寂しい。ポツリと呟く清川は扇情的だった。今にも溢れ出しそうな涙が眼球に膜を張って、粒になるのを待っている。それでも清川は泣かなかった。目も会わせてくれない。そういうときは俺はなにもできないでいた。石浜が居なくなってから声をかけて俺たちは恋人になった。清川にそっちの趣味はあったのだろうか。いや、結局はわからない。

寝転がった狭いベッドは俺の部屋の物で、俺は清川を抱き締めている。抱き締めるだけの時間は、ただ清川を追い詰めていく。確証に近いけれど、清川はきっと自分を責めている。俺を利用した、って考えてる。でも、ごめん清川。それは間違ってる。
あの時清川は寂しい、と今日のように呟いた。でも、それは誰にも言えなくて、ずっと心に溜めて吐き出せなかった本当の気持ちだっただろう。
だから俺は、そこに付け入る隙を見つけた。だったら俺が石浜の変わりにお前を寂しくさせなくしてやるよ。震えるほど、自分が最悪なこと言ってるのがよくわかった。だって、俺はずるい大人だから、清川が優しいことに気づいていた。先輩の言うことは真に受ける真面目で良いやつなんだって、みんなが知っている。俺は、清川に利用させたんだ。そそのかしたのは俺だ。自分がいい思いをするために、清川に俺と関係を持たせるようにしたのは俺だ。石浜がいないという心の穴を俺で埋めているという罪悪感は、俺がそうさせたからだ。

「俺が埋めてあげるよ」

清川は溜めた涙は落とさない。泣けばいいのに、と何度も思った。






甘い嘘


(耳元で囁いたのは)

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石神は本当に清川のことが大好きなんですと書きたいのになにこのダーク




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