隣にいてもらうだけで救われることなんざごまんとある。何も言わずに寄り添ってくれることが幸せだと、誰が言い始めたんだろうか。尊敬する。
 練習終わりに食事会、とかいって大勢でご飯食べたあとこっそり清川を連れて帰ってきた。喧騒の中の後は耳がなんとなくきんきんと鳴っていたけれどもう大丈夫で、すこし飲んで2人でぽつりぽつりと会話をする。のんびりすぎてゆく時間が、妙に心地よい。
「清川、こっちおいで」
「なんすかそれ」
ちょっと笑ってそれで結局来てくれる。俺にはやっぱり俺より細い清川はなんだか頼りなさそうに写って、隣に座らせて2人でソファーに寄りかかる。
「どうかしたんすか?」
「ん?どうもしない」
納得行かないのか清川は不服そうな顔だったけれど、まあいいかって顔もした。そうやって受け入れてくれるから、安心できる。特に何かある訳ではないが、こんな風に不安になる夜もある。そんなときに清川が居てくれる。凄いことなんだろう、この隣のぬくもりは。
「ガミさん」
「ん?」
「俺ってそんなに頼りないすか?」
「え」
「俺だって男っす。好きな人が悩んでたら、助けたい…」
俺を引っ張った清川はなんとも言えない男っぽい顔をしていた。でもそれでいて声は小さくて、これじゃ迫力も何もない。自然に笑えて来てしまった。
「はは、ありがとう」
「っ、なんすかそれっ」
「じゃあちゅーしてくれる?」
「こっちは真剣に」
「だからキスしてよ清川」
それでいいんだよ、そういうので。そうやって言ってやると納得行かない顔をしたけど、あとは目を閉じたからわからない。何でもない不安なんて、触れ合えば消えてしまうのだから、もう心配する必要もない。





「昨日は、なんかあったんすか?」
「…なんもない」
朝のけだるい寝起きの頭を無理やり叩き起こして、それから清川の質問に答えた。
「なんもないならいいっすけど、俺だってちゃんとガミさんの力になれるんすから」
「はは。やさしいね清川は」
「…優しくないっす。ガミさんが元気ないとなんか俺も調子悪いから…こんなのガミさんだけっすよ。」
「はは。謙遜」
「んなこと…」
「ありがとう。お前がいて良かった」
なんでもないけど、こうやって手放せないことを知っていくのだろう。俺にはこんなに優しい味方がいることも。
「…ちょっといろいろ考えすぎて、不安になっただけ」
答えは単純だったのにな。清川がいれば、どうにかなる。不安なんかもう、なんとかなるから。ぎゅうぎゅうと抱きしめたら、清川は苦しいって文句いったけど、もう納得行かない顔はしなくて、それがじわりと身にしみた。






手の届く幸せ


(手が届くのが幸せ)
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