんのかとか。ずっとそんなことばっか」
また笑っているけど結構恥ずかしいことには気づいてんのかな。この大の大人は不器用なのかまっすぐなのか、ときどきほんとに恥ずかしい。
「わかった?」
「ん。大人しくしてまーす」
後藤の近くが俺の中心。ぐるぐる回る俺の世界に、お前がいてくれるから。






君で回る世界








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